第二十三話 アイデア
俺は獅子男のことを聞きに、リリさんの部屋に来ていた。リズちゃんはノルの部屋へに遊びに行っているそうだ。
「リリさんはライオン男と仕事したことあるんですよね。あの男はどんなヤツですか?」
「ん〜仕事はできるけど、我とこだわりが強すぎるかな」
俺の質問に、サリーさんが答えてくれた。
「私が勤めていたのは、レオンさんが支配人のナイトクラブって、お話はクローリーさんにしましたよね。リリさんゲストのステージをやるって言って、ステージのプランを殆ど、リリさんに直されてました。ステージは盛況だったんですけど、レオンさん納得いってない顔してました」
「認められたくて、あれも、これも。って盛り込もうとしちゃうのよね」
「……確かにやろうとしていた店も、おさわり猫メイド茶店だった」
「東は猫が多いって寅吉さんから聞いたわ。猫メイドのコンセプトは悪くないと思うけれども」
「俺も敷居の高い花街の店もいいが、気軽に遊べる店があればとは思う」
「じゃあ、直接どこが譲れないのか、聞いてみましょ。まずは話し合いよ」
「母様によると、一方的で取り付く島もない感じだったみたいだが、健全な店をウチ主導で話を進めたい」
「そうね。街のためにならなきゃ」
「もし、お店をやるなら、私も働きたいです」
「……とりあえず、明日にでも行ってみるか。リリさんとサリーさんもついて来てくれますか?」
「ええ、もちろん。クローリーちゃんには世話になったから」
「私もです」
話が少しまとまったところで、ふすまの外からブラッドとノアが声をかけてきた。
「……ちょっと、いいか?」
「お話が、あるんすけど」
「いいわよ」
ブラッドとノアは頭を下げて敷居をまたぎ、適当なところに正座をして、お行儀よく座った。
「クローリー密猟者の話だが」
「俺たちに任せて欲しいっす」
「……東での資格がない者は、資格者の許可なしに、ダンジョン外での攻撃魔法の使用はダメだぞ」
「大丈夫っす。腕っぷしには自信があるっす」
「毎日凶悪犯を相手にしてるからな。相手は戦いにおいて素人だろうし」
「密猟者捕まえるのに攻撃魔法使ったら、罰金取るからな」
「捕まえたら、クローリーの旦那のお母さんに付き出せばいいんすよね?」
「そうだな。処分は、母様が決める」
ちょうど「手分けしよう」と言いに行く前に、ブラッドが察していたようだ。
「密猟者?」
サリーさんが不思議そうな顔をしたので、付け加えた。
「どうやらレオンさんとやらの仲間らい。職を失って一儲けに来たらしい。ウチの巫女とブラッドが罠に引っかかった」
「とっ捕まえて吐かせないと「らしい」としか言えないっす」
「そういえば、アルは?」
「料理を手伝っている」
「明日、戦闘要員として借りたいんだが」
「アル兄ちゃんに直接聞いたら、いいっすよ」
「そうだな。それにしても、お前らの試験どころじゃなくなったな。」
「全くだ。観光がてらダンジョン見学どころじゃなくなった」
「ブラッド看守長は、意外とダンジョン好きっすもんね」
「好きというか、素材を持ち帰るのが好きなだけだ。金になるし」
「守銭奴だもんな」
「あら、ブラッドさん。お金溜め込むのが趣味なの? 意外ね。でもそういうのがモテるのよ」
「多分、クローリーの旦那が、お金使い過ぎなだけっすよ」
「ボンボンだもんな」
「店に来た時は気前が良いから、お陰様で儲けてるわよ。クローリーちゃん」
「ええっ…リリさんのところは、未成年お店入れてるんですか?」
サリーさんが俺の顔を見て、目を丸くしている。
「コイツはこう見えて、立派な中年オッサンだ」
ブラッドの事実だが悲しいフォローが入った。
「やけに低い声の少年だな。とは思いましたけど」
声変わりしてから、ずっとこの声だと、自分では思っているので、改めて低いと言われると、どうにも違和感がある。
「まぁ…ワケアリで、この格好をしている」
「クローリーちゃんの、お母さんも低くて素敵な声だから、お母さん譲りね」
「…………」
「もうすぐ夕食です」と、天が呼びに来た。




