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第二話 捜査会議

「バニーによる、連続惨殺の状況整理をしようか」 


 北に住む俺にとって、久しぶりの王国だというのに、観光する暇もなく、ブラッドの家に連れて行かれ、目の前の黒板にチョークで文字を嬉々として書くブラッドの姿に頬杖をついて、ため息をつく。

 ブラッドの家には謎の薬品棚があり、拷問器具が壁に飾られていたりするので、余計に気が沈む。


「はぁ……。観光したい。美味いもの食べたい。武器と装備新調したい」

「遊びに来てるんじゃないんだぞ」

「へーい。被害者に共通点は?」

「男でD~Cランクの若いハンターがソロで野草採取や野生のモンスター狩りの最中、後頭部に強い衝撃を与えられ気絶している間に、腹を割いて内臓を盗られそのまま死亡」

「魔法使うスキもなく、生きたまま臓器を盗られ殺されたということか…」

「そういうことだな。いくら俺たちが長寿とはいえ、内臓がなければ生命を維持できない」

「うげぇ……」

「目撃情報によるとバニーだが背は高かったらしい」

不制御者ラビット?」

 バニーライカンのハンターは、体の小ささを活かすため、成長を抑える装置をつけている者が多い。

 制御装置を外すと一時的に大人の体になるが、その分老化が急激に進むため寿命が縮む。

 ハンター業のバニーには制御装置が欠かせないが、繁殖時には外す必要がある。


「ハンターじゃないということか?」

「もしくは、必要ないということかも」

「必要がない?」

「族長が言っていたことがある。六十年近く前に、北の外れの誰も住めないような土地に人間の集落があって、そこで人間が獣人ライカンの子を産んだらしいと…」

「人間と獣人ライカンの混血か…」

「死産だったらしい」

「なぜ?魔法で蘇生できなかったのか?」

「禁を犯したんだ。罰があって当然だろ。族長は父であるライカンを永久追放した」

 ライカンは血統主義なので、人間との交配はもちろん、他の種族との交配も禁じられている。

 ただ、フェリダエとバニーのオスは年中発情期で性欲が旺盛過ぎる故に、制御装置をつけていないと、見境なく他種に手を出すことがある。

 他種に手を出した者への罰は、去勢と追放である。

 

「魔法が効かないということか…」

「元々、人間は魔力を持たないから魔法使えないだろ」

「まぁ…そうだな。ということは、魔力の流れの異常を正常に戻すことで治癒する、治癒魔法は効かないということだな」


 魔法を使うには産まれた時に、神の祝福が必要だ。禁を犯したのなら当然祝福は受けられない。

「人間の母親も体が弱く、十年しないうちに病にかかり亡くなったそうだ」

「人間の寿命は、外傷以外に病死もありえるということか」

 俺らの寿命が長いのは、魔法で治療できる分、外傷や病では簡単に死なないからだ。

「人間には人間の治療ということだな」


 何かに気がついたのか、ふと右の人差し指を立てたブラッドが呟いた。

「………もし…死産したのが一人だけだったら?」

「前回の人間界からの扉が出現したのは約五十年前、その前は?」

「その七年前。今回の北に出現した扉と同じ辺りだ」

「約六十年か……族長の話と計算は合うな」

「その子が生きているとしたら五十代後半だな」

「ウサギは見た目あまり老けない。百歳超えてやっと見た目が老人になる」

「見た目は若いが、中身は老人か…辛いな」

「百年近く生きてる、オマエが言うと説得力あるな」

 ブラッドはこう見えて八十歳を超えている。エルフ族の寿命でいうとまだ若い。 

「年齢的にもシンパシーを感じるな」

 俺もまぁ…見た目は十二歳くらいだが、制御装置外せば成人超えてオッサンと言われはじめる年齢だしなと、少し凹んだ。


「犯人が半分人間だとしたら、人間の病気の治療法を探すために、人間の世界へ行きたいのかも知れない。扉の周辺を調査してみるか?」

「アリだな。人間が来てるかも知れないしな」

「北の外れは立ち入りに、族長の許可がいる」

「中央が把握してない人間の集落というのも気になるな。約百五十年以上前の中央は人間界からの扉を常時設置できる技術を駆使して、人間界の技術や知識を積極的に活用し、王国や法の整備をしていた。だが、人間とのいざこざが絶えず、その技術は破棄封印。不定期に現れる人間界からの扉を監視するだけになった。俺は生まれてないから、人間に治癒魔法が効かないなんて話は聞いたことがなかった」

「人間の寿命は九十年くらいだから、集落に生きている人間がいるかもしれない」


 こうして、俺たちは北の外れに出現したという、人間界からの扉を見に行くことにした。




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