第一話 眠りウサギ
ハンプティ・ダンプティ 塀に座った
ハンプティ・ダンプティ 落っこちた
王様の馬たち王様の家来たち みんな
ハンプティ 元どおりにできなかった
「お母さん…なんで死んじゃうの?」
……また母が亡くなった、あの日の夢だ。
二週間近くも、この場所で寝ているのに、目を開くたび見慣れない天井に戸惑う。
体を起こすと襲ってくる全身の痛みに耐え、ふらつきながら、ベッドのそばに置いてあるテーブルの上にあるグラスに水を注ぎ飲む。
窓の外を見ると、今夜は上弦の月。
月明かりはまだだ…
「眠れないかね?」
この家に住むドワーフの老人が隣の部屋から、僕の様子を見に来てくれた。
森で野生のモンスターに襲われ、足を痛めて行き倒れているところを、ドワーフの老人に助けられ、療養していたが、もう歩けるので、満月までにはこの家を出たい。
「少しだけ、喉が渇いて…珍しくよく眠れました」
「治癒魔法も使えないし、薬草しか無くてゴメンな。呪いは月人にしか解くことができないが、大地の恵みを受けた薬草で、ケガの回復を速めるのと呪いの症状を少し抑えることはできる」
「足の怪我のほうは、お陰様で良くなっているので、もう少ししたら月人に相談しに行くために、ここを出ます。恩を返せなくてすみません」
「いや…良いんだよ。妻を寿命で亡くし、息子は中央王国公認の鍛冶師になり、帰ってこない。孤独な老人の話し相手になってくれただけで十分だよ。食事も一人よりは楽しいしな」
「ありがとうございます」
「ここを出たら、ちゃんと呪いを解きに行くんだよ」
「ええ…呪いを解きに…必ず」
「何か歌っていたよね?どんな歌なんだい?」
「僕の母の故郷の童謡です。亡くなった母が僕の幼少期に、よく歌ってくれたんです」
「どういう意味なんだい?」
「僕は未だに、答えが分からないです」
「……そうかい」