プロローグ
中学の時に描いたキャラクター設定と描きかけの漫画が出てきたので、小説にセルフリメイクしたものです。
人間用マニュアル
この世界には、人間以外の4つの亜人種が住んでいる。
この世界の亜人は、人間の倍から三倍の寿命を持つ。
長寿で魔法に長けているエルフ族
大半のエルフ族は、薄い色の虹彩に銀髪や金髪白い肌を持って生まれ、回復や補助魔法を得意とするが、一部黒髪で戦闘・攻撃魔法を得意とする変異種のダークエルフがいる。
中央や西に住み、中央に王国と騎士団と刑務所を構え、この世界の秩序や治安を維持している。寿命は約三百年
身体能力が高く、獣耳と尻尾を持つ獣人族
・フェリダエ【ネコ科】
・ドッグス【イヌ科】
・バニー【ウサギ科】
・ウルフ【オオカミ科】に分かれ、それぞれの特性を生かした職につく。
繁殖力の高いネコとウサギが多く、イヌとオオカミは少ない。
ネコとウサギは体が小さく、跳躍力や身体能力が高く、耳が良いので救助活動やスパイに向いている。
イヌとオオカミは力が強く、鼻が良いので人探しや物探しに向いている。
魔力はあるが、上級の攻撃や治癒魔法は使えない者が殆どで、自身の能力を少し上げる程度の補助魔法を使える。
北に住み、寿命は約百五十年
月人
月の満ち欠けによって、性別が変わる亜人種
女の時は魔力が高く、男の時は戦闘能力が高い。
半月時の外見が女型を陰、半月時の外見が男型を陽と呼ぶ。
人間の日本人に、見た目が近いらしい。
主に治療や神事・退魔を司る。
東に住み、寿命は不明
ドワーフ
小柄ながら、怪力と優れた鍛冶能力を持つ。武器職人に多い。
鍛冶をするため、火と土の魔法の扱いに特化している。
南に住み、寿命は約三百年
ハンター機関
町や村のトラブルを解決するギルド
人探しから魔物退治、採取、事件の調査まで様々
クリアした数と難易度によって、ランク分けされ、報奨が貰える。
個人依頼と、中央や町村依頼の公的なものがある。
ハンターランク
トラブルを解決した数によって上がる。
高難易度のハントは、ランクが上がらないと受けられない。
「……と、まぁ、ざっと、こんなものだろうか」
俺はライカンバニーのクローリー。
ライカンバニーの特徴は、見た目が若いことで、俺は三十年以上生きているが、他の種族の十二歳くらいの見た目だ。
「何だコレ?」
俺が、人間用のマニュアル作成をしている最中に、後ろから気配もなく、気の抜けた声で話しかけてきたコイツの名前は、ダークエルフのブラッド、中央監獄の看守長で、囚人の拷問が趣味のドS変態野郎だ。
エルフ族特有の尖った耳、高身長に背中まである黒髪を束ね、赤い目を隠すために、うっすら青色の入った眼鏡を掛けている。
バニー以外の、赤い目は不吉と言われているためだ。
「人間用異世界マニュアル。北の外れに、人間の住む世界との扉が久しぶりに出現したから、族長の命令で、迷い込んだ人間のためにマニュアルを作成してた」
人間にとって俺らは亜人で、この世界は異世界らしい。
人間の世界から、この世界への扉は百年に数回どこかに現れ消える。
運が悪ければ、数日で扉が消失して帰れなくなり、ここに住むことになる人間もいるらしい。
その扉は魔力の影響で、亜人は通れないらしい。
「人間界との扉か…五十年振りくらいじゃないか?」
「……俺、生まれてね〜から、人間が来たらピチピチの人間初体験だわ。で? お忙しい中央監獄の看守長殿が何の用ですか?」
「ただでさえ、オッサンくさい声してるのに、素人童貞みたいな言い方すると、更にオッサンくさいな。久しぶりに俺と組んでハントしないか?」
バニーライカンのオスは、意外に思われるかも知れないが声が低い。
「……中央司法機関直々とは」
「Sランクの任務だ」
Sランク任務を受けるには、成果の捏造防止のため、必ず二人以上のパーティーとなっている。
「あ~なんか、ライカンの殺人鬼が、いるらしいな」
「すでに知ってたか?」
「新聞で見た」
新聞によると半年くらい前から、雲のない満月の前後に、ウサギの耳を持つ者が月人やエルフ族を惨殺しているらしい。
「それなら話が早い」
「ウサギがやったという目撃者がいるんだろ? すぐに捕まると思ってた」
「それが、逃げ足が速く、影しか目撃されてない。事件現場周辺の足跡から、バニーだということは分かっている」
バニーは跳躍力が高いので、逃走時、地面に跳んだ足跡がつく。
「満月に血が騒ぐウルフや、肉食で血気盛んな大型フェリダエに比べりゃ、バニーは基本穏やかなんだがな」
「盛りがついてても、強姦や婦女暴行、傷害ぐらいで、殺人は基本犯さないからな」
ウサギは精力が旺盛故に、制御できない奴がたまにいて捕まったりはするが、基本臆病で他種より非力、足跡が独特なので、証拠が残りやすく、すぐに捕まる。
なので、他種相手に犯罪を犯すヤツ自体が稀だ。
「惨殺って、どんな状況なんだ?」
「内臓が盗まれている」
「内臓が? リビングデッドの仕業じゃなく?」
「リビングデッドは逃げ足速くないし、その場で内臓喰うだろ」
「リビングデッドは、ライカン族の血の味を苦手としていて、ライカンを襲わないから
ライカンの肉は喰わない。だから、ライカンのリビングデッドは存在しない。ましてや、バニーは肉を食べない」
イヌとオオカミは雑食、ネコは主に肉食、ウサギは基本ベジタリアンである。
「リビングデッドだとした場合、いちばん可能性が低い事が起こっている、ということか」
「リビングデッドは下位の魔物だから、エルフや月人の攻撃魔法なら一撃だろ」
「確かにな」
「上位種のグールという可能性も?」
「今のところ、下層の通行記録はない」
俺たちの住む、この世界には神や天使・精霊が住む上層、上級の魔物やモンスターが住む下層があり、魔物やモンスターはダンジョンを通って、俺たちの住む中層へと出現する。
ダンジョンの魔物や、モンスターの管理は中央がしている。
「じゃあ、やっぱり。バニーなのか」
「だろうな。歯や爪の痕もなく、鋭利な刃物で切り取られていた」
「バニーの名誉回復のためにも、協力してやるよ」
こうして、俺たちの犯人探しが始まった。