第七話 観察
学校にたどり着いた僕は、教室に入る。
教室は誰1人いなくて、閑散としていた。
それも当然で、僕は朝会が始まる45分前ぐらい前に登校するタイプなので、最初に教室に辿り着く。
僕は、テキパキと教科書などをしまうなど、準備を終わらせるとその場でゆっくりすることなく職員室に向かう。
「今日は多いな」
クラスごとに置かれている、配達物の中身を見てボソリと呟く。
昨日回収されたノートに、よく分からないチラシが2セットと学校情報が記載されているプリントがある。
僕は、それら全てを持つと教室に戻る。
教室に戻った僕は、持ってきた配布物を各机に置いていく。
そうして、次に早い子が教室に入る前ぐらいには全て配り終えたので、粛々と自身の場所に戻って最初の授業の準備を始める。
これが、僕の最初の日課であった。
僕は、基本的には余裕を持って過ごしたいタイプなので、いつもこのようなことをしている。
配布物を配るなどは、僕の仕事ではないが、本日のノートのようにないと困るやつがたまにあるため、自主的に行っている。
多少、面倒なところがあるが、担当の人が忘れて慌てる必要がなくなることや時間があるため問題ない。
それと、ノートなどの配り物をしておくと勝手にクラスメイトの名前などを覚えるため、グループワークの時などに地味に役に立つ。
そうして、特にやることもなく待っていると次々とクラスメイトが登校し始める。
暇な僕は、些細なイベントでも気にかけるタイプなので、新しいクラスになって大体1ヶ月ぐらいで、誰がどの時間に来るかみたいなのを分かるようになる。
これも、ソロプレイをする上で割りかし役に立つ。
不用意な接触を避けることにもつながるほか、休みなど不意の事態にいち早く気が付ける。
そんな感じで、僕はソロだがクラスのことは、高いレベルで把握している。
クラスのことを把握することは、普段の生活でもそこそこ役立つが、最も役に立つ時は今回のような普段とは違うことをしなくてはならないとかである。
(そろそろかな)
僕は教室から出て、職員室などがある本館の3階、図書館がある廊下に向かう。
(見える見える)
3階の廊下の窓から見える景色は、多くの生徒が入ってくる校門と駐輪場が一望できる。
(この時間帯に、ここに来る人はいない。普段は、教室の居心地が悪い時にくるところだけど、こう言った情報を集めたい時にも役に立つからいい)
このような学校の穴場スポットを、1人で暇な僕はよく探しているため、それなりに知っている。
(おっと、来たね)
僕が校門を見ていると、今回の目的の人物である白雪さんを見つける。
(いつも通りの表情をしている。これなら大きな問題は起きないかな)
僕がここに来た理由の一つは、白雪さんの様子を確認するためだ。
同じクラスのため、教室でも確認はできるがあそこは、他の目が多い上、本人たちの警戒心も高い。
そのため、教室で白雪さんを注視することは下手すると大きな問題になる可能性がある。
隠すことになった以上、学校で白雪さんと不自然に関わることはない方がいい。
出来うる限り、僕との関係が荷物になることも避ける方針で動く。
(こういう時には、本当に役に立つよね。ソロの知識は)
今回のように、1人裏で暗躍したい時にはとことん使える。
その後もしばらく、見た後にその場を後にする。
(知りたい方は大体知れたし、朝はまあまあの成果だな)
そんなことを思いながら、教室に向かうと扉の若干塞ぐ形で、5、6人の女子グループが出来ていた。
(あれからそれなりに時間がたったいるだろうに、クラスの中心人物は、本当に大変そうだね)
僕は、その集団を見ることもなく横を通り過ぎて空いている前の方の扉から教室に入る。
僕が椅子に座ると同時ぐらいに、朝会までの残り時間が少ないことに気がついたのか、廊下にいた集団が解散して、教室に入ってくる。
「ユリカたん!!どうしよう!どうしよう!時間がないよ」
明るく元気な声で、子供ぽく慌てながら入ってきたのは、クラスでも一番人気で女子、天童里奈。
天真爛漫な性格と、非常に育ちの良い容姿で男女問わず人気の人物だ。
「里奈、落ち着いて。優里香はしっかり考えているから落ち着いて出せば、十分間に合うよ」
天童とは真逆で、落ち着いた声色で天童さんを諭すのは、清廉潔白、文武両道、天童さん迫るクラスで2番目に人気で、僕において重要な存在となってくる白雪葵。
「そうなの?ユリカたん!」
「そうだよ。ていうかさっき言ったでしょ、人の話はしっかりと聞きなさい!」
「ご、ごめんなさいーーユリカたん!」
天童を叱るように最後に入ってきたのは、ショートカットのヘアスタイルに、しっかりと鍛えているであろう、バランスの良いスタイルを持つ、クールで落ち着きのある雰囲気を持つ、クラスで3番人気。
天真爛漫な天童と、清廉潔白、文武両道の白雪を取りまとめ、クラスの実質的なリーダーであり、中心人物でもある山本優里香だった。