第十六話 白雪葵の勉強方法
「それじゃあ、最初に質問なんだけど今の勉強方法で頑張れば一位は奪還出来そう?」
一位奪還のために、最初にしたことは質問だった。
正直なところ、僕がどれだけ分析をして対策をしても一位争いをしたことがないため、精度には不安が残る。
そのため、ここからは白雪の意見を取り組み精査していく必要がある。
「正直言って分からない。前も僅差で負けから、今回はどうなるのか分からない」
「ならほど」
白雪のことだ、全教科の平均は90点後半ぐらいだろう。そうすると、点差は僅かであり、分かりやすい修正点は殆どない。
(残り数点を突き詰める作業になるよな)
予想していたことだが、やはり簡単なことではない。
「分かった。それじゃあ、間違えた問題の傾向をまとめることから始めようか」
僕はカバンから中間テストの問題を取り出す。
「英語、本当に苦手なんですね」
「う、うるさい」
真っ白な問題用紙を用意はできなかったため、一部点数が書いてあるままだ。
「ここから、覚えている限りでいい、間違えた問題を教えて欲しい」
「数は少ないので全部覚えています」
そうして、白雪は間違えた問題を教えてくれた。
「数学のこの問題、鈴木くんは解けたんですね、私は出来ませんでした」
「ああ、その問題ね。意地悪な問題でよく覚えてるよ。公式の理解度を求めるから、丸暗記の人を炙り出したかっただろうね」
「そういう問題だったんだ。作成者の意図までは私にはわからなかった」
「まあ、あまり関係ないことだからね。」
そうして、全ての間違えた問題を教え終わった後、僕はその問題の傾向を分析する。
文系の問題は、ほぼ100点で理解関係は90点後半か。
「白雪、間違えた問題はが分からなかった理由とかは分かる?」
「・・・・・・やり方が分からなかったことかな」
「なるほど」
僕は新たにガバンから新たな紙を取り出す。
そこには数学の問題が5問書いてある。
「白雪、この問題を解いて欲しい」
「うん、分かった」
そうして、問題に取り組み始めてしばらくした後、白雪はペンをおいた。
「ごめんなさい、全部解けなかった」
「白雪が解けなそうな問題を集めてきたから、解かれたら逆に困るよ」
「そう言われると、何処となくイライラしますね」
「ご、ごめん」
冷たく睨みつけてきたのですぐに謝る。
そんなことがありながら、解答を見る。
「うん、大体分かったよ。白雪の弱点」
「え、そうなの?」
僕は、先程解いてもらった問題を机に置いて白雪を見る。
「白雪の弱点は、完全に理解しないことです」
僕は先程、白雪が教えてくれた間違えた問題を並べる。
「白雪が間違えている問題のほとんどが、深い理解度を求められる突っ込んだ問題です。」
先程話した数学の問題もそうだが、白雪は深い理解度を求められる問題についての正答率は高くない。
「分かりやすく、三角形の公式である、底辺×高さ÷2を例に説明します。」
僕は二つの三角形を書く。
片方の三角形には、底辺と高さの数値だけを記載する。
もう片方の三角形には、全ての辺の長さなどいらない情報を書く。
「この問題は、全国学力調査の際に話題になった問題です。
二つの問題は、計算の難易度としては同じですが、正答率は底辺と高さのみの数値を書いたものが90%、いらない情報を記載した方は50%とかなりの差がありました。
その差がなぜ生まれたか、分かりますか?」
「・・・・・・分からない」
白雪はしばらく考え込むが、思いつかなかったのか困った表情をする。
「この差が生まれた理由は二つ。
それは底辺と高さに該当する値がどれか分からなかったこと、求積において必要な情報を選別できなかったからです。
白雪は三角形における高さの定義を言葉に出来ますか?」
「底辺に対して、頂点から垂直に下ろされた線のことよね」
白雪は迷いなく答える。
「はい、正解です。そのことが分かっていれば、この問題は難しくないはずです。
しかしながら、高さの定義を明確に理解している人は多くいなかった。故に正答率に差が出た。
このことを記事では深い学びが出来ていなかったと記載しています。」
「つまり、私は深い学びが出来ていないことが問題ということ?」
「はい、それが大きな原因だと考えています」
少なくても、ここ数週間の観察と先程の間違えた問題の傾向的に大きな原因であることは間違いない。
「・・・・・・私の弱点に感じでは分かったけど、簡単に直せるものなのかな?
理解度を深めるのは簡単なことではないと思う。」
白雪の疑問は最もだった。
理解度が深めようとしても深めることが出来たら、誰でもこんなことには困らない。
「そこに関しては問題ないです。先程確かめましたから」
僕は、先程白雪に解いてもらった問題を手に取る。
「この問題、正解と不正解の差があるんですが、何か分かりますか?」
「・・・・・・もしかして、鈴木くんに教えたところは正解している?」
「大正解です」
そう、問題を作成する上で僕は教えてもらった問題とそうではない問題で分けて作成した。
「これは、僕の経験則ですが理解を深めるのに一番役に立つのは、誰かに教えることです。
相手に納得して教えるには、自分の中で言葉として表現できるほどの理解力が求められます。
そのため、自分にとって曖昧な場所がなくなるだけではなく、自分の考えを整理もできるため確実に力になるはずです」
先程の問題で、それが事実であることも確認ができた。
「つまり、テストまで鈴木くんの先生役にならばいいの?」
「先生役、まあその認識で問題ないです。それと教える人は僕では・・・・・・いえ、1人で集中した方がいいと思うので、よろしくお願いします」
「うん、これからよろしくね。鈴木くん」
少し予定とは違うが、大きな問題はない。
(白雪も嬉しそうだからな)
これは、白雪に話していないが理解度が低かったのは白雪のやる気が低いことも原因だったはずだ。
ここまで一緒にいたから言えるが、白雪が勉強する理由は、母に怒られないためが殆どだ。
自分も経験したから分かるが、やる気は質に直結する。負の理由でどれだけ頑張ろうとも、最低限になるのは必然。
また、量重視の白雪母の教育方針も悪化を加速させていると僕は思っている。
そこを改善できれば、白雪の成績は向上するはずだ。
「白雪、教えるからには僕に全教科100点を取らせるつまりやって欲しい」
「鈴木くんはそれで大丈夫なの?」
白雪は不安そうな表情をする。
白雪が心配していることは、僕がついていけるかどうかだろう。
僕がこの数週間である程度白雪のことをわかったように、白雪もこちらのことをある程度は分かっている。
その一つに、僕たちの学力差だ。
僕もそれなりに頑張っているとはいえ、トップとはそれなりに差がある。
トップに勉強を合わせるとなると、必死に頑張る必要がある。それこそ、白雪以上に頑張る必要があるかもしれない。
それが辛いことを勉強を強制されていた白雪は、よく分かっている。
「何を言っているんですか?2人で頑張ろうと言ったじゃん。白雪だけに頑張らせるわけないじゃん。」
強気な口調で僕はこたえる。
「白雪こそ、気をつけて。僕、嫌な生徒だから。分からないとからは徹底的に聞くからね」
このやり方は、教えてもらう側も重要だ。疑問に思ったところは全て聞かなければ、白雪のためにならない。
僕の煽りを聞いた白雪は、小さく笑みを浮かべる。
「いいよ。いくらでも聞いて私、できる先生だから」
白雪の瞳は強く輝いていた。
(白雪は負けず嫌いだよな)
環境に抑圧されていたこともあったが、白雪葵の本質はこれなのだろう。
僕は白雪にバレないように深呼吸する。
白雪には強気で言ったが、正直言って怖かった。
この作戦の成功の是非は僕にかかっている。
その事実を僕は分かっていた。
僕が白雪の勉強についていけないと、白雪もペースダウンするし、白雪にとって必死に頑張らないといけないほど大変な生徒でなければ、得られる効果は少なくなる。
僕にかかっている。
準備はしてきた。
覚悟も決めてきた。
あとは踏み出すだけ。
(これが僕の戦いだ)
僕は力強く白雪を見る。
「期待してる」
「うん。任せて」
そうして、2人の戦いは始まった。




