第十五話 早とちり
テスト期間の2週間前、僕たちはいつものように放課後に2人だけの隠れ家となっているデパートに集まった。
「今日は少しだけ真面目な話をするんですよね?」
「そうなんだけど・・・・・・どこかいつもよりも楽しそうだね」
距離感が近いというのか、活気があるといった方がいいのか、とにかく今日の白雪は、真面目な話があることを伝えてから少し機嫌がいいように感じる。
「そうですか?鈴木くんの勘違いだと思いますよ。鈍感ですし」
「えっと、どこが鈍感なのか教えてくれませんかね?」
「嫌です、自分で考えてください」
「あ、はい」
最近、白雪からよく鈍感だと言われるようになってしまった。
最初は漫画とかである自分への好意に鈍感なのかなと、自惚れた考えもしたが言われるときが、お礼を言った時や、感謝を伝えた時、手伝いをした時など、あまり関係ない時にも言われるため、そうではないはず。
そうなると、何について鈍感と言われているのか見当もつかず、困っている。
「それで少しだけ真面目な話はなんですか?」
鈍感のことはどうでもいいと言わんばかりに白雪が聞いてきたので、僕は鈍感なことを後回しにして本題を話す。
「期末テストの件です」
「・・・・・・」
期末テストについての話し合いだと分かった瞬間、白雪は少しだが悲しく辛そうな表情をする。
「そうですね、もうそんな時期でしたよね」
声がいつもよりも低い、やはり白雪にとってはあまり向き合いたくない話題だ。
しかしながら、逃げるわけにはいかない。
「ハッキリと言いましょう。僕は白雪が次のテストで一位を奪還しないと不味いことになると考えてる。
白雪も同じ考えであってる?」
「・・・・・・うん」
認めたくない事実を認めるかのように重い返事だった。
「一位を奪還する。それは簡単なことではないと僕は思う。だから「だから、2人で会うのを辞めるなんて言わないよね?」」
「え?」
白雪は僕の言葉を遮り言い放った。
「私、嫌だよ。一位を取り返すことが大切なのも分かるけど、そのためにこの機会を無くすのは嫌」
「え、あ、ちょっと」
「鈴木くんのことだから、一位を取るために身を引こうとか考えたんでしょ」
「え、いや、ちが」
「最近、やっと楽しくなってきたんだよ。鈴木くんに知らないところを多く連れてもらえて、色んなことに気がつけた。」
「白雪・・・・・・」
「自分のやりたいことも好きに話せるし、できるようになった。鈴木くんは知らないかもしれないけど、周りの人は私のことを気遣って、ファッションの話はあまりしないし、編み物の話も興味がなくて出来ないから。
だから、ここでそんな話を一生懸命に聞いてくれて私は嬉しかった。
勉強だって、鈴木くんに教えてるとすごいとか、よく頑張ったねとか、こういったところを拘っていてすごいなとか、しっかりと私のことを見て褒めてくれて、もっと勉強頑張ろうと思えてきたんだよ。
こんなこと、私、初めてで、失いたくない」
「・・・・・・」
僕は深く深く深呼吸をする。
そうして、最初とは別の意味で勇気を持って喋り出す。
「言ってくれてありがとう。とても嬉しいかった。その上で・・・・・・先程の続きを合わせて欲しい。
白雪がよければ2人で一位奪還をしませんか」
「・・・・・・!?」
白雪のように真っ白な肌が一瞬にして真っ赤に染まる。
そして、流れるように手で顔を隠して机にへたり込む。
「・・・・・・」
どうしてこんなことになってしまったのか、紛らわしい言い方をやめて、そのまま言うべきだったと後悔する。
僕からは何も出来ないので、白雪が復活するまで僕は静かに待った。
そうして待つこと数分。
「パフェが食べたいです」
「分かった。いつものやつでいい?」
「お願いします」
ボソりと呟いた白雪のお願いを聞き受け、僕は白雪がよく頼んでいる苺パフェを買ってくる。
「どうぞ」
パフェと手拭きを白雪のところにおく。
「ありがとう」
お礼を言って白雪は、一口一口丁寧に頬張る。
そうして、ある程度食べたあと申し訳なさそうに白雪は喋る。
「先程、ごめんなさい。早とちりしてしまって。最後まで話を聞くべきだった。」
「全然構わないよ。むしろ、今まで頑張って来たことが白雪の役に立っていることを知って安心したよ。
ありがとう、言葉にしてくれ。とても嬉しかったよ」
「・・・・・・ありがとう」
そうして、僕たちは沈黙する。
こういった時にどんな言葉を掛ければいいのか分からない。だから、2人とも気不味くて話さないと思うまで喋れなかった。
「えっと、それでさっきの返事の答えを聞いていいかな?」
しばらくしたのち、僕が先に声をかける。
「ごめんなさい。返事をしていませんでしたね。よろしくお願いします」
「頭まで下げる必要はないよ。最初の方に言ったじゃん、気楽に過ごそうと」
頑張って作り笑顔をして、少しでも気が楽になるようにする。
「・・・・・・そうだね。鈴木くんにこれ以上下手な作り笑顔をさせるのは申し訳ないです」
「へ、下手・・・・・・」
突然飛んできた一撃は、僕の心を粉々にした。
僕が下を向いて落ち込んでいる間、白雪は髪などを整えて学校などでよく見る冷静バージョンの姿になる。
「私の方は準備ができたから、ほら、早く起きて。時は金なりだよ」
「鬼ーー、鬼畜ーー」
「はいはい」
僕のささやかな抵抗は、たった4文字で受け流されたため、僕は渋々顔を上げる。
「それじゃあ、始めようか」
「うん」
そうして、一位奪還のための戦いは始まる。




