第十一話 英語の授業
席替えによって隣同士になったが、1限目の数学ではこれと言ったことはなかった。
白雪さんはもちろんのこと、僕も数学に関しては得意な方なので苦戦はしないし、グループワークもなかったので接点が生まれなかった。
(最初はヤバいかなと思ったが、いつも通り過ごせば問題なんて起きるはずがなかったな)
1限目が数学というのも良かったかもしれない。頭を使うので、気にする余裕があまりなかった。
そのこともあり、安定したスタートをできたように思える。
(次は・・・・・・英語か・・・・・・)
グループワークの件は、白雪さんがいるので問題はない。いつも通り、空気と化して過ごせば全てが通り過ぎてくれるはずだ。
しかしながら、必ず助けてもらえる状況というわけでもないため、気分は下がる。
とにかく、僕は英語の準備をした。
休憩の間も白雪さんと話すということはなく、英語の授業が始まった。
「それでは、前回の復習から始めていきたいと思います」
授業開始の挨拶を終えると、先生は前回の復習から始めるといい、黒板にいくつかの問題を書いていく。
(来たな!鬼門、復習問題)
復習問題は、グループでは取り組まないものであり、当てられたら助けは求められない。
英語ができない者においての鬼門の一つ。
復習をしていない者においては、当てられないことを祈るデスゲームになるが、僕は違う。
僕は、慣れた手つきで一つのメモ帳を広げる。
そこには、びっしりと英文が書かれている。
(前回分に該当する問題を全て集めてきた。このカンニングペーパーがあれば乗り切れる!)
復讐問題は復習であるため、前回分から出るのは必然。
そのため、僕は前回分に該当するところの重要ポイントなど、問題として出せる場所を全てメモをしている。
英語ができない僕でも、メモに書かれている答えを言うことぐらいは出来る。
このようにして、僕は運ゲーの確率を限りなく低くしている。
(この問題は、メモの網羅範囲内!僕を当てろ!当てろ当てろ!)
答えられる問題が来た僕は必死に当てられることを祈る。
英語の時間は、1人一回は当てられるようになっているが、逆に言うと一回当たれば、もう発言する必要はないと言うこと。
答えが分かる問題で、発言すれば残りの時間は安全に過ごすことができる。そのために、分かる問題が来たらこのように必死に当たるように祈る。
(ク、当たらなかったが。まあ、いい)
そんな風にいくつかの復習問題をやり過ごす。
ちなみに、このカンニングペーパーの作成には、1時間以上の作成時間を費やしているため、9割5分程度は答えられる。
そうして、最後の復習問題になる。
問題の内容は黒板に書かれている文書を英訳すること。
『彼女が行きたい場所がわかりますか。』
(・・・・・・記載がない)
最後の問題の答えを、作り上げてきたカンニングペーパーを必死に探すがどこにも記載がなかった。
(マズイ、マズイ、マズイ、マズイ、マズイ、マズイ!!)
カンニングペーパー作戦は、丸暗記に近い対応方法のため、少しでもズレると答えられない。
つまり、僕はこの問題を答えることができない。
(当たるな当たるな当たるなーーー!!!)
先程とは真逆のことを一生懸命に祈る。
しかしながら、そういった時に限って当たるのが、世の中の不思議なところだ。
「鈴木、答えてみろ」
(どうしてなんだよーーーーーー!!!!)
「はい・・・・・・」
足は震え、顔は下を向けながら立ち上がる。
(クソクソクソクソ!どうして復習問題なのに、前やったところが出てこないんだよ!)
怨嗟の声が、頭の中を駆け巡る。
しかし、こんなことをしていても問題が無くなるわけではない。
僕の中に微かに残った理性が問題に向き合わせる。
(彼女が行きたい場所が分かりますかだから、えっと、ぎ、疑問文? だから、do youを使うのか? 行きたい場所てなんだ?えっとどうすれば??????)
文章すら答えることができなかった。
そして、少し時間が立つと先生から声がかかる。
「大丈夫か?」
「えっと、少し待ってください」
極度の緊張感からつい反射的に答えてしまう。
(やっちまったー!!!!)
反射的に答えてから数秒、自分のやらかしに気がついた僕は、内心で発狂する。
(あそこで分かりませんと答えていればーーー!!)
そう、あの時に苦笑いしながら出来ませんと答えるチャンスだった。
分かりませんといえば、多少の恥で済んだはずなのに、それを見逃すどころか、あと少し時間があれば答えられるような返答をしてしまった。
(あーーーー!どうして自分で自分の首を絞めるんだよー!!!どうするんだよこれ!どうするんだよー!!終わった)
最早大恥は免れないと、全てに絶望した瞬間だった。
ツンツンと右手を突かれた。
それによって、緊張状態であった僕は冷水を掛けられたかのように、パッと冷静になる。
そして、突いてきた人物である白雪さんの方にみんなからバレない程度に振り向く。
「Do you know the place to which she wants to go?」
振り向くのと同時に白雪さんが僕だけにしか聞こえない音量で呟く。
英語の意味を理解できたわけではなかったが、反射的に全力で白雪さんの言ったことを覚えて、答えた。
「発音に怪しいところがあるが、合っているな。座ってよし」
「はい」
僕は、地獄から解放されらように座る。
「英語、本当に苦手なんだね」
「あはは、英語だけはどれだけ頑張ってもよく分からなくて・・・・・・だから、さっきはありがとうございます。とても助かりました」
心の底から感謝する。
あの時の白雪さんは紛う事なき天使に見えた。
「学校で困っていたら助ける約束だから、お礼はいらないよ。まあ、なくても助けたけど」
友達のようにちょっと楽しそうに話してくる白雪さんにちょっとだけドキッとしてしまう。
「あと、ありがとうございますとか、硬い言い方はやめてほしいかな。私、もっと鈴木くんと気楽に過ごしたいから」
「分かった、頑張るよ」
いつもの冷静さはなく、少し困ったように答える。
授業中に、一緒に喋っていると言えばいいのだらうか、友達のように話す機会があまりなかった。
だから、どうすればいいのか分からなくて頭が少し混乱する。
さらに言うなら、僕が白雪さんに昨日言った気楽に過ごしてほしいと言ったことを、そのまま言い返された形になるため、尚更だ。
白雪さんが意識していったかどうかは分からない。
「この後も、助けは必要?」
「・・・・・・頼りにするよ」
いつも硬い言葉を使っているから、急に変えることができず、少しだけ間が空いてしまう。
そのことを察してなのか、白雪さんの表情はとても明るく楽しそうだった。




