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第九話 臨機

「それじゃまた明日」


「また、明日」


「また明日ねーー!」


 山本と天童は、手を振りながらいつもとは違うルートに向かう白雪の姿が遠くなるまで見届ける。


「後をつけるよ」


「分かってるよ、ゆりかたん」


 事前に決めた通りに、無二の親友がどこに向かうのかを知るため、2人は後をつけはじめる。


「まさか、あおいたんの後をつけることになるなんて、私たちストーカーみたいだね、ゆりかたん」


「里奈はたまにやっているでしょ。一緒にしない。あと、ストーカーじゃないから。私、結構真剣なのよ」


「あはは、ごめんごめん。後をつけようと先に提案をしたのは、ゆりかたんだったもんね」


 今回、白雪の後をつけようと言い出したのは、意外にも山本だった。


「本当はこんなことしたく無いんだけどね。だけど、葵の親友としてこれは見逃せない」


「全く、ゆりかたんは過保護だねーー」


 いつもとは違う山本の姿に、天童は興味深そうにしながらも、2人で白雪の後をつけていく。


「しかし、どこにいくのかな?家からは真逆じゃない?」


「分からない。葵が変なことする訳ないとはずなんだけど・・・・・・」


「いつもはハッキリと言うのに、今日は弱気だね。もしかして、今までになかったこと?」


「・・・・・・うん」


 山本の跡をつける姿は、いつもの冷静はなく、とても心配そうな表情をしていた。


「心配しすぎだよー!私達の中で一番頭がいい、あおいたんが悪いものに引っ掛かる訳ないよ!」


「そうかもしれないけど、絶対はないから」


「ううーー、これが幼稚園からの付き合いの長さてやつなのかなー?」


 高校から出会った天童では、山本と白雪の関係について推し量ることはできない。


 良い言葉を思いつけないこともあって、天童はただただ、山本と一緒に白雪の後をつけるしかなかった。


「あ、曲がった」


「ゆりかたん、急がないと見失っちゃうよ!」


 住宅街であることから、曲がった後の白雪の姿が家に邪魔され、天童達からは目視することができなくなった。


「シー、慌てない。バレちゃうでしょ。葵は徒歩だがら見失っても探せばすぐに見つけられるし、慌てて距離を詰めたら危ないでしょ」


「あ、うん、そうだね!」


 山本の冷静な言葉に落ち着きを取り戻し、2人は焦ることなく白雪が曲がった道を見る。


「・・・・・・いない」


 白雪の姿はどこにも見えなかった。


「いないよ!どうしよう、ゆりかたん!」


「二手に別れて周りを探すよ!」


「うん、わかった!」


 そうして、二手に別れてしばらく探すが白雪を見つけることは叶わなかった。


「完全に見失っちゃった!どうするゆかりたん」


 天童の声に、山本は口に手を当てしばらく考えた後、ため息をした。


「撤退しよう。これ以上探しても見つからないと思うし、これで終わるわけではないから」


「うん、そうだね!」


 そうして、2人は白雪を追いかけるのを諦めて帰宅するのであった。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(対策しておいてよかったーー!!)


 山本さんと天童さんの追跡を撒いた僕は、昼間の自分を最大限褒め称えていた。


「ごめんなさい、鈴木君。私がうまく隠せなかったから」


「白雪さんは、悪くありませんよ。元々は僕が提案したことです。こう言ったリスクがあるのは分かってましたから」


 しっかりとリスクを把握した上で、この選択をしているのだから、僕が白雪さんを攻めることはない。


「それに2人が後をつけてきたのも、白雪さんのことを思ってのことだと思います。そう言った行為を僕は無碍にしたくありません」


 スマホのズーム機能を最大限活用しても、詳細には、2人の行動を確認できなかったが、物陰に隠れながら追跡するようなふざけたものではなかった。


 髪型を若干変え、ファッション雑誌レベルで制服を着こなすことで、一目で同じ学校の生徒だと分からないようにしていた。


 それだけではなく、堂々と楽しく喋りながら後をつけるなど、普段の天童さんからでは考えられない高水準の尾行をしていた。


 もう2人、協力者がいて服装や髪型を変えながら交代とかされるとかなり危なかった。


(間違いなく、山本さんの仕業だよな)


 普段の様子を見る限り、あれほどのことが天童さんにはできるとは思わなかった。


(いい感じに着こなすもの、咄嗟には出来ないはず。少なくともその場でいきなり尾行しようになった可能性は低い)


 だが、その考えがあっていた場合、今回の尾行を主導したのは山本さんということになる。


(いつもとは違う状況だからこそ、いつもの姿から判断するのはよくないと言うことか)


 今後はより慎重に動く必要があるだろう。


 意識を改め、より注意を深めながら僕も白雪さんは目的地に向かうのであった。


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