~魔界⑬~
ー荒野ー
ダークバロンに対峙する3人。
ガブ・ガオン「ここはオレひとりでやる!」
レイナ「何言ってるのアンタひとりにこの世界の命運を任せられるわけないでしょ!」
リュウグウ「ひとりで戦って負けたあと誰がアイツを倒せるっていうんだ!」
ヤマトもコトミもガブ達の少し後ろに立ち、最後の戦いを見届ける。
タケル「███████。」
タケルがなにか話そうとしているが通信機器の調子が悪く、ノイズが入り過ぎて聞き取れない。
ヤマト「父さん、聞こえないよ!」
タケル「███████。」
ガブは剣を振りかぶり、ダークバロンに斬り掛かる。
凍てつくような鋭い剣圧を纏う剣はダークバロンに直撃するも、ダークバロンの硬い皮膚に防がれ、弾き返される。
ガブ・ガオン「最強の一撃だぞ!」
タケル「███████。」
リュウグウ「やはりひとりではダメだ!オレたちもやるぞ!」
リュウグウはトライデントを構え、レイナは魔族の爪を構える。
リュウグウはトライデントを手にダークバロンに立ち向かう。手数の多いレイナはその素早い攻撃を繰り出すも、リュウグウの攻撃もレイナの攻撃もダークバロンに防がれてしまう。
2人の攻撃を囮に、ガブはもう一度剣にチカラを溜めた一撃を放つもこれもまた弾かれてしまう。
ガブ・ガオン「一体どうしたら…。」
タケル「ヤマ██カマ███てガブ█████だ。」
タケルの言葉が途切れ途切れに聞こえてくる。
ヤマト「父さん何を言いたいんだ…。これ以上どうしたらいいんだ…。」
ダークバロン「お前達を脅威と思っていたが脅威はタケル1人、お前達をここで潰せば全て終わりだ」
ダークバロンは蜘蛛のような脚を器用に使い、リュウグウ、レイナを蹴り飛ばす。
リュウグウも、レイナも近くの岩壁に叩きつけられる。
コトミ「神様お願い…!タケルの声を聞かせて…。」
タケル「███████████████。」
コトミ「…。えっ?わかった…。アナタを信じるわ。」
タケルの言葉はコトミにだけ聞こえた。
コトミ「ヤマト!タケルの声が聞こえた!」
ヤマト「母さん…父さんはなんだって?」
思わずコトミを母と呼んだヤマト、ダークバロンは聞き逃さなかった。
ダークバロン「貴様!まさかミコトか!?真っ先に消してやる!」
ダークバロンの両手の指1本、1本からムラサキの結晶が放たれ、コトミを襲う。
ヤマト「母さーん!」
結晶の1つ1つが隕石のように降ってくる。
ガブが身をていしてコトミを結晶のつぶてから守る。
ヤマト「ガブー!」
ガブの全身からおびただしい程の血が流れている。
ガブが守ったかいあってコトミは無事だった。
ガブに駆け寄るヤマト、辺りは結晶の隕石によりクレーターのようになっている。
ガブは立っている、まだ戦うつもりのようだが、ガブにチカラは残っていない。
ヤマト「ガブもうやめてくれ…。これ以上やったら…。」
ガブ・ガオン「ヤマト…。今までありがとう…。コトミと2人でアッチの世界に戻ってくれ…。」
止めるヤマトを、振り切りガブはふらふらな足でダークバロンに立ち向かっていく。
追いかけるヤマトの手をコトミは引っ張る。
ヤマトは母の手を振りほどこうとするも、抱き寄せられる。
ヤマト「ガブ!戻ってこい!ガブー!」
コトミ「ヤマト聞いて…。」
コトミはヤマトにタケルからの言葉を伝える。
ヤマトは何かに気付いたような顔をしてポケレーターを手に取る。
コトミが無傷であることに気がつくダークバロン、再度コトミを狙おうとするが、ガブが食い止める。
ガブ・ガオン「…。あの子たちに手を出すな…。」
ダークバロン「この死に損ないが!」
ダークバロンはガブを振りほどこうとするがふらふらのガブは何度も何度も立ち上がり、コトミとヤマトに攻撃がいかないようにする。
ヤマトはポケレーターからナカマ達を呼び出す。
ガブのピンチにエレカゲ、コルト、トリノコウ、クロスケ、スカイ・ハイ、ウルフィが荒野に転送されてきた。
エレカゲ「おや、おやおやおやおや、あれはダークバロン!」
コルト「お前達の、ピンチとあっては!」
トリノコウ「仕方ないチカラを貸してやる。」
クロスケ「アレがダークバロンなのか?」
スカイ・ハイ「突然いなくなったから驚いたぞ!」
ウルフィ「今日ここでヤツを倒す!」
しばらく気絶していたレイナとリュウグウも立ち上がる。
ヤマト「みんな、チカラを貸してくれ!1人のチカラじゃダークバロンには敵わない…。みんなのチカラが必要だ!」
ナカマ達は黙って頷くと、そのカラダは光に包まれエネルギー体となり、ガブの方へと飛んでいく。
ガブのカラダにエネルギー体が入っていく。
さっきまでふらふらだったガブのカラダは回復しする。
ガブ・ガオン「みんなありがとう…。みんなのチカラが必要だ!」
ガブは剣を構えダークバロンに向かっていくと、その隣にはエネルギー体となり、ガブの中にいるはずのコルトの幻影がいる。
コルト「小手先よりもパワーだ!一撃一撃全力で叩き込め!」
コルトの幻影と共にダークバロンのカラダを斬り刻むガブ。
ダークバロンが口からこれまでよりも大きな結晶の塊を放つ。
クロスケ「空間転移のコツはイメージだ!ヤツのチカラを利用しろ!」
ダークバロンから放たれた結晶を転移させ、見事ダークバロンの頭部へと着弾させる。
スカイ・ハイ「卑怯だなどと言ってられん!自分の信じた正義を信じろ!」
ダークバロンが怯んだすきに斬撃を放つガブ。
ダークバロンは魔界のモンスター達を呼び寄せ、ガブに、襲いかからせる。
ウルフィ「恐れるな!こっちには精鋭部隊が付いている!」
ウルフィの群れのナカマ達が呼び寄せられた魔界のモンスター達と戦ってくれる。
どれだけダメージを与えても倒れないダークバロン。
エレカゲ「むむ?むむむむむ?変ですねぇ…。コレだけダメージを与えても尚立ち上がるとは…。そうなればやはり、みんなのチカラをひとつにして大きなエネルギーとしてぶつけてみましょう!」
ガブは剣にナカマ達全てのエネルギーを集める。
そのエネルギーは凄まじく、剣が更に大きく見えるほどのオーラを纏う。
リュウグウ「一瞬だが、凍らせて隙を作る、その隙を狙え!」
ガブの隣でリュウグウの幻影がトライデントを放ち、ダークバロンの動きを止める。
レイナ「あとは爆発力!あとの事は何も考えないで!この一撃に全てをかけて!」
ガブは全力でオーラを纏った剣をダークバロンの頭部目掛けて振り下ろす。
大きなダークバロンのカラダは真っ二つに切り裂かれた。
ダークバロン「よくも…いつかかならず…」
ダークバロンは塵のように消滅した。
コトミ「やったぁ!」
ヤマト「遂にやったのか…。」
コトミは大喜び、ヤマトは安堵の表情を浮かべた。
融合していた、ガブとガオンはそれぞれの姿に戻り、エネルギーとなり、ガブの中に取り込まれていたナカマ達も元の姿へと戻った。
ガブ「腹減ったー」
ガブは全身のチカラが抜けて倒れ込む。
ガオン「今回ばかりはオレも腹減ったな…。」
ガブとガオン、そしてナカマ達の元へと駆けていくヤマト達。
この世界に、平和を取り戻す事が出来た。
モニターの前でタケルも一息ついた。
ナカマ達と喜びあっていると、ヤマトとコトミのカラダが透けていく。
ヤマト「あれ…?」
ガブ「ヤマト…?」
コトミ「なに…コレ?」
タケルの声が聞こえる。
タケル「みんなお疲れ様。ガブ久しぶりだな!」
ガブ「タケルー!」
タケル「ガブ、キミからはボクが見えないけどボクからはよく見えてるよ、ヤマトを、息子を助けてくれてありがとう!」
ガブ「なぁに、トモダチの、子どもだろ!助けるに決まってるだろ!」
タケル「ミコトの事もありがとう!」
ガブ「最初はミコトだって分からなかったけど、ミコトに記憶が戻った時にオイラも思い出したよ!」
タケル「もっともっと話したいことは山程あるんだけど残念ながら時間だ…。」
ヤマトとコトミの下半身は既に完全に透明になっている。
ガブ「またお別れか…。」
タケル「今度はすぐに会えるよ、もうすぐ完成するんだ、ダークバロンのデータに邪魔されて何度も作り直していたけど…あと一ヶ月もすれば完成する!完成したら今度はボクから会いに行くよ!それまで待っててくれるかな?」
ガブ「何年だって何十年だって待ってるさ!」
タケル「ありがとうガブ…。」
ヤマト「ガブありがとう、またかならず遊びに来るからな!」
ガブ「今度は3人で来てくれよな!」
ヤマトとガブは拳を合わせ、約束する。
コトミ「リュウグウ、アナタは立派な海竜王になってね!」
リュウグウ「言われなくとも!」
リュウグウは言葉とは裏腹に少し寂しそうだ。
ヤマト「ガオン!世話になったな!」
ガオン「またいつでも面倒見てやるよ!」
コトミ「レイナまた2人で女同士の話をしましょ!」
レイナ「アナタがどうやってダンナを射止めたかゆっくり聞かせてもらうわね」
それぞれ別れを告げると、ヤマト達の姿は完全に消えてしまった。
ー現実世界 タケルの研究室ー
ヤマト「父さん、ただいま!」
タケル「おかえりヤマト!」
ミコトはゆっくりと起き上がる。
ミコト「ただいま」
タケル、ヤマトはミコトとこれまでの会えなかった長い時間を取り戻すように親子3人で寄り添う。
ー1ヶ月後ー
タケルの言っていた物がようやく完成する。
フルダイブ型のオンラインゲームで、いつでもどこでもガブ達の世界に行くことが出来るようになった。
元々はミコトとガブの為に作っていたゲームだったが幼い頃の自分のように大冒険を楽しんで貰いたいという思いを込めて家庭用ゲーム機として開発したのだった。
タケル自身もう一度トモダチに会えることを楽しみにしていた。
ヤマトとミコトは今日だけは遠慮して、タケルとガブ2人だけの時間を過ごしてもらうことにした。
ミコト「気をつけてね!」
ヤマト「ガブによろしく!」
タケル「いってきます!」
ーテンの島ー
ムラサキ色の卵が主人との再会を待っている。
ムラサキ色の卵を両手で抱える1つの影…。




