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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第四章 鍛治師の街【ハイスヴァルム】編

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第90話 到着した鉱山へ

 クラティアとミナスを置いて登山を再開したルーキスたち。


 ギルドから渡された地図を見ながら目的地を目指し、岩山の中腹あたりをぐるりと回り込むように歩いていく。

 しばらく歩き、ゴツゴツした岩山の谷間を進んで行くと、鉱山の坑道につながる入り口が見えた。


「え? あれ?」


 その入り口の前にクラティアとミナスが立っていたので、驚いたフィリスとイロハが目を丸くして、わけが分からず首を傾げた。


「おお来たか。若いだけあって中々の健脚じゃな。予想より随分と早い」


 ルーキスたちの姿を見て、満足そうに微笑むクラティアと、ヒラヒラ手を振ってニコッと笑うミナス。

 

「別ルートなんてありましたか?」


「いや? 地形は地図を見て記憶していたのでな。真っ直ぐ跳んできたのじゃ」


「道の意味」


「ふふん。妾が歩いた場所が道なんじゃよ」


「いや。歩いてないけどな」


 先回りしたクラティアたちと合流したので、ルーキスたちは武具の点検を行うと「さあて、行こうかの」と楽しげに言ったクラティアを先頭にして暗い坑道に足を踏み入れた。


 本来なら木枠で補強する坑道だが、この坑道は魔法使いが同行して掘り進められたのか、等間隔で綺麗に切り出された石枠が坑道の崩落を防止しており、地面も綺麗に整えられている。


 それ故に、坑道というよりはダンジョンの通路を思わせた。


「魔光灯が点いてるのか。随分明るいな」


「こんな整った場所で失踪? そんな事ある?」


「鉱山だからな。ギルドで鉱山の地図も貰ったけど、見てみるか?」


 ルーキスがそう言いながらバッグの口に差し込んでいる丸めた地図を取り出して、後ろを歩くフィリスに渡した。

 それを広げて視線を落とすフィリスだが、土竜の巣のように入り組んだ坑道を見て「あー。これは」と、冷や汗を浮かべた。


「私たち今この辺り?」


「いや、さっき二つ通路を通り過ぎたからこの辺りだろ」


「でもこの下り坂まだです」


「うん? ふむ。う〜ん?」


 初めて足を踏み入れる鉱山とはいえ、地図を見ているはずなのにどうにも位置が掴めない。

 というよりは地図と地形が一致していない感じだ。


 何度か指で地図をなぞって、自分たちの現在地を把握しようとするが、いまいちよく分からないので「一旦入り口まで戻るか」とルーキスが提案したが、前を歩いているクラティアとミナスは足を止めると振り返り、苦笑いを浮かべてルーキスの方、正確にはルーキスたちの後ろを指差した。


「何か、あるんですか?」


 はて、魔物の気配なんぞ皆目無いが? と思いつつも、後ろを振り返るルーキス。

 それに倣ってフィリスとイロハも後ろを振り返るが、そこには通って来た道はなく、石の壁があるのみだった。


「はい? え? なんで?」


「認識変換? いや、それなら気がつくはず」


「認識変換を妾たちでなく、鉱山その物に使用した感じじゃな。どちらかと言えば認識変換ではなく、事象の変換に近い。まあ子供騙しじゃがな」


「どうやらこの坑道、ダンジョン化してるみたいだね。これは、もしかしたら当たりかな?」


 そう言って、クラティアたちが歩き始めたので、ルーキスたちも後を追おうと歩き出すが、クラティアが通路の角を曲がる際に振り返りもせずに「追わんで良い、死ぬなよ?」と言って通路の角を曲がって姿を消した。


「クラティア様?」


 フィリスが心配そうに声を掛けるが、ルーキスたちは角を曲がる事は無かった。

 出来なかったというのが正しい。

 ルーキスたちが行き着いた場所に曲がり角などは無くなっていたのだ。


 行き場が無いので振り返ると、その先には先ほどまで無かった下り坂がポッカリ口を開けている。


「はあ。やれやれ、分断されたか」


「クラティア様、絶対分かってて先に行ったわよね」


「俺たちを餌にするつもりなのか、自分たちだけで片付けるつもりなのか。まあ、ボーっとしてても仕方ない。先に進もうか」


「今日は本当に色々あるわね」


「楽しいだろ?」


「実はちょっと楽しかったり」


「俺もだ」


「わたしもです」


 吸血鬼の女王様と知り合ったり、その女王様と一緒に登山したり仲良くなったり、そしてわけのわからないダンジョン化した鉱山に放り込まれたりしているが、ルーキスたちは三人ともこの状況を悲観していなかった。

 

 もしかしから、自分たちも失踪者の仲間入りをする可能性すらあるのに、ルーキスたちは三人ともに「三人一緒にいられるなら」と笑った。


「ミナス様の話だと、最奥にいるのはクラティア様の眷属の末端。末端とは言え吸血鬼だ。生物としては向こうが格上、今は何も無いが、恐らくここから先は魔物もいる。もしかしたら、失踪者も死んでいれば魔物化しているはず。そうなれば殺すしかない。やれるか?」


「まあ多分。大丈夫だけど」


「まあ散々亜人型の魔物は倒してきてるしな、今更か。それにもし、失踪者が魔物化してるとすりゃあ、それはゾンビかグールかスケルトンになってるはずだ。今のフィリスとイロハなら遅れは取らないだろう」


「ゾンビかあ。臭いそうね。あと、何か気を付ける事ってあるかしら」


「ダンジョン化してるとはいえ構造体は鉱山そのものみたいだからな。あんまり壊さないようにな。崩れて生き埋めになっちまうからよ」


「分かったわ。あなたも気をつけてよ? ルーキスのほうが力も魔法も強いんだから」


「おうよ。よし、そんじゃあまあ、鉱山探索再開だ」


 こうしてルーキスたちは下り坂を下っていく。

 その表情は登山中の浮かれたものから一転。

 ダンジョン攻略中の真剣な表情へと変わっていた。

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