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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第73話 休憩中に

 偶然とはいえ、フィリスの魔法でダンジョンの仕掛けに気がつき、地下二階のスライムの耐久力の秘密に気がつき、弱体化に成功したルーキス達。


 魔法を使用せずとも討伐できるほどに弱体化したスライム達を討伐したルーキス達は、地下三階、ダンジョンの主の間に向かう前に一度休憩を挟む事に。


 そんなルーキス達の元に現れたのはルーキス達と目的を同じくする冒険者パーティの五人だった。


「やっぱり。君達だったか」


「よかった。その様子ならそっちのスライムも弱体化していたようですね」


 バックパックに寄り掛かり、眠っているフィリスとイロハが起きないように防音の魔法を付与した結界魔法で二人を囲み、ルーキスは冒険者パーティ五人のリーダーである剣士の青年に笑いかけた。


「すまないね。休憩中に」


「構いませんよ。ダンジョン内では良くある事ですから」


「はっはっは。確かにな。それでなんだが、どんな仕掛けだったのかな? 魔法陣や魔法が付与された魔石でもあったかい?」


 冒険者たちのリーダーの言葉に、ルーキスはこのダンジョンの仕掛けについて話した。


 天井の水面がスライムであること、そのスライムが各大部屋ごとに区切ってスライム達に魔力を供給して物理攻撃に対する耐性魔法を使用し続けていること。

 そして弱点が火の魔法であることまで包み隠すことなく全て話したのだ。


「そんなに簡単に情報を教えて良かったのかい? 君達より早くダンジョンを出てギルドにそれを伝えれば情報提供報酬は私たちが独占してしまうかもしれないのに」


「そちらこそ、簡単に俺からの情報を信じて良いのですか? もしかしたらあなた達を出し抜くための嘘かもしれないのに」


 冒険者パーティのリーダーの言葉に、ルーキスはニヤッと笑いながら答えると、二人は顔を見合わせたまま笑い合った。


 数日の間で、ほんの一時だがルーキス達はこの冒険者パーティと宿を共にし、交友を深めている。

 お互いがお互い、言ったようなことはしないと確信があったので二人は笑ったのだ。


「地下一階も、最下層も、多分同じでしょうね。最下層は降りて真っ直ぐ進めば主の間である大部屋ですが、地図を見るに降りた場所から左右に通路が伸びて、その主の間を囲むように大部屋が四箇所配置されてますし」


「なるほど。ダンジョンの主も弱体化する可能性があるのか」


「ですね。俺たちは休憩が終わったら主に挑みに行きますが、あなた達はどうしますか?」


「そうだな。私たちは一度上に戻って地下一階でもその攻略法が通用するか試してみるよ。君たちの帰りを待ちながらね」


「主には挑まないのですか?」


「それは君たちの後にするよ。このダンジョンの秘密を見破ったのは君たちだ。それなのに先に主に挑むと言うのはなあ」


 言いながら、冒険者パーティのリーダーの青年は苦笑いを浮かべると仲間たちが立っている後ろに振り返った。

 皆同じ考えなのだろう、それぞれ頷いたり苦笑したりしている。


「まあ、正直言うと力不足も痛感しているからね。仲間たちや私の安全のためにも君たちを先に行かせて情報を教えてもらいたいってのもある」


「正直ですね」


「違うよ。私は臆病なんだ」


 そう言って笑った冒険者パーティのリーダーの青年の笑顔は優しげだった。

 恐らくどちらも本音なのだろう。

 それを理解したうえで、ルーキスは「分かりました」と嫌な顔をするどころか、冒険者パーティに微笑む。


「私がこんな事を言っても君たちには何にもならないだろうが、気をつけてな」


「ありがとうございます。そちらも帰路お気をつけて」


「ありがとう。では武運を」


 そう言うと、冒険者パーティ五人は元来た道を引き返していった。


「私たちも前の大部屋の手前で休憩するか」


「天井の水がスライムだったなんてなあ」


 と、離れていく冒険者パーティの会話を聞きながら、ルーキスはフィリスとイロハの結界を解除する。

 そして、しばらくルーキスは前世で共に戦った妻や仲間たちとダンジョンを探索していた時の事を先程別れた冒険者パーティに重ねながら思い出していた。


(良い冒険者たちだ。ああいう若者たちには死んでほしくないな)


 このあと、ルーキスは目覚めたフィリスと見張りを交代してもらい仮眠をとることにした。


 しばらく眠り、体力を回復したルーキスは目を覚ますと、座ってこちらを見ていたフィリスと、その傍に座って肩を寄せているイロハが目に入る。


「おはよう。待たせたな」


「寝顔ごちそうさまでした」


「なに言ってんだお前さんは。そんなこと言ったら俺だって二人の寝顔見てたっつうの」


「そう言われると、なんだか恥ずかしいわね」


「なにを今さら。もうお互い寝顔なんて何回も見てるだろうが」


 起き抜けに聞いたフィリスの言葉に苦笑しながら返すと、ルーキスは立ち上がり、空いた小腹を満たすためにバックパックから干し肉を取り出すと、魔法で温めてそれを頬張った。

 

 そして、食事を終えると、水魔法で水球を眼前に作り出してその水球に顔を突っ込み、顔を洗うついでに水を口に含んで水球から顔を出すとうがいをして、濡れた顔面を手で拭う。


「ふう。さっぱりした。よし、行くか」


「行きましょう。目指すは主の間、討伐報酬のお宝よ!」


「まあさすがに、このダンジョンにお爺さんの遺品は無いだろうしなあ。報酬もらって帰るとするかね」


「わたし、頑張ります!」


「お〜。頑張れよイロハ、怪我しないようにな」


「ダンジョンの主相手に怪我するなって、何気に無茶振りよね」


「それくらい気を付けろよって話だ。フィリスも気を付けろよ? 可愛い顔に傷付けないようにな」


「んな⁈」


 ルーキスの言葉に顔を赤くして口を開くフィリスをよそに、ルーキスはバックパックとハルバードを担ぐと笑いながら階段のほうへと歩き出した。


 そんなルーキスの後にイロハが続く。


 その後を、遅れてバックパックを担ぎ上げ、蛮刀を腰に携えたフィリスが追いかけていった。

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