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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第72話 仕掛けの解除

 一つ前の大部屋で天井から落ちてきたであろう、球状のスライムを撃破して、ルーキス達は地下一階へ向かう為の階段を目指していた。


 どうやら天井に薄く広がって張り付いているスライムは大部屋ごとに別個体が分かれて存在しているらしい。

 球状のスライムを撃破した大部屋の天井から通路にかけて別のスライムが張り付き、天井に水面を形成していた。


「倒しながら戻ってきてもよかったんじゃない?」


「いや。順当に対応するなら階段からになるからな。天井のスライムがどういう動きをするのか確認するならここからだ」


 地下一階への階段に背を向けて、ルーキスはフィリスの言葉に答えると、言いながら天井に手をかざすと、氷の矢を形成して放った。


 しかし、氷の矢は天井のスライムを貫通するもののダメージは見受けられない。

 先程フィリスが焼いたような反応は得られなかった。


「嫌いな属性が火なのか? イロハ、天井に向かって放電出来るか?」


「や、やってみます」


 ルーキスの願いと期待に答えるべく、イロハはルーキスがそうしたように天井に手をかざして魔力を放出。

 そこに雷をイメージすると、イロハの角が帯電したあと、イロハの手から紫色の雷撃が放出された。


「当たったら痛いじゃすまなそうね」


「それはフィリスの炎も一緒だ。しかし、ふむ。天井のスライムには雷撃も効果なしか」


 イロハの雷撃でも効果なしとみて、ルーキスは水球、風刃、石の礫と、様々な魔法で攻撃を試みるが、天井の水面に擬態したスライムには効果なし。


「フィリス、行けるか?」


「まあ見てなさいよ、私の一撃をさ」


 自分より幼いイロハにできたのだ。

 同じ鍛練をこなした自分もぶっつけ本番で炎くらい出してみせるわ。

 などと考えながら、フィリスは天井に手をかざすと魔力を集中。

 しかし、イロハのように魔法は発動せず。

 フィリスの手の平に拳程の炎の塊が出現するにとどまった。


「魔力を集中させたからだぞ? 飛ばすんだから放出しないと」


「私って、もしかしてセンス、ないのかしら」


「センスがない奴は火球すら作れないよ」


「そ、そう? でもこれじゃあ届かないなあ」


「はっはっは。確かにそれは届かないな」


 フィリスの魔法失敗を見て、次は自分で炎の魔法を放とうとするルーキスだったが、むしゃくしゃしたのか、単純に「これなら届くんじゃ?」と思ったか、フィリスは蛮刀を抜くと、手の内にある火の球を軽く放り、蛮刀の刀身でその火球を打った。


 火球は一直線に天井へ。

 その火球は直撃したスライムの体の中に入り込み、そこからスライムを焼きはじめた。


 どうやら弱点は火で間違いないようだ。 


 トラップスライムを消し炭に変えた大部屋の天井に張り付いていたスライム同様に、痛みからか熱さからか、激しく波打ったあと、次の大部屋へと慌てるように天井を移動していった。


「魔法は創意工夫が大事だというが、面白い使い方をするな」


「あんなの偶然よ。あんまり褒めないで」


「いいや褒めるね。魔法にしろ戦いにしろ、結果は大切だからな」


 そう言って笑うと、ルーキスはフィリスの肩にポンと手を置き「さあ、行こうぜ」と呟いて次の大部屋を目指して歩きはじめた。


 通路の天井に揺らめいていた水面も忽然と姿を消している。

 ルーキス達の予想どおりなら、次の大部屋に球状のスライムが出現しているはずだ。

 

 そしてその予想は大当たり。

 次の大部屋の真ん中あたりに、球状のスライムが待ち構えていた。


 その球状のスライムを三人で討伐し、次の大部屋へ向かうための通路で再び天井に張りついているスライムを焼く。


 こうして天井のスライムを討伐していくこと数回。

 ルーキス達は最初に天井に張り付いていたスライムを討伐した大部屋へと戻ってきた。


「あ、復活してます」


「さて。ここまで天井のスライムを倒してきたわけだが、狙い通りの結果になっているかな?」


「叩いてみましょう」


 言うや否や、フィリスが蛮刀を構えて駆け出した。

 魔力を纏わせず、身体強化だけを発動して、フィリスは蛮刀を自分と同じ体高をもつスライムに斬りかかった。


 すると、それまでフィリスの蛮刀を弾いていたスライムはあっさり切り裂かれて塵になって消えていく。


「やっぱりか。天井のスライムが魔力を供給してだんだなあ。魔法陣や魔石ではなかったわけだ。なるほどなあ」


 腕を組み、片手を顎にあてて感心しているのか、目を細めるルーキスを置き去りに、フィリスとイロハは

大部屋に再び湧いたスライムをいとも簡単に討伐する。


 そのあまりの手応えの無さに、フィリスもイロハも何か物足りない様子だ。


「よっわ」


「上にいたスライムのほうが、まだ硬いですね」


 これまでこのダンジョンを訪れた冒険者たちは天井に揺らめいて見える水面をスライムだとは思わなかったのだろう。

 ルーキスたちがそれに気が付いたのも偶然だ。

 仮に火の魔法が天井に当たっていたとして、戦っている最中は目の前のスライムを注視している。

 気がつかなかったとしても仕方のないことだったのかもしれない。


「しかし、最初からこの情報を知ってたとしても、一番最初の大部屋で戦う場合、待ち構えているスライムたちに加えて球状のスライムと戦う事になるか。攻略法がわかっても、駆け出しや初級の冒険者じゃあちょっと討伐は厳しいかもなあ」


「じゃあ上で鍛練して、それから下に来てもらえば良いんじゃない?」


「はっはっは。ダンジョンってのは得てしてそんなもんさ。さて、せっかくここまで来たんだ。行こうか、最下層」


「あの人たちは大丈夫でしょうか」


「どうだろうな。こっちのスライム討伐の影響が向こうにも反映されているなら、まあ大丈夫だろう」


 この心配は、ルーキス達が最下層へ向かうための階段の手前で休憩している際に解消される。


 バックパックを枕代わりに仮眠をとっているフィリスとイロハを守っていると、冒険者五人のパーティが元気な様子でやってきたのだ。

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