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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第71話 ダンジョンの仕掛け

 休憩を終えたルーキスたちは、腹ごしらえをしたあと、別れた冒険者パーティが向かった通路とは違う通路へと向かった。


 地図で確認した限り、最下層への階段があるフロアで合流するまでは別れた冒険者パーティと再会することはなさそうだ。


「この階層に仕掛けがあること、教えなくて良かったの?」


「この階層をうろついてるんだ。この階層に仕掛けがあるってことには気がついてるってことだろ」


「まあ確かに地図を持っていれば、迷うようなダンジョンじゃないけど」


 そんな話をしながら通路を進みフロアを攻略していくが、ルーキス達にいまだ成果なし。

 しかし、スライムを倒していくうちに、少しずつスライムの攻撃力と耐久力が高くなっている事に、三人は気がついていた。


「こんなに奥まで来ないと解除できない仕掛けなんて、駆け出し冒険者にはどのみち攻略は厳しいんじゃない?」


「かもしれないな。でもまあ、それでも攻略法が分かってるのと全くわからないのでは話が変わってくる。それにせっかく挑戦したダンジョンなんだ。完全攻略したいじゃないか」


 いくつめかのフロアを攻略し、通路を歩きながら笑うルーキスと、その後ろで苦笑するフィリスとイロハ。

 ダンジョン攻略中だというのに全く危なげなく三人で進んでいると、次のフロアでルーキス達は魔法を使うスライムメイジたちに遭遇した。


 数にして十六。

 多数のスライムメイジがルーキスたちを確認するや、火球や水球、石の礫や氷の矢を一斉に発動。

 それをルーキスは魔力を圧縮した熱線により迎撃。

 全て叩き落とすと「さて、始めようか」とフィリスとイロハに言って三方にわかれてスライムメイジ討伐を開始した。


 しばらくあと、スライムメイジを倒した三人はフロアの真ん中に集まり背中を合わせて別のスライムの出現を警戒するが、襲撃はそれで終わりだったようだ。


 辺りを見渡し、ルーキス達はそれらしい魔法陣や魔石を探す。

 壁や床に魔法陣らしき物はなし。

 天井には相変わらず水面が揺らめいており、魔石も見当たらない。

 

 そんな時のこと、フィリスが壁際の床に無造作に置かれている綺麗な宝箱を見つけた。

 

「汚れてない。ということはミミック? でもこのダンジョンにミミックの情報はないし」


「小突いてみな。反応がなけりゃ新しく出現した宝箱だ。まあでも恐らくソイツは」

 

 と、ルーキスが言い切る前に、フィリスは宝箱の蓋を「えい」と、ちゃぶ台をひっくり返すかのように開いた。


 しかし中には宝など入っておらず、宝箱いっぱいに詰まっていたのは、スライムだった。


 その宝箱に入っていたスライム、トラップスライムが体を伸ばしてフィリスの顔面に一撃喰らわせる。

 しかし攻撃力は大した事なかったようで、フィリスの顔面は張り手を喰らったように赤くなるにとどまった。


「だ、大丈夫ですかお姉ちゃん」

 

「小突けと言ったのに。君はたまに迂闊うかつなことをするな」


 フィリスの後ろで心配そうに冷や汗を浮かべ、アタフタするイロハと、声を殺して苦笑しているルーキス。


 そんな二人をよそに、顔を赤くしていたフィリスは再び宝箱から攻撃をしてこようとしたトラップスライムを鷲掴みにした。


「最初は草。次は石。その次はスライム。いったいこのダンジョンはあ、私をどれだけコケにすれば! 気が済むのかしらあ⁉︎」


 左手でフィリスに鷲掴みにされたトラップスライムは、その手から逃れようとジタバタと体を捻るが、身体強化したフィリスの握力からは逃れること叶わず。


 最後にそのスライムが見たのは、鬼ようなの形相で燃え盛る蛮刀を自分に振り下ろしてきた少女の姿だった。


 フィリスの燃える蛮刀はこの日、最大の威力を発揮。

 その炎は蛮刀の刀身を赤熱させ、燃え上がった炎が天井の水面を焼いた。


「おお。怒りの一撃」


「お姉ちゃん怖いです」


「あ、ごめん。やり過ぎちゃった」


 燃えかすすら残らず、トラップスライムがいた焦げた石畳を見下ろして、フィリスが我に返って振り返る。

 

 そんな時、天井から何かが落ちてきた。

 うねうね動く燃えているそれはどうにもスライムに見える。

 天井を見上げる三人。

 すると、見上げた場所にある筈の水面が何やら激しく波打っている。

 波打っている、というよりは激しい痛みに蠢いているという印象だ。


「うわ。なにこれ気持ち悪い」


「これは。いやコイツ、スライムか⁉︎」


「え、じゃあこのダンジョンの天井の水ってもしかして全部」


 天井の変わりように驚いていると、天井にあった水がルーキスたちが進んできた通路に吸い込まれるように急激に動き出した。


 突然のことにポカンと口を開けて呆然とするルーキス達。


 思わぬ出来事だったが、いち早く気を取り直したルーキスは「よくやったな、もしかしたらもしかするぞ」と、フィリスの背中をポンと叩いて、もと来た通路に向かって駆けだした。


 一拍遅れ、呆然としていたフィリスとイロハは揃って気を取り直し、先に駆け出したルーキスを追ってもと来た通路へと駆けだしていった。


 天井に張り付いていたスライムはどうやら前のフロアにまで行ったか、通路の天井には先程まであった水面は無くなっており、露出したゴツゴツした岩肌の天井から固まった魔石が光を放って通路を明るく照らしている。


「最初からずっと俺たちの上にいたのか。気づかないわけだ。さて、お前さんがこのダンジョンの仕掛けそのものなのか? まあ、倒せば分かるか」


 前のフロアに先んじたルーキスはバックパックを下ろすと、フロアの真ん中に鎮座している丸い球体と化したスライムに近付きながらハルバードを振り回す。


 そして、スライムから先端の尖った殺意満点の触手が高速で伸びてくるのを確認すると、ニヤッと笑いながらハルバードを構えて駆け出した。


 ルーキスが球状のスライムと戦闘を開始した直後、フィリスとイロハもそのフロアに駆けつける。

 

 ルーキスだけでも事足りるというのに、二人が戦闘に加わるとなれば、スライムの命運はそこで尽きたも同然だった。

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