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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第68話 イロハとスライムの戦い

 見つけた手付かずの宝箱の中身があまりにショボく、フィリスがスライムに苛立ちをぶつけながらダンジョンを進んでいた。


 それを良い機会だと思い、ルーキスはフィリスの後ろからスライムの魔力の出所を探している。


 しかしながら、フィリスの成長は著しく。


 下見の時ですら切る事は出来ていたスライムを、フィリスは難なく倒せるようになっていたせいもあって、スライムの魔力の出所を特定する事はできなかった。


「もう少し抑えた方が良いぞ?」


「大丈夫、落ち着いたわ」


 次のフロアまでのスライムを一人で一掃したフィリスの額には汗が滲んでいた。

 それを見て、ルーキスは「ちょっと休憩するか」と、提案。

 フィリスはその提案を聞き入れてルーキス達はフロアの入り口辺りで腰を下ろした。


「このフロアには宝箱は無いな」


「相変わらずスライムがいるだけね」


「こっちに、来ませんね」


「こっちに気が付いて無い、というよりはこっちがテリトリー内に入っていないから迎撃する気も無いんだろう。まあ邪魔してくるなら追っ払うさ」


 言いながらルーキスはバックパックに縛り付けていた酒場のマスターから貰ったバスケットを置くと、蓋を開いて中から林檎を取り出した。


 その林檎をフィリスとイロハに渡し、ルーキスはもう一つバスケットの中から林檎を取り出すと、風の魔法である真空の刃を手の平の上で発生させて林檎を切り裂く。

 

「おお。お見事です」


「ちょっと魔法を使えるようになったから分かるけど、林檎を消し飛ばさない威力で魔法を使うって、凄いわね」


「分かるか? そうなんだよ、威力を抑え過ぎると切れないし、かと言って威力を上げ過ぎると細切れになっちまうからな」


「私もちょっとやってみようかしら」


「まだやめとけ。まずは得意な魔法からって言ったろ? 使い慣れてない風魔法なんか使ってみろ。林檎が一個(ちり)になっちまう」


 手の平に魔力を集中させようとしたフィリスに手を翳して、魔法の行使を中断させ、ルーキスは切った林檎をフィリスの林檎と交換。

 手に取った林檎を再び魔法で切り裂くと、その切られた林檎を口に運んだ。


 その時、ルーキスはイロハが自分を見ている事に気が付く。

 どうやら自分の林檎も切ってもらいたいようで「あの。わたしのも」と、イロハは両手で持った林檎をルーキスに差し出してきた。


「はいよ。動かすなよ〜?」


 差し出された林檎を魔法で切り、ルーキス達は一時の休憩を甘い林檎をシャクシャクと口の中で楽しみながら過ごした。


 そして、しばしの休憩のあと、ルーキス達は行動を再開。

 現在地のフロアのスライム討伐を今度はイロハに任せた。


「無理そうならすぐに援護に入るから、好きなように戦ってきな」


「わかりました。行ってきます!」


 ガントレットを装着し、フロアの中央に蠢く巨大なスライムに突撃していくイロハを、フィリスとルーキスは見守る。

 フィリスは蛮刀を抜いていつでも飛び出せるように準備し、ルーキスは魔力を目に集中してスライムの魔力の流れの観察を開始。


 そんな二人を背に、巨大なスライムに突撃したイロハは魔力を体に巡らせ身体強化魔法を発動。

 そこから更に両の拳、ガントレットに魔力を纏わせる。

 

 石の地面を踏み割って、スライムの懐に文字通り飛び込んだイロハは雷撃を伴った拳をスライム目掛けて放った。

 だが、どうやらイロハの拳速が雷撃魔法発動を上回ったらしい。

 イロハの拳はスライムの体を覆っていた防御魔法により阻まれてしまった。


 しかし、その直後スライムの巨大な体をイロハの魔力と雷撃魔法が立て続けに襲った。


 雷鳴を伴ったイロハの一撃は巨大なスライムを麻痺させ、ただでさえ緩慢な動きを更に制限する。

 敵であるイロハに触手を発生させて襲おうとするが、イロハの一撃でスライムの動きは停止してしまったのだ。


「面白い技だな。このダンジョンのスライムじゃなかったらさっきの一撃で消し飛んでたんじゃないか?」


「私も負けてらんないなあ」


「競うな。持ち味を活かせば良いんだよ。今やるべきは、イロハの応援だ」


「そうね。ふぅ〜。イロハちゃん頑張れえ!」

 

 フィリスの応援に背中を押されたか、イロハは再び拳に魔力を纏わせると、スライムに向かって連打を浴びせた。

 痺れる体もお構いなしでスライムは触手を伸ばすが、その一撃はイロハに避けられ、大きな隙を作る事になる。


 その瞬間をイロハは見逃さなかった。

 両の拳に魔力を纏わせ、イロハは両手を開き、同時に雷撃を纏った掌底を放った。


 再びフロア一帯に雷鳴が響き渡る。


 それが戦闘終了の合図になった。

 

 イロハの掌底から放たれた雷撃は巨大なスライムの核に直撃。

 その熱と威力で、スライムの核は塵と化し、その巨大な体ごと消し飛ばされたのだ。


「ドラゴンの咆哮みたいだったな」


「必殺技みたいで格好良いわね」


「名付けるなら雷哮拳(らいこうけん)とかか?」


「掌底だから雷哮掌(らいこうしょう)とかじゃない?」


 と、イロハが叫んで使うわけでもないのに、ルーキスとフィリスは先程のイロハの技にああでもないこうでもないと、名称を考えていると、その二人の側に別のスライムが湧いて出た。


 大きさからすればイロハが先程倒したスライムの半分ほど。

 ルーキスが最初に行ったフロアで倒したスライムと同等である。


 そんなスライムが言い合うルーキスとフィリスに襲い掛かったが、スライムは「うるさい!」とルーキスとフィリスに一蹴されてしまう事になった。


「あ、あの二人共、喧嘩は」


「ん? ああいや別に喧嘩では無いぞ?」


「そうよ。ちょっと熱くなってただけよ」

 

 武器を納め、そう言ってイロハを撫でるとフィリスへイロハを抱え上げた。

 そんな二人の様子にルーキスは微笑むと、先程のイロハの戦闘を見ていて分かった事を二人に知らせようと口を開いた。


「さっきの戦闘で分かった事が一つある」


「なに?」


「スライムの魔力は床、というよりは地下から供給されているようだった。やっぱり何か違和感がある。もしかしたらこのダンジョンのスライムはそれ自体が罠の可能性がある」


「うーん。つまり?」


「罠なら解除方法があるかもしれない。スライムの防御魔法を解除して攻略しやすくする方法があるかもって話さ」


「なるほど?」


 分かっているのかいないのか。

 ルーキスの言葉に頷くと、フィリスはイロハのほうを見た。

 イロハはあまりよく分かっていないようで、こちらを見たフィリスに首を傾げている。


「とりあえず下に行こう。俺たちでこのダンジョンの攻略法を確立出来れば、優しくしてくれた宿場町の人達に恩返し出来るってもんだ」


「それは確かにそうね」


「わたし、まだまだ頑張ります」


 こうして、ルーキスは初めて魔法を行使しながら戦闘しているフィリスとイロハの体調を診ながら、地図を頼りに一階層目から地下に向かうための階段目指して歩き始めた。

 ダンジョン攻略は今のところ順調。問題なしだ。

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[気になる点] 「名付けるなら雷哮拳らいこうけんとかか?」 「掌底だから雷哮掌らいこうしょうとかじゃない?」 この書き方を意図して書いてるのか判らないですが、振り仮名は普通上に小さく付けた方が読みや…
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