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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第67話 スライムへの違和感

 フィリスとイロハの魔法の鍛練を行い、ルーキス達は満を持して湖岸のダンジョンに挑戦する事にした。


 下見の時以来のダンジョンの様子は相変わらず。

 石畳の通路に綺麗に整えられている石の壁。

 天井に揺らめく水面がその水面の向こうで輝く魔石の光りを乱反射して、ともすればどこかの廃城の通路を思わせる通路を幻想的に照らし出している。


「沸いてる沸いてる。スライム達がワラワラと」


「鍛練の成果、見せてもらおうかな?」


「まっかせてよ!」


「が、頑張ります」


 バックパックを下ろし、フィリスが蛮刀を腰から抜くと肩に担いでニカっと笑い、イロハは打突用のガントレットを装着して一歩前に出た。


 同時に駆け出すフィリスとイロハ。

 その後ろで、ルーキスは魔力を目に集中させ、何かを解析するかのようにスライム達の様子を凝視している。


 通路を塞ぐように現れたスライム数体。

 そのスライム達をフィリスとイロハは魔力を纏わせただけの刃と拳であっと言う間もなく討ち払っていった。


「ふむふむ。一階層目なら魔力を纏わせただけでも十分か。良いね二人共。しっかり魔力を制御出来てる」


 崩れ去るスライムの死体から離れて帰ってきたフィリスにルーキスはハイタッチし、イロハの頭を撫でながら言うと、ルーキスは預かったバックパックをフィリスに渡した。


「この調子で行こう、と言いたいが、すまないちょっと気になる事があるんでな。この階層、周って良いか?」


「別に良いけど。気になる事って何?」


「このダンジョンのスライムのしぶとさの秘密だ。やはりどうにも腑に落ちなくてな」  


「まあ確かにそれは気になるけど」


「ダンジョンの魔物って、そういうモノなのでは」


 ルーキスの言葉に了承はするものの、その見立てには懐疑的な様子のフィリスとイロハが「ねえ?」とお互いに顔を見合わせて首を傾げる。


 そんな二人にルーキスは「その考え方は危険だぞ?」と苦笑した。


「ダンジョンだからという、その思い込みは視野を狭める事になる。ダンジョンは俺たちが暮らす地上とは別の法則で成り立つ物だ。天井の水面がそうであるようにな」


 ルーキスはそう言ってバックパックからダンジョンの地図を取り出すと、地下への階段は目指さずに別のフロアに続く通路を歩き始めた。


 そんなルーキスの後を武器を納めたフィリスとガントレットをリュックサックよろしく背中に担いだイロハが手を繋いでついて歩く。


「このダンジョンに現れるスライム。核しかない事に気が付いたか?」


「ああ。そう言えば、地上のスライムは核と魔石の二つで目が付いてるように見えるけど。このダンジョンのは一つ目だわ」


「魔物にとっての魔力の供給源である魔石。それが無い事で魔法の行使は不可能になるはずだが、このダンジョンのスライムはずっと魔法を使い続けている」


「スライムが魔法を? いつ?」


「ずっとだよ。下見の時も、さっきも。このダンジョンのスライムは薄い膜みたいに魔力を纏って物理的な攻撃から身を守っている」


 言いながら歩いていると、ルーキス達は通路を抜け、広いフロアに出た。

 丸い柱が四本、四角いフロアの四隅に建っている。


「あっ! 宝箱だ!」


 フィリスがイロハの手を引いて部屋の奥に無造作に置かれている埃を被った宝箱に向かって歩いていった。

 その様子を眺めルーキスが苦笑していると、フィリスとイロハ、ルーキスの間に地面から染み出すようにルーキスとほぼ同じ体高を持つ巨大なスライムが現れる。


「やはり一つ目。防御力は他と一緒か?」


 バックパックを下ろしたルーキスが、ハルバード片手に巨大なスライムに切り掛かった。

 魔力の出所を確かめるためにハルバードに魔力は纏わせていない。

 しかし、ルーキスの身体強化魔法が乗った筋力がそうさせたのか、巨大なスライムはルーキスの意に反して核ごと両断されてしまう。


「ありゃ。図体はデカくても防御力は変わらんのか。マズったな」


「ルーキスなら魔法無しでもこのダンジョン攻略出来そうね」


「それは分からんぞ? まだ一階層目だからな。で? 宝箱の中身はなんだった?」


 スライムを一蹴したルーキスに、フィリスが苦笑いを浮かべながらイロハと合流。

 宝箱の中身だったのだろうか、イロハが手の平程の魔石を差し出してきた。


「これが入ってました」


「おお魔石か。何も無いよりはだいぶんマシだな。帰ったら換金できるし」


「あとコレね」


 イロハから差し出された魔石を受け取ったルーキスに、フィリスがある物を摘んで差し出して来た。

 何やら紐で纏められた植物のようだ。


「これは」


「何かの薬草だったりする? 錬金術は分かんないからルーキスにあげるわ」


「いや。コレは」


「何よ?」


「ただの草だな」


「ただの草?」


「草」


 宝箱の中にあったのはただの草だった。

 特に使い道のない、いわゆるハズレ。

 それを握りつぶしてフィリスは悔しそうに顔を歪める。

 そんなフィリスを見て、ルーキスは意地の悪いにニヤけ面を浮かべた。


「何笑ってんのよ!」


「いやあだってなあ、草ってお前」


「誰よダンジョンの宝箱にゴミ入れたのは!」


「入れたのはダンジョンそのものだ。まあ普段人が来ねえから、適当に入れたんだろうなあ。まあ気を落とすなフィリス。ダンジョン初のお宝がゴミなんて話はよくある事だ。物語にもあるだろ? そう言う話」


 ルーキスに諭されるが、ミスルトゥのダンジョンに引き続き、開けた宝箱がハズレだった為、フィリスはご立腹の様子だ。


「前もハズレだったのに! 納得出来なーい!」


 草の束を宝箱に向かって投げ付けると、フィリスは次のフロアに進む為の通路へと向かって行った。


「以前何かあったのですか?」


「ミスルトゥで宝箱に擬態してたミミックに食われかけてな」


「そう、なんですか」


「いやはや。フィリスは宝に縁がないなあ」


 はっはっは。と声を上げながらフィリスの向かって行った通路に向かうルーキス。後をイロハが追って行く。


 その通路の先。現れたスライム相手にフィリスが暴れ回っている様子が見えていた。

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