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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第三章 湖の街【オーゼロ】
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第66話 湖岸のダンジョン攻略開始

 イロハが決意を新たにポーターから冒険者へと転向を果たした翌日。


 ルーキス達はその日、全面的に鍛練を休止してダンジョン攻略に備えて体を休めていた。

 

 とはいえ、宿で寝てばかりも飽きるので、三人は明日の為の準備をしたり、小さな宿場町や湖岸を散歩したり、丘の教会に行って祈りを捧げたりしていた。


 この国で信仰されている神に祈りを捧げ、明日の攻略成功と、三人の無事を各々願う。

 

 その祈りを終え、教会に献金をしたルーキス達は外に出た際に丘の上からダンジョンへ向かう冒険者パーティを見送った。


 どうやら諦めずにダンジョンに再挑戦するようだ。


「頑張るねえ」


「なにかこだわる理由でもあるのでしょうか?」


「もしかしたら、稀少なお宝でもあるのかも」


「お宝、ですか?」


「そう、お宝。異世界由来の異次元収納付きのポーチとかね」

 

 宿へと帰るために踏み固められた土の地面を歩いていくルーキス達。

 話題はダンジョンの事や、異世界人の物語についてだった。


「異次元収納かあ、欲しいよなあ。バックパックの持ち運びが楽になるもんなあ。売るにしても、商人なら破格の値段で買い取ってくれるだろうし」


「本当に存在するのかしら、マジックポーチなんて」


「さてなあ。だがまあそういうのを求めて旅してる人らもいる。ある、と思った方が楽しいのは確かだよなあ」


「そうね。無いって諦めるよりは有るって前提の旅のほうが楽しく探せるわよねえ」


 まだ見ぬお宝や、古代の神々により創られたと伝えられるような伝説の武具、前人未到の大地、異世界人が残した技術を想像し、ルーキス達は楽しそうに話しながら宿に帰った。


 そして、寝るまでの間に三人はそれぞれの装備の最終点検と手入れを行う。


「先に行ったあの人達大丈夫かしら」


「他人の心配をする余裕が出てきたか、頼もしい事だね」


「ルーキスほどじゃないわよ。頼もしいという点で、貴方ほどその言葉が相応しい人を私は知らないわ」


「ですです」


 装備の点検を終え、部屋で歓談していたルーキスの言葉にフィリスが答え、それにイロハが同意して頷いた。

 こうしてダンジョン攻略前日の夜は更けていき、この日は早めに就寝。

 ルーキスはイロハを腕枕して横になり、深夜になると寝ぼけているのか、その手をフィリスが握った。


「まずい。痺れてきた」


 ゆっくりと、イロハの頭が乗っている腕をどけようとするが、その手はフィリスに握られている。

 さてこうなるとルーキスは腕が痺れるのを待つだけだ。

 ゆっくり眠るにはそれは避けたい。

 そこでルーキスは腕にのみ強化魔法を発動。

 血流を正常化して腕の痺れを一時的に防いだが、結局寝たあと魔法が溶けてしまい、朝起きる頃にはルーキスの腕は痺れてしまっていた。


「うおお。イテテテェ」


「だ、大丈夫ですか?」


「何してんのよダンジョン攻略前に」


「何かしたのはどっちかと言うとフィリスなんだけどな」


「な、なによ」


「一晩中、俺の手を握ってたんだぞ?」


「え? 私が⁉︎ それなら、ごめんなさい」


「別に怒ってないよ。まあすぐに治るさ。さあ、飯食ったらダンジョン攻略だ。スライムばかりのダンジョンだが、油断せずに行こう」


「そうね。頑張りましょう」


「わたしも頑張ります」


 ルーキス達の英気は十二分。

 三人は朝食のために酒場に向かうと、いつもより果物が多めの食事をとった。


「遂に攻略に行っちまうのか。無理はするなよ? ほれ、これは餞別代わりだ。フルーツは早めに食べるんだぞ?」


「サンドイッチに干し肉まで。ありがとうございますマスター。無事攻略して三人で帰ってきます」


「別に攻略なんかしなくて良いんだぞ? 三人一緒にここで暮らせば良い」


「そう言ってもらえて嬉しいです。でもすみません、俺たちは」


「分かっているよ。すまない、老人の戯言だ、聞き流しておいてくれ」


 酒場のマスターが持ってきたバスケットにはサンドイッチや干し肉。林檎などの果物が入っていた。

 それを受け取り、礼を言うルーキスの姿を見ていた酒場のマスターはどこか寂しそうに呟いた。


 攻略難度が高い、というよりは攻略が面倒くさいダンジョン故に、廃れていくしかないこの宿場町の現状を嘆いての事だったのだろう。


 そんな酒場のマスターだったが、ルーキスが言い切る前に首を横に振ってルーキスの言葉を遮った。


 たった数日宿場町に滞在しただけだったが、酒場のマスターはもちろん、宿屋の夫婦からも、ルーキス達は好かれていた。

 彼らにとってはそれこそ息子や娘が帰ってきたような感覚だったのだろう。


 だからだろうか。

 酒場から出たルーキス達を宿屋の夫婦も見送りにやって来た。


「行くんだね」


「行きます。見送りありがとうございますダンさん、アンナさん。ちゃんと帰ってきますので、部屋そのままにしておいて下さいね」


「お土産期待してて下さい!」


 宿場町の中央広場で酒場のマスターと宿屋の夫婦に、ルーキスとフィリス、イロハはそれぞれ握手を交わし、ダンジョンへと向かっていった。


 空は今日も晴れ模様。

 風は爽やかに吹いて、雨が降る様子は無い。


 たった三人でのダンジョン攻略だというのに、ルーキス達の顔には明るさこそ見れ、暗さなどは見当たらない。

 

 そんなルーキス達は数日振りに再びダンジョンに足を踏み入れた。

 もちろん目指すは最下層。

 ダンジョンの主の間だ。

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