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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第二章 二つめの町【ミスルトゥ】
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第33話 第三層ダンジョン最奥

 ミミックの奇襲を退けたルーキスとフィリスは戦った区画から退出すると、すぐ側の階段からこのダンジョンの最下層、第三層へと向かった。

 

 第二層と同じく巨大な洞窟の様相である第三層に踏み込んだフィリスはため息を吐き、その横でルーキスはニヤッと笑う。


「三階層目となると歓迎も熱烈だな。ここから先は体力温存のために俺も加勢しよう」


「助かる〜。さっきのミミックで一気に疲れちゃったからね」


「休憩してから降りれば良かったな」


「コレを抜けたら休憩させて」


「ああ、ではそうしよう」


 軽口、というよりはフィリスは自分を鼓舞する為にルーキスに言った。

 第三層に足を踏み入れた二人の目の前に出現したのはゴブリンの集団が十体ほど。


 手に持つ武器は第二層のゴブリンに比べれば随分上等で、石や木の棍棒、錆びたり折れたりした剣ではなく、そこそこには斬ることが出来そうな剣や槍を装備しており、その貧相な体には粗末ではあるが防具すら装備されている。


「ゴブリンソルジャーか。手に余りそうなら下がるんだぞ? 良いな?」


「頑張る!」


「では、行くとしよう」


 そう言って、ルーキスはハルバードを肩に担いで駆け出した。

 一方、ここに来てフィリスはこのダンジョンにて初の身体強化魔法を発動。

 ルーキスほどの速度では無いが、ゴブリンソルジャーの集団へと駆け出した。

 

 狭い場所、というほど狭くも無い、大人四名が両手を広げてもまだ余裕がある通路とはいえ、リーチの長いハルバードを振るにはやはり狭い。

 そんな場所にも関わらず、ルーキスは壁や地面を削りながら力任せにハルバードを振る。

 

 その威力たるやゴブリンソルジャーを武器防具ごと斬り裂き、壁や地面を削って飛ばした飛礫つぶてや瓦礫がれきすら砲弾じみた凶器と化していた。


 そんなルーキスを後ろから追う形で、フィリスもゴブリンソルジャーと戦闘に移行。

 ルーキスの撃ち漏らしを含めて各個撃破していく。


 こうしてゴブリンソルジャー達を掃討すると、二人は魔石を回収し、敵が霧となって消え去った地面に腰を下ろした。


「し、死ぬかと思った」


「そうか? 随分と成長してると思うが」


「アナタの攻撃の余波で死ぬかと思ったの」


「はっはっは! そりゃすまんな」


 両手、両膝を地面につき汗を流すフィリスの隣でルーキスが声を上げて笑う。

 そんなルーキスに、フィリスは「ぐぬぬ」と歯噛みした。


 そのあと、休憩もそこそこに二人は地図を頼りにこのダンジョンの王の間へと向かって行く。

 出現する魔物の情報もあってルーキスとフィリスは二人だけのパーティながら快調にダンジョンを進んで行った。

 ときどきフィリスが罠に掛かりそうになるが、そこはルーキスのフォローとアドバイスで切り抜ける。

 

 結果、地図で見て王の間まであと少しというところまで来た頃にはフィリスも罠を感知できるようになっていた。


「あ、この地面ちょっと色違うわね」


「壁にも違和感があるな、変に窪んでる」


「地面の罠を回避したと安心させておいてってヤツかしら、姑息ね」


「姑息だが、この薄暗さでは効果的だ。最後まで油断するなよ?」


「大丈夫よ。油断なんてしないわ」


 と、言いながらルーキスとフィリスが罠を避けて進もうとしたところ、地面から滲み出てきた黒い霧からまたもやゴブリンが出現。

 罠を踏まなかった二人に代わって丁寧に地面の罠を踏み抜き、壁の罠を作動させた。


「っげ」


「はは! なるほどなあ」


 顔を青ざめるフィリスとニヤッと笑うルーキスの頭上と二人が立つ通路の両方の壁に魔法陣が出現。

 天井の魔法陣からは氷の槍が、壁の魔法陣からは岩の杭が無数に伸びて二人を襲う。


「ちょ、ちょっとどうするの⁉︎」


「そうだな。こうしようか」


 狼狽するフィリスにルーキスは近付くと、フィリスの肩を抱き寄せ、ハルバードを地面に突き刺し、それをトリガーとして魔法を発動。

 極めて強固な防御結界を作り出し、ルーキスはその罠を受けきる事とした。


「ゴブリン達は作動させた罠で自爆、か。コレじゃ魔石は期待出来んな」


 発動した罠の魔法でボロ雑巾のように成り果てたゴブリン達を見て、ルーキスは肩を落とす。

 そんなルーキスに肩を抱かれたままのフィリスは、戦闘時より大きく脈打つ自分の心臓の音を聞きながら顔を赤らめていた。


「ね、ねえ。あの」


「ん? ああすまん! 範囲を狭めると結界の硬さを向上出来る縛りがある魔法なんでな、安全を第一に考えた結果こうしちまった」


「説明しなくても、なんとなく分かるわよ」


「嫌だったよな。すまない」


「……別に、嫌ではないけど」


 手を放し苦笑するルーキスと、顔を赤らめたまま残念そうに眉をひそめるフィリス。

 そんな二人にダンジョンという魔物が容赦するはずも無く。

 二人の前に再びゴブリン達が出現。

 ルーキスとフィリスを強襲した。


「ああもう! 鬱陶しいったらない!」


「まあ仕方ない。あと少しで最奥だ、踏ん張れ!」

 

「言われなくても!」


 フィリスは襲ってきたゴブリン達にかなりご立腹の様子で、それまでより更に苛烈な勢いでゴブリン達を迎撃。

 ルーキスと共にあっという間に出現したゴブリン達を打ち倒していった。


「ふーむ。そろそろバックパックが満載だなあ」


「そうね。二人だと荷物はすぐ一杯になっちゃうわね。やっぱりもう少しパーティメンバーが必要ね。もしくは荷物持ちポーターを雇うか」


「荷物持ちか、確かにそれも有りだな」


 バックパックに入らない魔石をバックパックのポケットから取り出した麻の袋に入れながらボヤく二人。

 

 このあとも、王の間の前に辿り着くまでに何度か戦闘はあったものの、罠は先程の物が最後だったようで。

 二人は遂にダンジョンの最奥、王の間の門前へと辿り着いた。


「私達だけでここまで来ちゃったね」


「まだ終わりじゃないぞ? 最後にダンジョンの主とご対面だ」


「わ、分かってるわよ」


「でも残念ながら、ここまでに君のお爺さんの遺品はカケラも見つからなかったなあ」


「いくらアナタが強いとはいえ、私達二人で攻略出来るダンジョンでお爺ちゃんが死んだとは思えないし。ハズレだったのかな」


「かもな。まあでもせっかくここまで来たんだ。二人でこのダンジョン踏破してやろうぜ」


「そうね。戦果も魔石だけってのは締まらないし。何かお宝の一つでも頂いて帰りましょ」


 王の間の門前、そんな事を話しながら二人は最後の休憩をという事で門前に広がっている広場の片隅に腰を下ろし、軽く食事をして仮眠を交互にとる。


 そして体力と気力を回復した二人は装備の最終点検がてら、応急で武器の刃を持参した研ぎ石で整備すると二人で王の間へ繋がる石門に手を掛けた。

 すると重い物を引きずる音をたてながら徐々に開いていく。


 こうして二人はダンジョンの最奥、王の間に足を踏み入れるのだった。

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