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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第二章 二つめの町【ミスルトゥ】
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第25話 戦闘後の休息

 ルーキスとフィリスの加勢により、ゴブリンの集団はあっという間に撃破された。


 そのゴブリンの魔石は冒険者たちにとって良い収入源になる。


 ルーキスとフィリスはもちろん、助けられた冒険者四名も手分けしてゴブリンから魔石を採集。

 その際、ルーキスはゴブリンから魔石を採集する前に指を数本切り取った。


「げっ。指なんかどうするのよ」


「まあちょっとな。さて、こうして魔石を取り出していても襲撃が無いあたり、敵はもういないらしい。馬車を呼びに行こうか」


「そうね。そうしましょ」


 安全を確保したと見たが、それでもルーキスとフィリスは武器を納めず、周辺を警戒しながら護衛してきた馬車へと向かった。


 その二人を馬車の持ち主である商人の男が心配そうに出迎える。


「遠巻きに見ていても、君達がやり手だというのはなんとなく理解出来たよ。凄いもんだねえ最近の若者は。怪我はないかい?」


「鍛えてますからね。怪我は大丈夫です。俺も彼女も無傷、付着してるのは全部返り血です」


「すまんが、あいにく消臭剤は積んでいなくてね。悪臭は我慢してもらうしか」


「その辺りは任せてください。俺は錬金術も使えますから」


 御者席から降りてきた商人の男ルガンは申し訳なさげに言うが、ルーキスはルガンにニコッと笑うと馬車の後方に向かい、荷台に飛び乗った。


 その荷台に乗せていた自分のバックパックから小さな錬金壺と集めて乾かしていたハーブを二種類一房ずつ取り出して荷台から飛び降りる。


「さて、それじゃあ予定通りあの広場で休憩にしましょう」


「ああ、分かった」


 御者席にルガンが座るのを待ち、ルーキスとフィリスはそれぞれ馬車を引く馬の左右に陣取る。

 そして、ルガンが馬の手綱を握ったのを見てルーキスはフィリスに頷くとそれを合図に歩き始めた。


 進んだ先にはルーキス達が助けた四人の冒険者と冒険者達が護衛していた馬車とその持ち主が待っていた。


「さっきはありがとう。助かったよ」


「冒険者ですから、困った時はお互い様です」


「これはさっき集めたゴブリン達の魔石だ。命を助けて貰った礼には足りないかもしれんが、どうか受け取って欲しい」


 そう言いながら、助けた四人の冒険者の中では一番の年長か。

 短い茶髪で頬に傷のある長身で体格の良い、鉄の鎧に身を包んだ二十代後半くらいの男が袋を差し出しながら言った。


 中にはもちろん男の拳よりは少し小さいくらいの。ゴブリンから採集した魔石が詰め込まれており、袋はパンパンに膨らんでいる。

 

 魔石を譲渡するというのは金を譲渡するのと同義だ。

 本来なら喜んで受け取るところだが、ルーキスはその申し出を断る為に首を横に振った。


「いえ、こちらも相当数の魔石を回収させてもらいましたので、その魔石は今回の戦闘で傷ついた鎧や武器の修繕や体を癒す為にお使い下さい」


「……そうか。分かった、ありがたくコレは貰っておくよ」


「俺たちは今から馬の休憩を兼ねて昼食にしますが、あなた方は?」


「俺たちは丁度出発するところを襲われたんだ。なのでこれから直ぐに発つよ。今から出れば夕方には町に辿り着けるからね」


「分かりました。では、道中お気を付けて」


「ありがとう。君達もこの先の町、ミスルトゥに向かうのだろう? もし向こうで会ったらその時は食事でも奢らせてくれ」


 その男の言葉に続き、男の仲間達はそれぞれルーキスとフィリスに礼を言うと馬車を引き連れて広場を離れ、道を進んでいった。


 その四人の冒険者と冒険者達が守る馬車を見送り、ルーキス達はそのほぼ円形に開けた広場を囲むように広がる森の側に馬車を止める。


「では儂は食事を用意しますのでな」


「了解です。俺は馬車を挟んで逆側で作業してますんで、何かあれば声を上げて下さい」


 ルガンの言葉に返答すると、ルーキスは錬金壺と錬金に使用する素材を持ったまま馬車と森の間に向かった。


 そして「ここで良いか」と、辺りを見渡し馬車を背にして地面に座る。


「なになに? 何を作るの?」


「魔物避けを兼ねたゴブリンの悪臭を消す為の香さ」


「そんなの作れるんだ」


「父さんに教えてもらったんだ。効果は検証済み。だから、もう少し我慢しててくれ」


「ありがた〜い。もう臭すぎて、鼻が曲がっちゃいそうなのよ」


「塵になっても悪臭は残していくんだから、たまったもんじゃないよなあ」


 フィリスの言葉に苦笑しながら、ルーキスは壺を地面に置くとその中に魔法で水を張る。

 そして、その壺を中心にいつしかプエルタの街の宿の一室で使用した魔法陣を描いていった。


 ルーキスは描き終えた魔法陣に魔力を注ぎ、その魔法陣から青い火が吹き出す。

 その青い火を魔法陣の中心に置いた壺に集め、水を熱していった。


 そして、ルーキスは水が煮えるまでにゴブリンの指を手の内にて魔法で圧縮、ゴブリンの指数本を拳に収まりきるくらいに小さく一つにまとめて壺の中へと投入。


 すると、壺の中の熱湯が毒々しい紫色に変化していく。

 ルーキスの後ろで膝に手を付いて様子を見ていたフィリスからもその変化は見えていた。


「うわ。凄い色、まさに毒薬って感じね」


「お、察しが良いな。このままドロドロになるまで煮詰めていけば、そこそこキツイ毒になるぞ?」


「それが魔除けや消臭剤になるの?」


「なる。このハーブを入れて魔力を注入しながら煮詰めればな」


 そう言いながら、ルーキスは煮え立つ紫色の液体にハーブを二種類、まずは一房を半分ずつ放り込んでいく。

 そこからしばらくまた煮詰めていくと、紫色の液体は淡い桃色に変化していった。

 

「へえ〜。草入れただけでこんな綺麗な色になるんだ」


「もう少し煮詰めたら、残りのハーブも入れて、更に魔力を込めながら煮詰めていけば」


 説明しながらルーキスは壺に手を翳して魔力を注ぎ、更に液体を煮詰めていく。

 しばらくそうしていると、今度は桃色の液体が鮮やかな青色に変化。

 その変化を見て、ルーキスは魔力を注ぐのを止めるとパンッと手を叩き魔法陣の火を消した。


 すると、壺から液体と同じ色の煙が輪になってポンと音を鳴らして噴出。

 それを合図にするかのようにモクモクと壺から煙が吹き出し始める。


 どうやらこの煙は空気より重いらしく、宙に霧散することなく地面を這うように広がっていった。


「完成?」


「完成だ。座って待ってな、しばらくすれば臭いは消える」


「そうなの?」


「そうなの」


 ルーキスに言われるまま、フィリスは壺の前、ルーキスの横に腰を下ろす。

 そんなフィリスの鼻にゴブリンの返り血から漂っていた悪臭とは違う、花のような爽やかな香りが漂ってきた。


 こうしてルーキスは錬金術を完了。


 商人が食事の用意を終えるまで、二人は壺から出てくる煙を浴びながらしばしの休息を楽しむのだった。

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