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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第一章 転生と出会い、そして始まり
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第21話 エルフの武具店

 武具を新調する為に冒険者御用達の武具店を訪れたルーキスとフィリス。


 足を踏み入れたその店は壁一面に様々な武器、それこそ剣を始めとして槍や斧、弓などが飾らせていた。


 その意匠は様々で、装飾の多い式典などに用いられそうな物から、ただ敵を屠るという一点に目的を絞っている事が伺える無骨な物まで、様々なニーズに応える為に幅広いデザインの武器が取り揃えられている。


 それは防具も同じで店の真ん中に設置されている棚や適当には装飾少なめの安い胸当てや手甲、脚甲が置かれ、窓の近くに並べられたマネキンには過度な装飾が施された煌びやかな防具が着せられていた。


 そんな佇まいの奥。

 店の出入り口から見て正面の奥の壁際のカウンターに、先程青年冒険者を追い出したのであろう女性の姿があった。


 肩までの短い金髪。

 翡翠のように緑色にギラギラ輝く瞳。

 飾り気や色気とは無縁な紺色の作業着を着た人間よりやや耳が長いエルフの女性。

 そんなエルフの女性がカウンターの向こうからルーキスとフィリスを睨んでいた。


「っち。今度は女連れか。冒険者が浮ついてんじゃねえよ」


 眉間に皺を寄せたエルフの女性は明らかにご機嫌斜めだ。

 その綺麗な顔立ちに似合わない口の悪さでもって二人に聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟くと、彼女は作り笑いを浮かべて「いらっしゃい。私の店、リスタ武具店にようこそ」と、腕をお世辞にも有るとは言えない胸の前で組みながら言った。


「お邪魔する。少し見て回っても?」


「買ってくれるならね。冷やかしならお断りだよ」

 

「それなら大丈夫。金は持ってきてるよ」


 言いながら、ルーキスは武具店の女主人、リスタに腰に下げていた魔石で作られた石貨の入った袋を見せるとニコッと微笑んでフィリスと店の武具を物色し始める。


「ちょ、ちょっと。そろそろ手を離して欲しいんだけど」


「ん? ああすまない。軽率だったな」


 果たして本当に手を離して欲しかったのか、顔を赤くして言ったフィリスの希望に応え、ルーキスは繋いでいた手を離すと壁際に掛けられている武器を見上げて腕を組み片手を顎に当てた。


 そんなルーキスを横目にフィリスはため息を吐き、肩を落とすが、首を振って気を取り直し、本来の目的である武具新調の為にルーキスから離れて剣を探す。


「俺の剣はまだ使えるが、さてどうするか。槍か斧か、何か一本長物が欲しいな」


「アンタ、装備から見て駆け出しってところだろ? 長物なんてやめて無難に剣でも使った方が良いんじゃないのかい?」


 ルーキスが漏らした独り言に答えたのはフィリスではなく、カウンターから出てきて二人の様子を見にきた女主人リスタだった。

 

 作業着のズボンのポケットに手を突っ込み、どう見ても接客する態度ではない。


「駆け出しは先日卒業しましたよ。今は相方と同じ初級冒険者だ。近々ダンジョンに行くつもりでね。大型の敵と遭遇した時の為に長物が欲しいんだけど」


「アンタとあっちのお嬢さんが正規の冒険者だって? 随分若いようだが?」


「若いのは貴女も同じでは? 見たところ私達と同年代くらいに見えますが?」


「見て分かるだろ? 私はエルフだ。外見は確かにアンタらと変わらんが、中身は百に近いんだぞ?」


「褒め言葉として言いますが、十分若いですよ。魔力が瑞々しいですからね」


「ほう。エルフの褒め方を心得てるじゃないか。予算は? 私で良けりゃアンタに最適なのを見繕ってやるよ」


「そりゃありがたい。じゃあお願いしようかな。どの武器も良い品で目移りしてしまいそうだったんだ」


「よせやい。いくら褒めたってマケないからな?」


 言いながら、リスタはポケットから手を出すとルーキスに向かってその手を伸ばした。

 ルーキスは予算を見せろとのリスタの言葉に従い、その手に腰の石貨が入った袋を乗せる。


 そして、リスタは預かった袋の口を縛っている紐を解いて中身を一瞥すると「今度はアンタの手を見せな」と袋を返しながら静かに呟いた。


「アンタいつから剣を握ってる? 若い割に随分鍛えてるね」


「お、分かります? まだほんの餓鬼の頃から親に内緒で森に入って木剣片手に狩の真似事をしてたんですよ」


「狩の真似? ふーん。まあ詮索はよすよ、マナー違反だからね。確か長物を所望だったか、ちょっとコッチに来な」


 ルーキスの手を離し、リスタは歩き出すとルーキスが見ていた壁とは逆の壁へと向かった。

 その際にリスタはフィリスにも「アンタも後で面倒見てやるからちょっと待ってな」と声を掛けていた。

 

「コイツなんかどうだい? 切るにも突くにもオススメだ」


「へえ。確かにコイツなら良さそうだ」


 向かった先の壁に掛かっていたのはS字の刃を持つ斧と槍を合わせた複合兵装、ハルバードだった。

 その飾り気の少ないハルバードを壁から外し、リスタはルーキスに手渡す。

 その握り心地、手に感じる確かな重量感にルーキスはご満悦で、かつて前世にて振り回していた戦斧の事を思い出していた。


「シックリくる。昔から握っていたような気さえするな。重さも丁度良い。うん、良いな。コレは良い」


「気に入ったようだね」


「ああ気に入った。コレを買うよ」


「お買い上げありがとうよ。じゃあ後はアンタの相方の分だね。待ってな、最適なのを選んでやるよ」


「それは助かる。貴女のような方に選んでもらえるなら安心だ」


 自信ありげに笑うリスタにルーキスも笑い返し、ルーキスはリスタに要求された分の石貨を渡して商談成立。

 ルーキスはフィリスの買い物が終わるまで手に入れたハルバードの握り心地を堪能していた。

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