エピローグ
ルーキスたちが一つ目の旅を終えてから約十年後。
ルーキスとフィリスはとある小さな村に居を構え、五歳になる息子ヴィルベルトと平穏な日常を過ごしていた。
「ただいま〜」
「お帰り〜。ヴィルー! パパ帰ってきたわよー!」
「パパお帰りー!」
ギルドの依頼を完遂し、帰宅したルーキスを、すっかり大人の女性に成長したフィリスが迎えた。
そんなフィリスが玄関から部屋に向かって息子の名を呼ぶ。
すると、ルーキスと同じ黒い髪、フィリスと同じ赤い目をした五歳の息子が大人になったルーキスに走り寄り、抱き着いた。
「ただいまヴィル〜。いい子にしてたかあ?」
「してた!」
「そうか〜」
抱き上げた息子の頭を撫で抱きしめるルーキス。
ルーキスに抱きしめられたヴィルベルトは嬉しそうに笑みを浮かべ、そんな二人を見てフィリスも笑っていた。
「今回の依頼はどうだった?」
「それが聞いてくれよ。ダリルの奴が嫁さんとさあ」
今日起こった話をしながらルーキスはコートを脱ぎ、装備を外して武具保管室に放り込むと、リビングへ向かい相棒の大斧をソファの側の壁に立て掛けた。
そして、しばらくソファで団欒していると、不意に息子のヴィルベルトが顔を上げ、笑みを浮かべ窓辺に向かって駆け出す。
「姉ちゃん! 姉ちゃんも帰って来た!」
「俺より感知範囲広いのなに? 俺たちの息子天才か?」
「あら。イロハちゃんも帰って来たんだったら今日はご馳走を用意しなきゃね」
などと言っていると、自宅の一軒家が微かに揺れた。
ルーキスは息子を抱き上げ、フィリスと共に玄関へ向かう。
そして片手で玄関のドアを開けた先には成長して大人の女性へと成長した額に二本の立派な角を生やしたイロハと、その背後に白い甲殻を纏った、まだ子供の四つ足の龍が立っていた。
「特級冒険者、ドラゴンライダー、イロハ様のご帰還だなあ」
「もう、やめてよ父さん」
「お帰りイロハ。一年ぶりか。どうだったムサシの国は」
「話したいことがいっぱいあるの。母さんも一緒に聞いてよ」
「もちろん聞くわ。さあ、中に入って。貴女も、ザリアも一緒にね」
フィリスに呼ばれ、白い四つ足の龍、ザリアは魔法で体を縮めると、イロハの肩に乗る。
それを見て微笑むとルーキスとフィリスはイロハを自宅に迎え入れた。
ルーキスたちは今も三人で、いや、今は四人と一頭で仲良く暮らしている。
転生したベテラン冒険者は二度目の人生を謳歌している真っ最中なのだ。
完




