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第150話 後夜祭

 ルーキスとレグルスが相打ちになり、気を失ってからしばらくして。

 二人は闘技場の一室。医務室で目を覚ました。

 祭り中は常駐している回復魔法を使える医者のおかげで傷は癒えている。


「はあ〜。楽しかったなあ」


 ルーキスがそう言いながら寝かされているベッドから体を起こすと、同じように隣のベッドで体を起こしたレグルスと目が合った。


「いやあ参った参った! 予想以上に強かったな君は! まるで歴戦の戦士と戦っている気分だったぞ! これで冒険者歴が二年未満だとは信じ難いな!」


 実際のところ前世から数えればルーキスの冒険者歴は優に数十年。

 ルーキスからしてみれば、そんな自分と互角だったレグルスこそ真に強者と思えた。


「私も楽しかったぞルーキスくん! また手合わせしてくれ!」


「こちらこそ。その時はよろしくお願いします」


 前世の息子レナードと、その息子の生まれ変わりであるレグルスという存在を誇りに思い、ルーキスは余計なことは言うまいと言葉を飲み込み笑顔を向ける。

 

 すると、どこからともなく爆発音が響いてきた。


 その爆音に驚いて、ルーキスが目を丸くしていると、レグルスがベッドから降りて医務室にいた初老の女医に「私たちは大丈夫だ。貴殿も後夜祭へ」と珍しく静かに言うとルーキスに手招きをした。


「私が倒れたあとは妻に進行を引き継ぐように言っていてな! この音は後夜祭のメインイベント! 花火大会だ! 私たちも参加しに行こうじゃないか!」


「花火大会に、参加?」


「うむ! 魔法の心得がある者は全員参加可能な花火大会でな! 魔法で派手な花火をあげて空を彩るのだ! 天に座す我らの祖先たちに、我らは元気だと伝える為にな!」


「へえ。そいつは面白いな」


 レグルスの手招きな答え、ベッドから降りたルーキスは、レグルスに先導されるままコロシアム内の通路を歩き、そして二人して決闘を行っていた闘技場まで足を運んだ。

 

 すると、二人を見つけた観客たちが一斉に歓声を上げる。

 その歓声にレグルスは手を振って応えると、そのまま手を天にかざして魔法を発動。

 夜空に向かって特大の花火を打ち上げて見せた。


「さあ祭りも大詰めだ! 皆の者! 派手にあげろお!」


 レグルスの叫び声に応えるように、観客席からも花火が上がった。

 そして、本日この場所で戦った冒険者や騎士たちも闘技場に現れて、戦っていた時とは打って変わって協力しあって色とりどりの花火を打ち上げていく。


「ルーキス。もう大丈夫なの?」


「ああ。もう大丈夫だ、心配したか?」


「あなたが倒れるところなんて、ティアとの鍛練以外では初めてだったから、心配したわ」


 闘技場に現れたルーキスを見て、箱席から飛び降りてきたフィリスが駆け寄ってきた。

 話を聞くと、ルーキスたちが目覚めるほんの少し前までは医務室にいたのだそうだが、そんなフィリスとイロハを「後夜祭の開催宣言を王妃一人でやらせるつもりか?」と、クラティアに半ば強制的に医務室から連れ出されたらしい。


「まさか、王妃様の隣に立たされるなんて思わなかったわ。ティアに私の前世の事、皆にバラされたし」


「俺が寝てた間に楽しそうなことしてたんだなあ」


「大変だったんだからね⁉︎」


「まあこんな経験そうないからな。良いじゃないか、たまには」


「何回もあってたまるもんですか。でもまあ確かに、こんな経験二度とはないでしょうけど」


 そう言って、フィリスは苦笑いを浮かべた。

 ルーキスもそんなフィリスに向かって微笑み返す。

 すると、そんな二人の肩に、レグルスが叩く勢いで手を置いた。


「さあさあ二人の花火も見せてくれ! 今日は今までの祭りの中でも特別だ! 国祖二人の生まれ変わりが放つ花火をみんなが待っているぞ!」


「うわ〜。恥ずかしい」


「まあまあ。良いじゃねえか。お望み通りデッカいのを上げてやろうぜ」


 そう言ってルーキスはフィリスから一歩離れると両手をかざして魔力を練り始めた。

 集まっていく魔力を圧縮し、そこに火の属性を付与したり、風魔法で上昇効果を多段的に付与していく。


「フィリス、手を」


「こう?」


 手を出すように言われ、フィリスが手を出すと、その手の上にルーキスは握り拳ほどまで圧縮した青い火の玉を浮かせる。


「危険物置くのやめてくれる?」


「打ち上げるまで爆発しねえよ。じゃあ、上げるぞ」


 フィリスの手の下に自分の手を重ね、ゆっくり持ち上げたあと、ルーキスはフィリスの手を介して火の玉に魔力を送る。

 それを合図にするかのように、青い火の玉が明滅しながら夜空に溶け込んでいった。


 その場にいた誰もが不発か? と疑問に思った瞬間だった。

 星空の下に白い星空が放射状に広がって観客席に降り注いだ。

 炎ではない、キラキラ輝く魔力の粒子が雨のようにコロシアムやその周辺に降ったのだ。

 それは、観客や闘技場にいた冒険者や騎士たちからは星が降ってきたのかと思える程で、騒がしかったコロシアムは静まり返って全員がその光景を眺めている。


「地面に向けて撃つと、辺り一面火の海になる魔法なんだけどな。反転、上昇させるとこうなる」


「あっぶな!」


 フィリスの言葉にニヤッと意地の悪い笑みを浮かべるルーキス。

 そこにイロハも加わって今度は三人、思い思いに花火を上げる。

 そんな様子を箱席からワイン片手に微笑みながら見下ろすクラティアとミナス。


 こうして後夜祭は夜遅くまで楽しく騒がしく続いたのだった。

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