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第132話 海洋都市ペルラオフ

 レヴァンタール王国領、南端の海洋都市、ペルラオフはレヴァンタール王国で二番目に大きな都市である。


 元は漁が盛んな小さな村だったのだが、景観の美しさや資源の豊富さから少しずつ発展。

 いつの間にやらレヴァンタール王国の主要都市の一つとなっていた。


 ルーキスたちがそんなペルラオフに到着したのはある日の夕暮れ時だった。


 襲ってきた魔物を討伐し、素材を剥ぎ取ったり、目についた薬草やキノコを採集しながら道なき道を進んできたため、ペルラオフへの到着は海にたどり着いてから更に数日が経過していた。


「なんでここまできて狩と採集頑張っちゃったの?」


「金がいるからだよ金が。海を渡るには船に乗らなきゃいけないし、船に乗るには金がいる。馬車や竜車だって金払うだろ?」


「それにしたって狩りすぎじゃない? 魔石が重いんだけど」


「乗船料の相場を知らないんでね。多めに狩ったんだよ」


 バックパックがパンパンになるまで魔物から剥いだ皮や爪、牙や骨、そして大小さまざまな魔石を入れて歩いていくルーキスたち。

 売る分の肉はフィリスの魔法で凍らせて、別の袋に入れており、ルーキスとフィリスが二人でその袋を持っている。


「イロハ、重たくないか?」


「大丈夫なのです。まだまだ持てますよ?」


「イロハはたくましいな」


 ペルラオフへ延びる街道を歩きながら、ルーキスは初めてイロハと出会った時の事を思い出しながら困ったように苦笑した。

 そんなルーキスを横目に見て、フィリスは別の話題をルーキスに振る。


「ねえルーキス。オーゼロの湖で水の上歩いたじゃない? あれで海渡れないの?」


「馬鹿たれぇ。ロテアのある大陸までどれくらい離れてると思ってんだ。海の上で寝る気か? 無理だぞ? あの魔法、地味なのにバカスカ魔力食っていくんだから。よしんば二人を抱えて渡ろうとしたって、海の真ん中で魔法が維持できなくなって、仇討ちの前に仲良く海竜種の餌だ」


「ルーキスにも出来ないことってあるんだあ」


「当たり前だろ。俺だって普通の人間なんだからな」


「いや。普通ではないでしょ」


「そうか?」


「そうよ」


 会話をしながら歩く夕暮れ時のペルラオフの街。

 通行人に話を聞くと、ギルドまでの竜車があると言うので、聞いた道を進んでいくと、ルーキスたちは大通りの側にて幌のない荷台をハーネス、縄で繋いだ四足歩行の竜【カートゥラ】を見つける。

 

 赤茶けた体色に艶のある鱗、がっしりした太い四肢。

 優しげなクリクリした瞳には御者が持ってきてくれた飼い葉しか映ってないようで、ルーキスたちが近付いても飼い葉を食べる鼻先の短い口は止めなかった。


「すみません。この竜車は旅客運送用ですか?」


「やあいらっしゃい。仰る通り、このカートゥラは旅客運送用だよ。随分と大荷物みたいだね。乗ってくかい?」


「冒険者ギルドまでお願いします」


「分かりました。荷台にどうぞ」


 人当たりの良い笑顔でルーキスが御者の青年と話すと、御者の青年はこれを快諾。

 ルーキスたちが荷物を乗せているあいだに、御者の青年はカートゥラに手綱を付けるためのくつわを咥えさせて竜車の発進準備をする。


「荷物積み込みました。お願いします」


「分かりました。では発進します。揺れますのでご注意を」


 御者の青年の言葉に頷き、ルーキスたちは席に座る。

 それを見て、御者の青年は手綱を振った。

 カートゥラがそれを合図にその太い脚を一本踏み出す。


「お客さんペルラオフは初めてかい?」


「ええ。初めてです。ロテアに行きたくて」


「やっぱりね。一目見て冒険者って分かったから、もしかしてそうなんじゃないかと思ってたよ。とはいえ今日はもう船は出ないから。良かったら宿も案内しようか?」


「良いんですか?」


「もちろんさ。払う物を払ってくれるならね」


「ちょうどギルドには素材やら魔石やらを換金しに行くんで、その辺りは大丈夫です」


「了解です。ではギルドの前で待機しておきますね」


 夕暮れ時のペルラオフの街の白い石畳の上をガラガラと音を立てながら、ルーキスたちを乗せた荷台を引いてカートゥラは馬で言うところのトロット、速足で進んでいく。


 そして、しばらくカートゥラに揺られていると、街の中心部だろうか、もう既に日も落ちてしまって、街は建物からの光と魔石で光る街灯でしか視界が確保出来ない時間だというのに人でごった返している区画に出た。


 その区画の、ある建物の前で御者の青年はカートゥラを止める。


「到着したよお客さん。冒険者ギルド前だ」


「ありがとうございます。じゃあちょっと待っててください。換金が終わり次第直ぐに出てきます」


「まいどどうも」


 御者の青年に乗車料である石貨を手間賃分と合わせて余分に渡し、ルーキスたちは荷物を抱えて竜車を降りるとギルドへ向かう。


「初めて乗ったのになんでまいどなのですか?」


「アレは商売人の挨拶みたいなもんだ。俺も詳しくは知らんし、気にしなくて良いよ」


「はいなのです」


 大昔、異世界からやって来た転生者が広めた言葉に首を傾げるイロハを見て、ルーキスとフィリスは苦笑していた。

 その後、ルーキスたちは自分たちが必要とする分は残して、冒険者ギルドの受付が引くほどに大量の魔石や素材を換金。

 

 大量の石貨が入った袋を持って外に出ると待機してもらっていた竜車に再び乗り込み、その日の宿に案内してもらう事にした。


「竜さん暗くても目は見えるのですか?」


「カートゥラは人間よりも視力が良いからなあ。聞いた話だと、暗視の魔法も使えるらしい」

 

「お客さん詳しいね。そうなんですよ、うちの子もね」


 と、御者の青年とも会話をしながらルーキスたちは夜のペルラオフを進んでいく。


 そして、この日は案内してもらった御者の青年おすすめの宿にて一泊することになるのだった。

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