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第111話 救助のち探索

「入ってろ。しばらくは太陽を拝めないと思え」


 泣きも喚きもしないルーキスたちの様子が面白くない盗賊は、舌打ちしながら地下牢の鉄格子を開けると三人をまとめて一つの牢に入れ、鍵を閉めてどこかへと行ってしまった。


 灯りは牢と牢の間の壁に設置された光る魔石のランプだけで薄暗く、石の壁に囲われた牢の隅に恐らくは用を足すための壺が一つ置かれているのみ。


 床には藁が散りばめられているだけで、居心地は最悪だ。

 風通しも悪く、湿気も酷い。


 こんな場所には長居したくはない。

 というわけで、ルーキスたちは早々に牢を破る事にした。


 もとより潜入調査や暗殺が目的ではない。

 人助けついでに気に食わない盗賊たちは成敗するつもりでやって来たのだ。


「さあ、行動開始といこう」


 言いながら、ルーキスは牢の鉄格子に手を添えた。

 

「魔力を拡散したり、吸収したりする仕掛けは無し。まあこれだけ錆びてちゃ、どの道そういう仕掛けは発動せんか」


「お兄ちゃん、わたしがやります」


「お、じゃあ頼もうかな」


 ルーキスに頼られて嬉しくなったか。

 イロハは笑顔を浮かべると牢屋の鉄格子を両手で掴んだ。

 そして、イロハは身体強化魔法を発動し「よいしょ」と、鉄格子をひん曲げる。


「通れますか?」


 ひん曲げた鉄格子から牢を出るイロハ。

 そのあとから「大丈夫、行けるわ」と、フィリス、ルーキスの順に続く。


 すると、先程降りて来た階段の方から「お前ら! どうやって外に出た!」と、ルーキスたちを連れて来た盗賊とは別の、恐らく見張り担当の盗賊が二人、剣を抜いて迫って来た。


「私は右の奴をやるわ」


「了解、じゃあ俺は左の奴だな」


 鉄格子を壊して出て来たのだ、本来なら盗賊たちは警戒し、仲間を呼ぶべきだった。


 しかし、少女の姿のルーキスと、フィリスの容姿に油断。

 あわよくば遊べるという幻想を抱いたせいで、フィリスに襲い掛かった盗賊は股間にぶら下がるアレを蹴り潰され、ルーキスに襲い掛かった盗賊は喉を手刀で貫かれるハメになった。


「手入れが甘いなあこの剣。まあ一応貰っとくか」


「帰るまでは我慢ね。どこかにまともな武器があれば良いけど」


「そうだな。さて、じゃあまずはこの階層を探索して捕まっている人らを解放するか」


 フィリスに悶絶させられた盗賊の背中から心臓目掛けて剣を刺し、盗賊の死を確認したルーキスは盗賊二人を一応先程まで自分が入れられていた牢屋に放り込み、奥の方へと進み始めた。


 手当たり次第。

 牢に入れられた人々を見つけては強引に牢屋を壊して解放していくルーキスたち。


「さーてさて、ダリルとルルアちゃんの両親はどこかいな〜」


 イロハが牢の鉄格子を曲げ、フィリスが解放した人々に事情を説明して、しばらく待機するように言っている間に白狼種の獣人族をルーキスが探していると。


「き、君! ダリルとルルアを知ってるのか⁉︎」


 と、牢の中から声を掛けられた。

 体格の良い筋肉質な獣人族の男性と、疲弊しきっているのか、床に座り込み、鉄格子を掴む獣人族の女性がルーキスを見つめている。


「ダリルとルルアちゃんのご両親ですね? 二人の友人でルーキスと言います。二人の願いを聞き、助けに参りました」


 弱っているダリルとルルアの母親に視線を合わせるために、片膝をついて微笑むルーキス。

 その様子に、二人の表情が明るくなった。

 しかし、その明るい笑顔は再び曇る。


「助けに来てくれたのは嬉しいが、ここには盗賊たちが大勢いる。君たちも危険だ」


「まあ見てくれがこんななんで説得力に欠けますが、私たちは冒険者です。あえて言いますが安心してください。直ぐに牢を壊して解放はします。ですが、逃げるのはしばらくお待ち下さい。盗賊たちを討伐し、安全を確保したあとまた降りてきますので」


「あ、ああ。分かった。ダリルとルルアの友達の言っている事だ。信じるよ」


「ありがとうございます」


 このあと、ルーキスはイロハを呼んで牢を破壊。

 奥に進んで他の捕まったいる人たちの牢も同じように破壊すると、同じような説明をしていった。


「今の人らで最後か」


「これ以上先はいないみたいね」


「いないのか。連れて行かれたのか。まあなんにせよ要救助対象であるダリルたちの両親が無事だったのは幸いだったな」


 地下牢の探索を終えたルーキスたちは、階段の方へと向かいながら捕まっている人たちに再度「しばらく待っていてくださいね」と念を押すと、上階目指して階段を上り始める。


「さて、まずは雑魚から仕留めていくか」


「三人でまとまって行くの?」


「そうしたいのは山々だが、俺は盗賊たちの親玉を探すから、二人は雑魚の排除を頼むよ」


「あら。私たちはお邪魔ってこと?」


「二人を信頼してるから任せるのさ。みんなを無事に逃すためには失敗出来ない大仕事だぞ?」


「ものは言いようね。でも任せて、ルーキスの期待には応えるわ」


「わたしも頑張ります」


「相手は人にあらず。容赦は無用だ」


 そう言うとルーキスは二人を手で止まるように制止し、息を潜めて階段を上りきった先で階段を背にしている盗賊の首に腕を回すと一息にその汚い首を折り砕いた。


 悲鳴をあげる事もなく、糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる盗賊に冷めた視線を向けて、ルーキスは石造りの部屋を見渡す。


 仲間を殺され、部屋隅のテーブルで酒を飲んでいた別の盗賊が驚愕し、剣を抜こうとするが、その盗賊は駆けていたイロハの身体強化増し増しの拳で胸骨もろとも心臓を破壊されて地に伏した。


 イロハが仕留めた盗賊が倒れる音を不審に思い、部屋の外から扉を開けて、一人、獣人族の盗賊が「おいどうした」と部屋に入ってくるが、その盗賊は扉の影に隠れたフィリスが喉を突いて仕留めた。


「割と隠密もイケるな」


「隙だらけだもの」


「魔物達のほうが警戒心が強いのです」


「だな。さあて、ここからは別行動だ。無理はするなよ? 危険だと判断したらすぐに逃げるように、いいな?」


「分かった。ルーキスも気を付けてね」

 

「ああ。分かってる」


 言いながら、ルーキスはフィリスの手を取るとその手の甲に口付けをしてニコッと笑う。

 その行動にフィリスは顔を赤くするが、ルーキスの姿が少女のままなので心境は複雑だった。


「なんでその姿のままなのよ」


「ああ、そうか。変身してたんだった。自分では分かんねえんだよコレ」


 言いながら、ルーキスは魔法を解除。

 その姿を元に戻していつも着ている服の上から着用していたロングスカートと女性用の上着を脱ぐとソレをテーブルの上に置いた。


「ん」


「なんだ?」


「もう一回さっきのして」


「へいへい」


 フィリスに言われ、もう一度ルーキスは手の甲に口付けをする。

 これによりフィリスはやる気を全開にするのだった。

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