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前回のあらすじ
子供が泣いていたら、助けてあげるのが人情
「はぁ…安請け合いするんじゃなかったかな…」
学校への道中ずっとため息が止まらない。
幼女からハーゲンを取り上げ、もっと詳しく聞こうとしたが時間切れ。
仕方がないので、続きは帰ってからと言っておいた。…ナチュラルにあの子を家に置いているなぁ。
けどそれも仕方がない。帰ってと言っても、家がないの一点張りだ。
もういっそ、リスク覚悟で警察へと駆け込もうかな。
いやーでもこのご時世で、
『幼女保護しました。え?どこから拾ってきたって?窓から来たって言ってますけど…え?昨日は家に泊めましたよ?同室で寝ましたけどなにか?』
なんて言おうものなら帰ってくる答えはきっと、
『Guilty、死刑!』
「ってなるよね…はぁ…ほんとどうしよ。」
「どうしたノゾラ。朝からため息ばかりだが。」
そう声をかけてくるのは、一緒に登校している男子だ。
名前は大我 陸 (おおが りく)。僕の幼馴染兼、数少ない僕の友人の一人だ。
彼は僕をノゾラと呼ぶが、これは幼少の頃担任が僕の名前を間違えたせいだ。
けど、彼は僕をそう呼ぶ。なんでも特別感があるからだそうだ。
だから僕も、彼のことはあだ名で呼ぶことにしている。
「まあね。ちょっと、変なことに巻き込まれてさ。」
「手を貸そうか?」
「ありがとう。でも大丈夫だよ、そのうち何とかなると思うから。」
「そうか。何かあったら言ってくれ、お前の頼みならどんなことでも力になるから。」
そういって静かに微笑んでいる。あかんてその笑顔は!周り見てみ!
「かっこいい…」「どのクラスだろ…」「先輩かな…」「つわりが来ちゃった…」
最後のやべーやつは置いておいて、周りにいる女子の視線が彼に集中している。
そのどれもが、色っぽい視線だ。あっこれ、進〇ゼミでやったところだ!
そう…この男びっくりするぐらいモテる。昔からそうだったが、今はもっと破壊力を増している。
高1にして、身長は180cm。筋肉質のガタイがいい体系。清潔感のある短い黒髪。顔も整ってと完璧すぎる。
そんなやつが、優しく微笑んでいるのだ。男の僕でもかっこいいと思ってしまう。
一方僕はというと。身長…約160、体系…ひょろっとしている、顔…童顔で子供っぽい。たまに女子と間違えられる。
…どう頑張っても勝てる要素がない。今だって、誰一人として僕に視線が向いていないのだから。
なんでや!チートやチート!せめて身長だけでも僕によこせよデパート!
「なんだか朝から騒がしいな。」
そして厄介なのは、本人はそのことにまったく興味を示さない。
彼女の一人や二人いてもおかしくないのに、そういった話を聞いたことがない。(いやふたりはだめだろ。)
そのせいで、隣にいる僕はなおさら負けた気分になる。くやしいのぉ…
「っく!…僕も成長すればきっとモテて…!」
「?お前は今のままでもかっこいいだろ?」
「ほれてまうやろーーー!!!」
イケメンの天然とか…まじなんなん…
さて…僕は今試されている。
教室へと続く扉。その前に立ち、これから課せられる試練に備えて、気持ちを整える。
あっちなみにリクオは、違うクラスなので途中で別れた。
っとそんなことよりも、目の前の試練に立ち向かわないと!いざ!
扉を開き、そして!
「おっ!…はょぅ…」
…どうやら僕には厳しすぎたようだ。声を出したとき、近くにいた人の視線に耐え切れなかったっ!
試練…それは、クラスのみんなに挨拶だ。
この試練を乗り越えられればきっと!昨日の失敗なんて帳消しになって、友達ができる!…予定だった。
だが惜しかった!最初の一文字は出ていた!残りの3文字を言い終わる前に、僕の勇気が尽きてしまったのだっ!
僕は戦場帰りのようにふらふらと歩き、静かに自分の席に座りこう考える。
(あ、明日の僕はきっと上手くやってくれる…だって僕は四天王(?)の中でも最弱だし…)
アホことを考えていると、予冷が鳴り皆が自分の席へと戻っていく。
ちなみに僕の席は、窓側の一番後ろだ。自由に窓を開け閉めできるベェストポォジショォンッ。
この時期だと、日当たりもよくてなかなか当たりの席だと思う。
問題があるとすれば…周りが全員女子なことだ。
いや嬉しいよ?僕も男だし、女の子が周りにいるのはうれしいさ。けどさぁ…それはもっと僕が成長してからだろ?!
自己紹介が5秒で終わるような奴が、どうやって初対面の女子と楽しく話せばいいとかわかんないよ!
幸い前の席の人は昨日今日と休んでいる。だから、考えるべきは2人だけ。…せめて挨拶ぐらいはできるようにならないと!そのためにも、情報収集だ!
隣の子。名前はたしか…望月さん?長い黒髪と眼鏡が特徴。先生の話を聞く姿勢がきれいで、すごく真面目そうな印象だ。ただちょっと目つきが怖い。
イメージとしては、ちょっときつそうな委員長って感じかな?でもこの子も僕と同じで、周りとしゃべっていなかったな。ボッチ仲間かな?親近感がわく。
右前の子。…やばい、名前なんだっけ。この子は望月さんよりも長い、赤っぽい色の髪。校風がゆるいおかげで割と髪を染めている人はいるらしい。まあ、ピアスはしてないし不良ではないと思いたい。
それとこの子には、ものすごい特徴がある。それは…めっちゃ小っちゃい。
130ぐらい?最初見たときは小学生かと思ったよ。
さて、情報は集まったな。サスガダァ……でこの情報でどうやって仲良く何の?
そもそも今のって、ただ見た情報を並べただけじゃん。どこが完璧なんだよ。
あ~せめて何かきっかけでもあれば…ん?
なんか右手があったかい?
なんだろうと思い右手を見る。…腕輪光っとるやん。
え、なにこれ?てか、こんな人が多いところで光ってたら絶対怒られる!
仕方ない、ひとまずトイレにでも行って―――
「よくぞ見つけたな!」
大きな子供の声がする。なんだろう、すごく嫌な予感がするなぁ…
おそるおそる声の方を見る。扉の向こう、廊下に見えるのは小さなシルエット。
そいつは今朝、家に置いてきたはずの幼女だった。
クラス中の視線が幼女に集まっている。
けれど、僕だけは窓の外を見ていた。そして、こう考えていたんだ。
あ~お外見るの楽しい~…
だってしょうがないじゃん?いろいろキャパオーバーだよ。
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