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前回までのあらすじ。
星を見てたら、幼女襲来。
息を呑む。そこにいた幼女は普通じゃなかった。
金髪碧眼、まるで西洋人形のように整った顔立ち。
120cmほどの体と同じ長さの髪が、ゆらゆらと動くたびに煌めき光っているように見える。
ゲームや、漫画に出てくる天使のような出たち。
そのあまりの美しさに、目が離せない。彼女のいる場所だけ、明らかに空気が違っている。
…おかしい、心臓がうるさい。それに何だか顔が熱い。
先に言っておくが、僕はロリコンじゃない。…そうじゃないはずなのに…
心臓の鼓動が高鳴る。ただ相対いているだけなのに、息が詰まりクラクラしてくる。
彼女の青い瞳を見ると、吸い込まれそうになる。
そうか、僕はようやく理解した。これは…恋だ。
15歳の春。ここから僕の青春が始まる。
年齢差はあるが大丈夫、絶対に何とかなる。そんな漠然とした自信が胸の内から込み上げてくる。
きっとこれは運命。神様がくれたチャンスなんだ。
目の前の幼女も、僕を潤んだ瞳で見ている。…なんて可愛いだ。
そっと彼女に手を差し出す。その手に重ねるように、小さな手が置かれる。
僕はそっと手の甲にキスをする。物語に出てくるような騎士のように。
顔を上げ飛び込んでくるのは、恥じらった表情で僕を見てくるハニー。
「…僕が必ず君を幸せにするよ。だから…結婚しよう。」
「……はい…」
ここから始まるラブストーリー。
この先どんな困難が待っているか分からないけれど、僕らな乗り越えていける。
見つめ合う僕らの距離が少しずつ近づいていき、そして……
なんてことはなく。
「おい!わしは客じゃぞ!茶くらい出さんか!」
「…はいはい。」
「はいは1回じゃ!まったく!最近の若いのは…」
謎の幼女が我が物顔で僕に命令してくるのを、仕方なしに受け取る。
…いやまあ、可愛い子だなぁとは思ったよ?トキメキもしたよ、悪い?
でもよく考えてみてほしい。
夜11時。突然部屋の中に現れて、自分の部屋のようにくつろぎ出したと思ったら茶を出せだよ?
たとえどれだけ容姿が良くても、そんな暴君に誰が惚れると思う?
…言っておくけど、僕はMでもない。
「はいこれ、ココア。」
「遅いのじゃ!全く、もっとキビキビ動けんのかの…」
イラッ!…落ち着け相手は幼女だ。僕の黄金の右を放つわけにはいかない。
内心の苛立ちを隠しつつ、彼女の前にココアを置く。
「はーいどうぞ!」
親指をつっこみながら。
「何をするんじゃ?!」
「何ってココアだけど?大丈夫ですよーちゃんと冷ましてありますからー」
「そう言うことではない!えぇい、もう良いわ!全く…」
ブウクサと文句を言いつつも、差し出されたココアを飲んでいる。
…そういえば、
「人間の指って汚いらしいね。特に爪の間とか、人によっては便器より汚いとか」
「ぶふぅーー!!!」
「うわきったな!?何してんの?!」
「お主よくいえたな?!さっき自分が何したか言うてみ?!」
「え?あっ、ココア熱かった?」
「違うわい!ちょどいい温度じゃったわ!」
「それならよかった、真心はこめておいたからね。…いや〜ポットに残ってたお湯、いつのだっけ…」
「…何だか、お腹が痛くなってきた気がするのじゃ…」
「大丈夫じゃね?」
「軽!」
そんなやりとりをしているうちに、警戒心は無くなっていった。
まあ突然現れたとはいえ、子供相手に警戒しても仕方ない。
それより、この子は何者のなのだろう。他の家の子が間違えて入ってきた…いや、こんな時間に子供を外に出さないだろう。
泥棒…はなさそうだし、本当に何なのだろう。追加で出した駄菓子を頬張っている幼女に聞いてみた。
「で、君は何者なの?どうやって僕の部屋に?」
「ん?ふぁひがなひものひゃひょ?ふぉへは」
「いや飲み込んでからしゃべりなよ。リスみたいになってるよ?」
「…ふむ、口にしたことのない美味なものだったのでな。それで、わしが何者かじゃな。」
「うん。それに、扉には鍵がかかってたし、どこから入ってきたのかな。」
「窓からじゃ。」
あっけらかんにそう言い切った。…危ない、スマホで110を入力していた。
というか、窓から入っていくるとかお前は忍者か。
「……じゃあ、お隣さんの子?」
「違うぞ?わしは星の者。名を【ステラ】そなたらが流れ星と呼んでいる者じゃ。…なぜわしの額に手を当てておるのじゃ…」
「…熱はなさそう。そうなると、早めの厨二病罹患者か。大丈夫、みんな通る道だから。僕は馬鹿にしたりしないよ。」
「わしをなんじゃと思っとるんじゃ!星の者じゃぞ!もっと敬うべきじゃろ!」
「はいはい、すごいねー。星のカ○ビィって呼んであげるから、帰ってくれるかな?」
「馬鹿にしとるじゃろ?!」
「何を言ってるんだ!○ービィはすごいんだぞ!任○堂の中でも屈指の人気キャラで、友達もスマ○ラでよく使うほどなんだぞ!」
「知るか!」
「あっエアライドの新作待ってます。」
「誰に向かって喋っておるんじゃ!?ええい、そなたの手首を見てみ!」
「手首?」
言われてみてみると、何かが巻き付いていた。
ガラス?でできたブレスレットのようだ。けれど、重さを全く感じない。
天井の明かりにかざしてみると、光が乱反射して虹色の光を放っている。ガラスというよりも、宝石の方がしっくりくる。
僕は、
「あの…セールスなら…」
「違うわ!…おまえさんには、星の欠片集めをしてもらうんのじゃ!」
「…なん…だと…?」
「知っておるのか?」
「いや全然?」
「うがああああぁぁ!もうこいつ嫌なのじゃーー!!」
まずい!幼女が壊れた!オチツケー!
「はぁ…はぁ…もう嫌じゃ…今日は寝る!おやすみ!」
そう言ってベッドで寝息をたて始めた。…あの、それ僕ベッド…
僕はため息をつきつつ、コップを流しへと持っていく。
洗い物をしながらさっきのやりとりを思い出すと、自然と笑みが溢れる。
…こんなに楽しかったのはいつぶりだろう。
不機嫌そうな顔で、いびきをかいている幼女の顔を見つつ部屋の明かりを消す。
押入れの奥にしまっていた替えの布団は、少し埃ぽかった。でも、それ以上に胸の温かさが心地よかった。
星を見ていた時に感じていた不安は、いつの間にか消え去っていた。
明日の入学式、ちょっと頑張ってみようかな。
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