26
前回のあらすじ
星の欠片はやばいものだった
「よーし。それじゃあ今のうちに、今日の確認をするぞーちゃんと聞け―。」
担任の先生が、バスに備え付けられたマイクを手に取りそう言う。
ついに校外学習だ。周りの人達も楽しそうにはしゃいでいる。
かくいう僕も結構楽しみにしていた。こういう施設に一人で来るのは、結構勇気がいるから行事で来れたのはうれしい。
「ふふ…星乃君、嬉しそうですね。」
「え?あっ顔に出てた?あはは…」
隣に座る望月さんに指摘され少し恥ずかしい。でも、楽しみなのは変わらない。やっふー!
…でも、もうひとつの目的も忘れてない。
獅子堂さんの告白。それが今日一番の目的だ。
当の本人、通路を挟んで座っている獅子堂さんといえば。
「……」
俯いて、険しい表情で床を見つめている。
この後の事を考えて不安なのだろう。僕も、協力した身として同じく不安だ。
上手く行ってほしい。そう思っているけれど…いや、考えても仕方ない。
僕がする事は、告白の場を整えて少しでも成功率を上げる事だけだ。その為の準備だってしてきた。
「…星乃君?どうかしましたか?」
「あっえと…」
「?…!彩夏さん、大丈夫ですか?」
僕の視線の先に気づいたのか、望月さんが声をかけた。
…けど反応はない。よく見ると、指先が震えている。きっと、今日の事を考えて不安なのだろう。
それに昨日はあまり寝ていないのかもしれない。目元に隈ができている。
その後、望月さんが体をゆすったところでこちらに気づいた。
本人は大丈夫だと言ってはいるが、はたから見たらそうは思えない。
…本当に、このまま告白させていいのだろうか。
やっぱりもっと時間をおいて…でもそうすると、星の欠片の影響が出て…
「星乃。私は大丈夫だから。」
「え?」
「あなたの事だから、私の心配をしているのでしょう?大丈夫よ、上手くやるわ。…そう、大丈夫よ…」
「…うん。」
それが強がりだと分かっている。
でも止めたとして、今後どうなるか分からない。
だから、今はその言葉を信じよう。そして、僕にできる事をしよう。
午前中は職員さんに案内されながら、施設を回る。
色々な事を話してくれているのだけれど、頭に入ってこない。
それは2人も同じで、メモを取るペンが全く動いてない。
課題もあるので、何書かないといけないと分かっているのだけれど、この後の事が気になってそれどころではないのだろう。僕もそればかりが気になって仕方ない。
時間は流れ、お昼時に。獅子堂さんはまだ意気消沈している。
この調子だと告白することすらできないかもしれない。
けど僕だって何も考えていないわけじゃない。ちゃんと準備はしてきている。
告白のタイミングは事前に獅子堂さんと話しあった。
チャンスは3回。どれも生徒が自由に行動できる時間。
昼食時、自由行動、そして解散後だ。
そして1回目のチャンス、昼食。
リクオには前もって一緒に食べる約束を取り付けておいた。
場所に関しても下調べをしておいたから、少し外れた人通りの少ない場所を確保できた。おかげで周りに邪魔されず食事ができ、告白もできるいい場所を取れた。
後はタイミングを見計らって、二人っきりにすればオッケーだ。
とにかく今は彼女に自信を持たせてあげないと。
こういう時は、気の利いた言葉を言って励ますものだ。
…うん僕の苦手な分野だねどうしよう。
「大丈夫ですよ彩夏さん。自信を持ってください。今日までいろいろと頑張ってきたじゃないですか。絶対に上手く行きますから。」
「は、春奈…そ、そうよね。上手く行くわよね。ありがとう春奈。」
「いいんですよ。私達と、友達じゃないですか。」
「そ、そうね。ふふ…」
「……」
あれ?僕いらなくない?完全に望月さんに持っていかれたんだけど。
というか、この二人本当に仲良くなったなぁ…最初は、お互い視線すら合わなかったのに。
でも、望月さんのおかげで獅子堂さんも元気になったみたいだ。これなら可能性があるかも。
ほほえましく話す二人を眺めながら、シートを広げ準備する。
その後、少し経ってからリクオが来た。
「悪い、待たせたな。」
「いや大丈夫。シート引いたから座って。」
「ああ。2人も待たせて悪かったな。少し、女子に捕まっていて。」
「…そ、そう…なのね…」
「断っているのも関わらず何度も頼んできてな…まったく、苦労したぞ。」
おっと?獅子堂さんの表情が曇ってきたぞ?
…あっもしかして、自分以外にもリクオを狙っている子がいる事が気がかりなのかな?
というかリクオ。待っててくれた女子に、他の子の話をするのはどうなの?
「で、でも断ってまで僕らの方に来てくれたんでしょ?ならよかったよ!」
「それは当然だ。先に約束したのはノゾラだし。まあなくても、お前と一緒に食べただろうがな。」
「うんそうだね。僕 ら と!一緒に食べるよね?」
「あ、ああ。そうだな。」
こいつぅ!もっと僕以外に興味を持て!
なんで一緒にいる二人には話を振らずに、僕だけに話しかけてくるんだよ!察しろ!
や、やばい。場の雰囲気が一気にお通夜みたいになってる。
作戦だと、和やかに食事する予定だったのに、どうしてこうなった…
考えろ…この空気を変える方法を…チェス盤をひっくり返す方法を!
…閃いた!
「ほらみんな!ご飯食べよう!たくさん作ってきたから、好きなの取って!」
これだ!
おいしいものを食べて、テンション爆上げ作戦!
今日はいつもより多めに弁当を作ってきている。なんせ、
『ノゾラの料理もっと食いたいな。そうだ、今度の校外学習の時は多めに作ってくれないか?食費は出すから。』
『え?うんいいけど。』
と、前もってリクオに頼まれていたからな!かなり気合を入れて作ってきたぜ。
よし。これで場の雰囲気も少しはなごんで…ん?
「獅子堂さん?どうかした?」
「あっえ…ううん、なんでもないわ…気にしないで。」
そう言いながらも、後ろ手に何かを隠している。
なんだろう。気になって料理を取る振りをして確認する。
小さな包みが見える。あれは何だろう?
ナプキンで包まれたもので、大きさは…そう、丁度お弁当箱くらい…の……
「あっ…」
そこで過去の記憶がよみがえる。
そう。あれは獅子堂さんが僕の家に来た晩。彼女との電話での会話だ。
『どうにかして意識をさせる方法か…うーん…』
『彼の好みとか分からないの?』
『リクオは体を動かすのが好きだけど、それで意識させる方法ってのはちょっと…』
『そうね…あっ!ねえ、料理は?彼、いつもあなたのお弁当をつまんでいるでしょう?』
『あー確かに。けど料理ってハードル高くない?いつ振舞うの?』
『うっ…学校で渡すのはかなり勇気がいるわね…そうね、丁度いい機会が』
『小僧!いつまで電話しとるんじゃ!はよ相手せい!』
『もうちょっと待ってって。』
『…という感じなのだけれど、どうかしら?』
『え?あっごめんもう一回』
『ごめんなさい!親が来たから切るわね!それじゃ。』
『あっ…まあ、明日学校で聞けばいっか。』
…その後、ステラとスマ〇ラしてたせいで、もう一回聞くってことを完全に忘れてた…
やべえよ…あれ絶対お弁当だよ。…今日のために手作りしてきてるやつだよ…
というか、望月さんも僕を睨んでいる気がする。そうだよね。あれだけ仲いんだもん、知ってるよね。
ど、どうしよう。もういっそ、出してもらうか?
…いやでも、この状況で?
「うん美味い。さすがはノゾラだな。」
「そ、そうかな…でも、僕よりももっと上手な人はいるよ?ほ、ほらやっぱり女の子の方が…」
「そんな奴いるわけないだろ。」
「はあ!?いるっつってんだろ!?もっと周り見ろよ!!?」
「お、おう…」
お前どんだけ僕のこと好きなんだよ!
無理だ!この空気で獅子堂さんに弁当を出させるのは!
ちらりと獅子堂さんを見る。…な、泣いているように見えるのですが…
それとなく望月さんを見る。…え、笑顔だけど、目が笑ってないような…
…ええい!こうなったら!
「も、望月さん!飲み物ないよね!?何か買いに行かない?!うん行こうか!」
「えあっちょっと星乃君!?」
僕は望月さんの手を取り、強引にその場を離れた。
ふ、二人っきりにするとこまでは何とか用意したからぁ!獅子堂さん、後は頑張って…!
…まあ当然、そんな状態で告白なんてできるわけもなく、戻った時には二人で静かに僕の弁当をつまんでいた。
本当に申し訳ありません、獅子堂さんには後で土下座で謝ろう。
え?望月さんにはしないのかって?そんなの…
既にしたに決まってるじゃん。連れ出して目が周りの目が無くなった瞬間地面にこすりつけたよ。
だ、大丈夫。ま、まだチャンスは残ってる。
今度こそ失敗しないように、獅子堂さんをサポートしないと。
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