25
前回のあらすじ
ラッキースケベ
「……」
「……」
静かだ。
…どうしてこうなった?
テーブルを挟んで座る僕と獅子堂さん。…ニヤニヤと、それを見て笑る幼女。
手元にあるココアが湯気を上げている。
ここはどこかって?ファミレス?いやいやー違うんですよー。
なんと…家なんですよ。僕の。
「………」
「………」
なんでこうなった!?
落ち着け…こうなった経緯を思い返すんだ。
僕は平凡な高校生、星乃空!
同級生との学校の帰り道。突然、雨が降ってきた…
一緒に帰っていた少女。獅子堂さんに、自分の持っていた傘を貸そうとした時。
僕は彼女のシャツが透けていることに気が付いてしまった!
下着に夢中になっていた僕は、彼女が視線を落とという事に気が付かなかった!
その事に気づいた彼女にビンタを喰らってしまい…思わず僕は!
「僕の家近いし、タオルとかあるから寄ってかない?」
そう言ってた!アホなのか!?見た目も中身も大人…かどうかは微妙だけど!
…はい、真性のアホですよ僕は。どう考えたら、びしょ濡れの女の子を家に誘うんだ。いやまあ家に入れるくらいはいいのか?困ってたし、親切にするのは大事だ。うん。
でもまだ知り合ったばかりで、それほど仲よくない女子を家に連れてくるとか!ほかの人からしたら、控えめに言って勇者だよ!
…いやでも来てくれたってことは、獅子堂さんは僕の事を信用してくれてるのかも。それは純粋にうれしい。
「えへへ…」
「なに笑ってるのよ…きもいわね。」
あっはい。気のせいでした。
濡れた髪を拭きながらでもいつも通りだ。
「助かったわ。私の家、結構距離があるからどうしようかと思って。」
「そうなんだ。それなら傘持って行って。学校で返してくれればいいし。」
「そうさせてもらうわ。タオルも、洗って返すから。」
そう言って、タオルを鞄に仕舞う。
ちなみに彼女は、濡れたシャツからジャージに着替えている。あっ僕のじゃないよ?
流石の彼女も、僕の服なんて着たくないだろうし。ジャージ持ってなかったら…どうなってただろ。僕が女子の服を買いに行かされれてたのか?それどんな拷問?
「今日、体育があってよかったね。」
「そうね。」
「………」
「………」
…どうしよう、会話が続かない。
あれ~獅子堂さんって、普段はもっと会話してくれてたはず…なのになぜだ。
後そこの幼女!なにわろてんねん!
「ねえ。」
「はいなんでしょう!」
「…告白。上手く行くと思う?」
彼女は少しうつむきながら、そう僕に言った。
…正直に言うべきだろうか。それとも、はぐらかした方が…
「はぁ…あなた顔に全部出てるわよ。」
「うへぇ?!」
「それにそこで黙っちゃたら、あなたがどう思ってるかなんて丸分かり。」
「うっ…ごめん。」
しまった…すぐに否定しておくべきだったか。
でも、僕がどう思っているかは、彼女の想像通りだ。
正直言って、上手く行かないと思う。
確かに、ここ何日かで二人はそれなりに会話できるようになってきている。
それにリクオも、獅子堂さんの事を嫌っている様子はない。
だけどそれだけだ。
そこに恋愛の感情はない。あっても友情だろう。
そんな状況で、どれだけいい告白をしても結果は分かりきっている。
「はは…私、結構頑張ったんだけどなぁ…」
「で、でもまだ上手く行かないと決まったわけじゃ!」
「幼馴染のあなたならわかるでしょ?」
「っ!そ、それは…」
彼女の言う通り、長い付き合いの僕にはわかる。
リクオは試しに付き合うみたいなことはしないだろうし、失敗して終わるだろう。
「…なら今回は見送って、もっと仲良くなってから!」
「小僧!?」
僕らの会話を聞いていたステラが驚いている。
それもそのはずだ。獅子堂さんの告白を遅らせるという事は、星のカケラが回収できるのも遅れるという事になる。ステラからしたらそれは避けたいはず。
…けどごめん。僕は…友達が困っているのなら助けてあげたい。
だから今回は…
「そうね。それが一番だって自分でも分かってる。」
「なら!」
「でもダメなの!そうしようって思っても、気持ちが抑えられないの!」
泣きそうな顔を僕に向けながらそう叫んだ。
…その気持ちは僕も経験がある。
熱を持った感情が胸内で渦巻いて、理性を痺らせる。
でもそれが嫌じゃなくて、ふわふわと曖昧な幸せが体を満たしてくれる。
その幸せをもっと知りたくて、感じたくて、触れ合いたくて…そんな毒にも似た感情。
そう、まさに毒だ。
知ってしまえば簡単には仕舞えない。心の奥底に居座り続ける。
…だけど、いざ求めた時、相手も同じだとは限らない。
それを知った時、幸福の熱は…絶望の冷たさへと変わる。
…それを知っているからこそ、獅子堂さんに同じ思いをしてほしくない。
「もし告白すれば…後悔するよ?」
「っ!あなたには分からないでしょ!この気持ちが!」
「分かるよ。だって僕は…失敗したことがあるから。」
「!」
「だからわかる。ここで焦ってもいい事なんてない。今はなんとか気持ちを抑えて…」
「それが出来たらっ…でも出来ない!心の中の何かが、止まってくれないの!だか…ら…あれ…」
「獅子堂さん!」
彼女の体が傾き、床に倒れこんだ。
すぐに駆け寄って声をかけるが反応がない。それに呼吸も粗く汗が止まらない。
スマホを操作して救急車を呼ばないと!その時、
「案ずるな。わしに任せておけ。」
「ステラ?」
ステラが獅子堂さんの体に触れる。
最初は変化がなく、やっぱり救急を!そう思っていたが、しばらくすると獅子堂さんの体調が目に見えてよくなった。
「ふぅ…これでよし。」
「え、今のなに?え…というかステラ今のなに!?」
「うるさいの~耳元で騒ぐ出ない!」
「いやだって…え?ステラって病気直せるの?」
「いや?」
「でも今…」
「わしがしたのは、星のカケラからエネルギーを吸っただけじゃ。かなりため込んでおったようじゃな。」
???何言ってんだこの幼女。
え、なんかの漫画の影響でも受けた?人〇人間19号かよ。
「…お主にはちゃんと話してなかったのう。星のカケラについて。」
「え?あーそういえば。」
突然神妙そうな顔をして、話し出すステラ。
そう言えばどういうものなのか聞いたことがない。初対面の時になんか話そうとしてたっけ。
あの時は冗談かと思って、しっかり聞かなかったし、その後も聞くことはなかった。
「星のカケラには、宿った人間の叶えたい思いを後押しする力がるのじゃ。」
「…それはどういう意味で?運がよくなるとかそういう事?」
「違うわい。宿主の感情を増幅して、成就するように後押しするんじゃ。」
「…?」
「ああーもう!つまりじゃな、テストでいい点を取りたい奴なら勉強するように行動を促す。人間関係で上手く行きたいなら、自分から声をかけるように促すのじゃ!」
「…つまり。その人の叶えたい思いを強くして、積極性を上げるってこと?」
「そうじゃ。この小娘の場合、恋仲になれるよう、星のカケラが感情を強くしておるのじゃろう。」
「はあ!?そんな危険物だったの!?星のカケラって?!」
「…だからお主には、さっさと集めてほしかったんじゃ。」
そりゃそうなるわ!
ん、ちょっと待てよ。今の話が本当だとしたら…
「…ああー!!だからか!獅子堂さんがすぐに告白することにこだわっているのは!」
「そういうことじゃな。早いとこ何とかしてやらんと、星のカケラが成長して悪化するぞ?」
「ええ!?今ですらやばいのに、さらに悪化とか冗談じゃないよ!ど、どうしたら…」
「告白させるしかないじゃろうな。運が良ければ、それでカケラが出るはずじゃ。」
「で、でもそれは上手く行った時でしょ?」
「いや?上手く行かなくても、出る可能性はあるぞ?」
「え?…え、マジで!?」
マジかよ!それをもっと早く言ってよ!
それだったらもっと気楽に…いや、知ってても多分ちゃんとしたかな。
「で?どうしたら出るの?」
「星のカケラが増幅させとる感情を満足させればよいのじゃ。」
「…具体的にどうすれば?」
「はぁ…フラれた後に、その事実に向き合って折り合いをつければでるじゃろ…多分。」
「最後曖昧なのが気になるんだけど…!」
「知らん!それが嫌なら、上手く行くようにお主が頑張ればいいじゃろ!」
ぐうの音も出ない正論。ま、まあ、ある意味保険ができたとでも思っておこう。
とにかく。僕は少しでも告白が上手く行くように、協力すればいいってことだ。
最悪、獅子堂さんがフラれたら、僕と望月さんで慰めてあげればいい。
その後もし、正気になった獅子堂さんがまた告白したいとなっても、今回みたいに急ぐことはないだろう。その時はまた協力してあげよう。
「あっ出なかった場合、おそらくすとーかーとかになる可能性もあるからしっかりのー。」
「はぁ!?」
責任重大なんだけど!
とんでもないものを押し付けてくれたなこの幼女!
倒れた獅子堂さんをベッドに運んでしばらくたった頃。彼女の目が覚めた。
流石に、僕が使っている布団に寝かせるのはちょっと…ってあのベッドも元は僕のじゃん。最近はステラが占領していて、僕は使ってないからか自分の物って気がしない。
「うぅ…あれ…私…」
「あっ目が覚めた?」
「星乃君?…私、どうしてあなたのベッドで寝てるのかしら?」
ジト目で見てくる彼女に僕は、突然倒れたと説明。
流石に星のカケラの事は言えないから、体調不良と言事にしておいた。実際体調悪くなってたし。
「…そうだったの。ごめんなさい、迷惑かけて。」
「気にしないで。きっと色々あって疲れてたんだよ。そうだ、体調はどう?」
「んー!それがびっくりするぐらいいいわ。頭もすっきりしているし。」
「それはよかった。とりあえず、今日はもう帰って休んだ方がいいよ。また悪くなるといけないし。」
「そうね。雨も上がったみたいだし、そうさせてもらうわ。」
そう言って立ち上がる彼女。
うん。足取りも問題ないし、大丈夫そうだ。
僕は玄関まで彼女を送る。駅まで送ろうかと言ったが必要ないと言われた。
まあ、獅子堂さんなら危ない目に遭っても、なんとかしそうだ。
「そうだ星乃君。家に着いたらでんわ…し…て……」
笑顔で振り返り、何かを言いかけた彼女が固まった。
心なしか、青い顔をしているような…もしかしてまた体調が悪く
「い、今!テレビが勝手に!」
「え?っ!」
振り返るとそこには、コントローラーを持とうとしている幼女の姿。
しまった!獅子堂さんには、そこのクソガキの姿が見えてない!
つまり僕以外の人からしたら、ひとりでにテレビが付き、空中にコントローラーが浮かんでいるように見えてしまう!
「いや…えっと…そ、そう!ちょっとテレビの調子が悪くて!」
「こ、コントローラーが!う、浮かんで!」
「て、手品!手品だよ!最近友達に教わってね!せっかくだから驚かせようと思って!ははは…」
「え?え?そ、そう…」
ふぅ…ここは何とかごまかせたな。
「ひっ…!ほ、星乃君…!あれ!」
「え?」
今度は何だ!
彼女の視線のを追う。…あの幼女ゲーム始めやがった。
「あ、あれ……誰かが操作して…!」
「え?あ!い、いやちが」
「手品じゃないわよね?!そうよね?!えお、お化け?!」
「…そうだよ!?ここ出るんだ!おかげで家賃が格安なんだ!ははは!」
ごまかすのをあきらめた僕はそう言い放った。
…いやこの状況でごまかすの無理だろ。まあ実施ステラはお化けみたいなものだしいっか。
ん?
「お、おば…あ、あばばばばば……!」
「え!ちょっと獅子堂さん!?」
「…きゅう…」
ええーーーーーーー!!
壊れた機械のようになったと思ったら、突然倒れた!
まさかまた体調が悪化して…いやこれ違うな。
…そうか、獅子堂さんお化けが苦手なのか。
「小僧ー腹減ったぞー。」
…後、あの幼女は夕飯のオカズなしだな。
次の日からも、彼女の手伝いをした。
リクオと上手く話せるように練習したり、告白の言葉を考えたり。
学校以外でも、放課後に相談に乗ったり、電話で話したりもした。
時には望月さんの手を借り、みんなで協力して頑張った。そのおかげで、僕らの仲は深まったと思う。
…けれどそれは僕らだけだ。結局、最後まで獅子堂さんとリクオの関係が進展することはなかった。
獅子堂さんと話すリクオからは、友人以上の物を感じることはない。
だから、告白しても上手く行くかどうかは…
そんな不安をよそに時間だけが過ぎていき、そして…
校外学習の日を迎えた。




