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前回のあらすじ
獅子堂さんの暴走
獅子堂さんとお昼を一緒に取るようになって数日が経った。
最初は机の下に引きこもっていた彼女も、素直について来てくれる。
…いや、素直にというか…
「…シテ…コロ…シテ…」
とまあ、虚ろな目で望月さんに手を引かれている。
諦めきっている感じだね、これは。うん。後!その言葉は周りに誤解を招くからやめて!
まあこうなるのも無理はない。
だってリクオと獅子堂さん、未だにまともな会話が成立してないもん。
リクオは自分から話すタイプじゃないし。獅子堂さんは緊張しすぎて何も言えないか、おかしなことを口走る。
そのせいで最近のお昼は、カオスな会話が飛び交っている。
なんだよ、カマキリ好きですか?って。僕でもそんなこと言わないよ…
まさかここまで獅子堂さんがヘタレるなんて思ってもなかった。どうしよう、校外学習はもうすぐなのに。
「…悪かったわね、ヘタレで。」
「え、あれ…ひょっとして声に出てた?」
「…出てました。」
「ご、ごめん獅子堂さん!」
「いいのよ本当の事なんだから。私はヘタレなうじ虫よ…地面の石ころの方がまだマシなレベルよ…」
「そこまで言ってないよ?!し、獅子堂さんだって頑張ってるから!自信持ってよ。」
「いじいじ…」
これ以上落ち込ませるわけにはいかない。…もうあのカオスな会話の尻ぬぐいは嫌だ!
PCのパーツの話とかされても誰も分かんないよ。なんで獅子堂さんは毎度、そんなニッチな話題ばかり選ぶんだ…
せめて面と向かって世間話できるくらいまでにはなってもらわないと。じゃないと告白なんて夢のまた夢だ。
「獅子堂さん大丈夫ですよ。わたしも頑張ってフォローしますから。」
「望月さん…頭撫でて。」
「よしよし…」
「ままぁ…」
「……」
なんだこのカオスな状況は。
知らない間にこの二人仲良くなってるし。いつの間に、そんな関係性になったんだ?
…ちょっとやってもらいたい。
というか、僕完全に置いてきぼりなんだけど。いやそれよりもさ…
「あの…周り見てます。」
「「はっ!?」」
「いや学習しよ!?」
リクオの事は全然進展しないけど、僕ら3人の仲は結構深まった気がする。
…いや深めてどうすんねん。リクオとの仲を進展させないと…
帰り道。望月さんは用事があるため先に帰った。
その為今日は、獅子堂さんと二人で帰ることに。ここ最近は3人だったからか、少し変な感じがする。
「……」
「……」
知ってた。
普段はしゃべってくれる獅子堂さんも、落ち込んでればそりゃしゃべらないよ。
ふぅ…仕方ない。ここは僕が会話を盛り上げないと。
会話デッキ確認…よし!
「いい天気だね!」
「…曇ってるわよ。」
「あっ…はい…そっすね…」
会話終了。僕には無理だったよ…証明完了-QED-
「…ありがとう、色々と。」
「え?」
「私のために、彼との時間を作ってくれたり、相談に乗ってくれたり。本当に感謝してる。」
「お礼なんていいよ。…結局何の役にも立ってないし…」
「悪かったわね!!」
「いや別に責めてないよ!?」
「悪かったわね!!??」
「何でちょっと疑問形!?いやっまあちょっと、言い方が悪かったかも!ごめん!謝るから叩かないで!」
照れ隠しなのかバシバシと叩いてくる。やめて~ちょっと痛い…いやかなり痛いぞ!?
皮膚が薄い、人体の急所を的確についてくるような攻撃はしないで!DVだぞ!
「私だって結構へこんでるのよ。全然しゃべれないんだもの。」
「うん知ってる。」
「…嘘でも慰めてほしんだけど。」
「え?あっ!わー頑張ってるよー!もう少しで落とせるって!」
「やめて。…なんか私が恥ずかしいから。」
「えぇ…。」
頑張って慰めたつもりだったのに。
「はぁ…あなた、そんなんじゃ望月さんと上手く行かないわよ?」
「そうかな…友達として、かなり仲良くなったと思ったんだけど。」
「え?」
「え?」
僕の返答に獅子堂さんが困惑してる。
?なにか変なこと言ったっけ。
「星乃君と望月さんって、付き合っているんでしょ?」
「え?付き合ってないけど。」
「え…付き合ってない。でも望月さんは…あっ察し。」
望月さんが何か言ってた?
んー…何か言われるようなことしたかな。
『ほんと馬鹿みたい!あんたの事昔から嫌いだったのよ!』
…いや、望月さんは言わない。そう信じたい。
でも…
「星乃君?」
「っ!ご、ごめん。何か言った?」
「いや、あなたが急に黙ったから…ってあなた顔色悪いわよ?冷や汗もすごいし、もしかして風邪ひいた?」
「い、いや大丈夫。ちょっと嫌なことを思いだしただけだから。」
「そう?ならいいのだけど…って、うわ…降ってきた。」
獅子堂さんがそういったことを皮切りに、ぽつぽつと雨が降り始めた。
少しずつ雨が強くなっている。このままだと本降りになりそうだ。
急いで、近くのお店の屋根に避難する。
「最悪、ちょっと濡れた。傘持ってこればよかったわ…」
「僕折り畳み傘なら持ってるけど、2人で使うにはちょっと小さいかな。」
「…仕方ない。私走って帰るから、ここでお別れね。」
「え?いやいや!それなら傘貸すから!」
「それだとあなたが濡れるでしょ?ただでさえ体調悪そうなのに、無理はさせられないわ。」
「そんなの気にしなっ!?」
そこで僕は言葉に詰まった。
ここで少し、僕らの学校の制服について話をしよう。
僕らの学校はブレザーが指定されている。少し黒目の灰色の物だ。
そして下にはカッターシャツ。ネクタイかリボンを自由に選べる。スカートもだ。時代だね。
さて、今は4月。もうじき5月と言ったところだ。
みんなブレザーを着ているのが普通だと思う。まだ肌寒いし。
でも、みんながそうだってわけではない。
中には、カッターシャツだけで過ごす人だっているだろう。…僕の目の前の人みたいに。
さてここで想像してみてほしい。そんな状態で雨に濡れる。するとどうなる?
答えは簡単だ。
「?さっきから何を見て…!!?キャアアアー!」
こうなる。
「ちょっと?!どこ見てるのよ!!」
「ごふっ!?」
胸元を隠しながら放たれた、鋭い右ストレートが腹部に刺さった。
鈍い痛みを感じながら、僕は思った。
…赤色か…っと。




