14
前回のあらすじ
主人公のもう一人の友人現る。
「…はぁ。」
ため息をつきながら、近くのベンチで一息ついていた。
喫茶店を出た後どうするか相談した結果、ゲーセンやカラオケなどがある店、ラウンドアップにに来た。
…そこまではよかった。着いて早々、カイトがリクオに向かって、
「勝負しようぜ。どっちがノゾラにとって一番かをな!」
などと意味不明なことを言い出したのだ。
いや一番とかないから。2人に優劣とかつけないし。
リクオもそうだろうと思って彼を見たが、
「いいだろう。ほえ面かくなよ。」
そう思っていたのは僕一人だけだったらしい。なんで?
というわけで、そこから数時間は僕の人生で最も不思議な時間が流れることに。
色々なゲームをプレして、一番高得点を出した回数が多い人の勝ち。まあいろいろ遊べるから文句はない。
でも気になるのが、僕にとって一番を決めるはずなのに、なぜ僕も勝負に混ぜられているのだろう?どこかにもう一人僕がいるのだろうか?もう一人の僕!相棒!
あっちなみに勝負は僕が勝った。
あの二人、得意分野が偏りすぎていて特定の物しか勝てない。
リクオは体力系でカイトは頭脳系となっている。
ワニを叩く奴や、シュートを入れるものはリクオが。
逆にクイズゲームや、メダルゲームの競馬などはカイトが圧勝。
僕はというと、ゲーム分野と細かいスポーツ系で勝った。
ゲームは家でやりこんでいるし、ダーツやビリアード等はたまに来てやっている。
…というかあの二人は不器用すぎる。
リクオにビリアードをやらせると、白玉が盤外へ吹っ飛んでいくし。カイトに格闘ゲームをやらせると、考えすぎていて隙だらけだった。
というわけで勝った僕だが、その結果地面にうなだれる友人が2名。通路の真ん中でうずくまるのはほかの人の邪魔になるからやめてほしい。
仕方なく二人に、
「どっちも僕の大切な友達…親友なんだから、どっちが上とかないよ?」
と、詐欺…優しい言葉をかけてあげたら、二人ともガッツポーズをして喜んでいた。めっちゃ恥ずかしいんだけど。
その後、2人だけで勝負すると言ってどこかへ行ってしまった。
それを見送り、疲れた僕は一休み。これが今の状況だ。
時刻はもうすぐ18時。ステラの夕飯もあるしそろそろ帰ろうかな。学生があんまり長く居るとよくないし。
それに、気のせいだと思うのだけど…ここに来てから誰かに見られている気がする。
ちょっと怖いし、早く帰りたい。連れまわされて疲れたし。
そう思って二人に連絡を入れようとした時、
「…あの子すごいな。」
近くにある音ゲーが目に入った。
小学生ぐらいの子がプレイしているのだけど、手の動きが玄人だ。
思わず近づいて見てみると、最高難易度の曲を一度のミスもなく叩いている。
音ゲーはあまりやったことはない僕でも、彼女が凄腕だというのが分かってしまうほどのプレイ。僕以外にも、その様子を見ている人が何人かいた。
…あれ?この後ろ姿どこかで見たことがある気がする。
んー…最近どっかで見たような…どこだったっけ?
何とか思い出そうとするけど、その前にプレイが終わってしまった。
僕は何となく、見ていたことを知られたくなかったので、彼女が振り返る前にその場を離れた。
再びベンチに座り考える。
140もない低身長で、赤みがかかった腰まであるぼさぼさな髪。眠そうな瞳で、目の下には隈ができている。
…絶対に見覚えがあるような……いや、僕はロリコンじゃないよ?
なんか頭の中で「お前も…そうなのか?」というカイトの声が聞こえた気がした。お帰りください…
僕は気のせいだろうと思うことにし、2人を探しに行くことにした。
「な、なによあんた達…!」
立ち去ろうとした時だ。そんな焦っている声が聞こえてきた。
振り返って見てみると、さっきの子が太った男の2人組に絡まれていた。
「き、君…!じょ、じょ上手でやんすね…。」
「デュフ…ぼ、僕らにも…おお、教えてほしいでござるな!」
…いや今時やんすにござるて…古のオタクかよ。
心の中でツッコミを入れていると、男の一人が少女に手を伸ばした。
「て、手取り足取り教えてほしいでやんす!」
「っ!」
腕をつかまれそうになった瞬間。
「店員さーーーーん!!!」
僕はそう全力で叫んだ。
3人とも驚いたように固まり、こっちを見ている。…他の人も見ている。
いくらゲーセン内がうるさいとはいえ、大声を出せば注目されてしまうだろう。
…明日からここに来るのはやめよう。
「な、なんでやんすか!」
「き、ききき貴様にかかか関係ないでござろう!」
「……」
確かに!やべぇ、ぐうの音も出ない!
別に彼女と面識があるわけでもないし、何やってんだ僕!
「スゥー……て、店員さーん…」
「随分声が小さくなったでやんすね?」
「カッコつけようとしただけなんでござろう。そっとしておいてやるのが一番でござるよ。」
そう言って同情的な視線を向けてくる二人。
なんで僕が同情されてるんだよ!?こんなの…絶対おかしいよ!
何とかしてその場を切り抜けようと考えてみるけど…だめだ、何も浮かばない。
というか店員さん来ないんだけど!なんで客が叫んでるのに来ないんだ!教えはどうした!教えは!
「―――――…。」
彼女が小声でボソッと何かつぶやいた。次の瞬間、
「アウッ!?」
男の一人の股間を思いっきり蹴り上げていた。
蹴られた奴は、情けない声を上げながら地面でのたうち回っている。
…うわぁ…痛そう…。思わず僕も、ひゅんとしたほどだ。
「な、なにするでやんっ!きゃんっ!?…うごごごごごっ…」
残った方がやり返そうとするが、その前に脛に蹴りを入れられ悶絶。そしてその間にまた、急所に向かって華麗なダイレクトアタックを決めていた。
「…ふぅ…」
「……」
人仕事やり終えた様に一息ついている彼女を見て僕は、
「…ひぇ…」
かなりビビっていた。…大丈夫、漏らしてはいない。
いや怖っ!?え、いつからゲーセンは世紀末な世界になったの?!
というかこの子、見た目からは想像もできないほど喧嘩慣れしてるんだけど!最近の小学生マジパネぇ…
「え、えっと…」
「……」
何か言おうとしている僕に無言で近づいてくる。
いや怖い怖い怖い怖い!!えなに?!僕もこれから同じ目に合うの?!
だ、だだだだだ大丈夫だ、問題ない…はず。助けてルシ〇ェル!
『ああ、やっぱり今回もダメだったよ。あいつは話を聞かないからな…』とのイケボが聞こえてくる。…オワタ。
もはや激流に身を任せて同化するしかないと思い、目をつぶって立っていると、
「ノゾラ!」
「さっきの声は何だ!何があった!」
友人の声が聞こえてきた。サンキュールシ〇ェル!マジ大天使様!
ほっとして目を開けると、
「!あ、あなたは…!」
「え?」
女の子は、2人の方を見て驚いていた。
どうしたんだろう?…もしかして、
「えっと…あ、あの、君は…その…あの二人と…」
「ん?誰だその子?迷子か?」
僕が聞く前にリクオがそう尋ねていた。…いやもうちょい聞き方…
「えっ…っ~~~~~~!」
「あっ…ちょ!」
彼の発言を聞いてすぐ、その場から走り去っていった。
何だったんだろう。…なんかちょっと、悲しそうな顔してた気が…
「おい貴様!!さっきの幼女はなんだ!どこで知り合った!俺に紹介しろください!」
「……」
この状況でもカイトはぶれなかった。いやドン引きだよ…
まあ無事に終わったしいっか。何ともなかったし。
そう思うことにして、その日は解散した。
…まさかまた会うことになるとは思ってなかった。それも…
「おい。」
「は、はい。」
「あ、あの男の人。か、彼を私に紹介しなさい!!」
「……へ?」
学校で会うとは思ってなかった。
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