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前回のあらすじ
主人公、無意識に口説く
「…てな感じで、全然うまく話せなかったよ…情けない…」
「そ、そうか!…っく!すてぃっくがうまく弾けん!」
「もうちょっと会話の練習しないと。沈黙の時間が長かったし。」
「あー!ボールを取るでない!ぬわー!ちょっ、なんじゃそのハメ技?!おぬしと同じ名前のキャラ強すぎじゃろ!?」
「やっぱり会話のレパートリーが欲しいな~。練習しないと。」
「なぜお主は悠長に会話できるんじゃ!ちょっ、や、やめ…やめろー!あー!あああーーーー!!!」
GAME!そんなイケボが、テレビから流れてくる。
隣でステラが台パンしてる。近所迷惑だからやめてー。
「これで僕の12連勝だけど…まだやる?」
「と、とうぜんじゃろ…わ、わしは負けておらん…負けとらんもん…」
「そんな震え声で言われても…じゃあ次で最後ね。まだ洗い物残ってるし。」
「次こそはわしが勝つのじゃ!わしのカー〇ィが負けるはずないのじゃ!」
GAME!聞きなれたイケボがまた流れる。
ちらりと隣をみると…燃え尽きた幼女がそこにいる。なんか口から魂出てない?
「このゲーム結構やりこんでるから、そう簡単には負けないよ?」
「……」
「悪かったって、機嫌直してよ。」
「……友達いないから、練習する時間だけはあったのじゃな。」
「ぐわぁあああああああああ!!!!」
痛恨の一撃。やめてくれステラ、その言葉は僕に効く。
僕の様子を見て満足そうに笑うと、一人プレイを始めた。いや、いきなりレベル9はやめておいた方が…ああ、何もできずに負けてるよ…あっふて寝し始めた。
あまりにも不憫だったので、頭をなでて慰めてやろう。
っこいつぅ!手を叩き落としやがった!…うん、甘やかすのはよくないな。明日も同じ目にあわせてやろ。
静かにそう決め、台所で洗い物を始めた。ステラはというと、また一人で練習を始めた。…いや、レベル1をボコしてはしゃぐのはどうなのよ…
「はっはー!わしに勝とうなんて1光年早いわ!そういえば小僧、星のカケラを宿しておった娘とはどうなったんじゃ?」
「え?さっき言ったじゃん。一緒に帰ったけど、ろくに会話もできなかったって。…それと小僧って呼び方やめて。後、後年は距離」
「なんじゃ情けない。もっとあぐれっしぶにぶつかっていかんか!」
「…簡単に言ってくれるよ。そもそも、まだ知り合って3日だよ?まともに話したのは今日が初めてだし、そんなんで願いを聞き出して叶えるなんて無理だよ。」
「…やはり友達がおらん奴には厳しいかぁ…」
「いるからね?!多くはないけどちゃんといるから!」
「気にするでない…まだ若いのじゃから、これからいくらでもできるじゃろう…」
「不憫なものを見る目で、僕をみるなああああ!!!」
その後、洗い物を済ませた後再戦を挑まれたので、お相手してやった。
全キャラ使って全勝したら、泣いてトイレから出てこなくなってしまった。
なんか、いじめてるみたいでちょっと罪悪感が…いやないな、うん。
翌朝。弁当を作り、学校へ向かう。
リクオは部活を始めたらしく、朝練のため先に行っている。
ちなみに、彼が入ったのは陸上部だ。中学の時も陸上部で、めちゃくちゃ足が速い。全国大会に出場するほどだ。
そのこともあって、彼は陸上の強い高校から推薦をもらっていた。少年のような笑顔でそれを見せてきたのを今でも覚えている。
…でも、ある事件があってリクオは停学になった。そのせいで推薦も取り消し。
結果、僕と同じ平凡な高校に進学することになった。…僕はそのことをずっと後悔している。
だって、リクオが停学になったのは僕の…
「朝から辛気臭い顔じゃな。もっとしゃきっとせんか!」
暗い顔をしている僕に、頭の上から容赦なく激を飛ばしてくる奴が1名。
というか、
「…いやなんでついて来てんの?というか、なぜ肩車…」
あれれ~おっかしいぞ~。家に監…閉じ込め…留守番させていたはずなのに、なんか平然とついて来ている。カギ閉めたよな…
「こうでもせんと、変な目で見られるぞ。周りには、誰もいないところに話しかけるやべー奴にしか見えんぞ。」
「うっ…頭が。」
一瞬一昨日の出来事がフラッシュバックしたが、致命傷で済んだ。
でも、ステラと外で話すときは気をつけておかないといかない。
幸い今は、周りにあまり人がいない。いるのは僕と同じ学校の制服を着た人が数人いる程度だ。
「分かった、気を付けるよ。ところで、普通について来てるけど、家の鍵はどうしたの?まさか開けっ放しで来たんじゃ…」
「心配するでない。カギはちゃんとかかっとる。」
「え?じゃあどうやって…」
「むふ!そんなのは簡単じゃ!今のわしは存在があやふやで、扉なんか簡単にすり抜けられるのじゃ!」
「へぇ…素直に驚いた。…ん?あれ待って。じゃあなんで、一昨日扉開けて教室入ってきたの?」
そう聞いた瞬間、空を仰ぎ見て固まった。なんか小刻みに震えてる。
焦っているのか、冷や汗までかいているようだ。…下にいる僕にめっちゃかかってるんだけど。
「……」
「……おい。」
「まて!落ち着くのじゃ!ちゃんと理由は………あるのじゃ!」
「今考えてるだろ。」
「…そ、そんなことはー…ないぞ…ふひゅーふひゅー…」
「口笛吹けてないし。…で?理由は?」
「…かっこいいと思って…」
「今日のおかずもやしだから。」
「のおおおおおおおーーー!!げふぅ!?」
ショックのあまり、僕の頭から手を放して地面に落ちた。ぴくぴく動く姿を見ていると、夏の終わりに見かける蝉のようだ。
まあその痛みは、かっこいいとかいう理由で僕の学校生活を脅かした罰だと思ってほしい。
そのまま置いていこうとしたが、小走りで僕の後を追ってきた。…っく!なんて図太い神経してやがるっ!
というか、今はステラにかまっている余裕はない。なぜなら、
「望月さん、昨日のこと怒ってないかなぁ…」
「いたた…ああ、確か口説いたんじゃろ?」
「口説いてないよ!…いや、あれは口説いたことになる?」
「知らんな。」
「辛辣!ステラの頼みを聞いてるんだから、少しぐらい僕の力になってよ…」
「はぁ…そうは言ってものぉ~、お主のこみゅ力が壊滅的なのが原因じゃろ?わしにできる事はないじゃろ。」
ぐうの音もでねえ。
「…確かに。そうだ、姿が見えないんだし、カケラを持ってる人を尾行して願いを調べるのは?」
「あーおそらく無理じゃな。」
「なんで?」
「今のわしは存在が不安定じゃ。あまり動き回ると、消滅しかねん。じゃから出来そうにないの。」
「そっか…」
「あっそうじゃ!思い出した!願いを知る方法あったぞ!」
「ほんと!?」
まったく期待してなかったが、嬉しい誤算だ。
これで、少しは気が楽になる。
「それで、どうやって調べるの?」
「まあ待て。どこかに手ごろなのはいないかのぉ…小僧、おぬしの腕輪が反応する奴はいないか?」
「んー…いない、いや待ったなんかほんのり光ってる気が…誰だろう。」
「少し距離があるからかもしれん。一人ずつ近づいてみよ。」
言われた通り周りの人に近づいて確認していく。
不審がられないように、歩く速度を調整してひとりずつ並走。
そうやって確認していくと、最後尾にいた女子生徒に近づいた時腕輪が光りだした。
そのまま彼女の後ろへと行き、小声でステラと話す。
「それで、どうやって確認するの?」
「まあ見ておれ。」
「分かった。」
ステラは彼女の方へ走っていく。
…………なんだろう。すごく、すごく嫌な予感がする。
その直感を信じ、ステラを捕まえようとしたが、
「よいしょっと…」
「?…なんか、体が重い…勉強のしすぎか?」
それよりも先に、ステラが女子生徒によじ登ってしまった。
この状態で引きはがすと、僕が何か言われかねない。
…仕方ない、成り行きを見守ろう。僕は決して、見知らぬ女子生徒を見捨てたわけじゃないぞ。これは…いわゆる、コラテラルダメージってやつだ。
そんなアホなことを考えていると、
「ほい!」
「あぎぃ?!」
「………は?」
よじ登ったステラが、女子生徒の頭に…手を突っ込んだ。
あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…幼女が突然頭に手をぶっ刺しやがった。
…って!
「はぁああああああ!!!??」
「んー?これか?ちがうのー。」
「あぎっ!…あっあっ♡…おほぉっ!?」
「こやつの頭の中ごちゃついとるの~。悩みも多いようじゃし…」
「いやいやいやいやいやいやいや!!なにやってんの?!えっ…何やってんの??!!」
「うるさいのぉ。もう少しで終わるのじゃ、黙ってみておれ。」
「あっ…!あへ…♡ああっ♡へへ…おぉ~♡…おごぉ♡…おぉ!?おお…ああ…♡」
「………」
「おっ!見つけたぞ!…うへーなんじゃこの願い。よっ…と。」
「おぉん♡…おほ…おっ♡!…あぁ…あへ…♡」
…朝っぱらから、僕は何を見せられてるんだ?
目元を抑え考え込んでいると、そんな僕を無視して嬉しそうに話しかけてくるやべー奴が一人。
「ふふ…!あやつの願いわかったぞ!どうじゃ!わしにかかればこのくらい造作もないのじゃ!」
「…スゥー…ばかやろおおおおおおおおおお!!!ふざけんなあああああ!!」
誇らしげに話しかけてくるステラの頭をひっぱたきながら叫ぶ。
静かになった朝の通学路に、僕の怒号が響き渡った。
「な、なんじゃ!ちゃんと奴の願いはしらべて」
「いや方法!何やってんの?!完全にロボトミー手術じゃん!やばい事になってんじゃんか!」
「なにを言う!あやつに影響はない!……ないのじゃ。」
「…なんだその間は。僕の顔見てもっかい言ってみ?」
「…直ちに影響はないのじゃ…」
「後から出たらダメなんだよ!いや、出ること自体アウトなんだよ?!」
「…っち、うっせーな。反省してまーす。」
「晩御飯抜きな。」
「すみません!勘弁してください!」
飯抜きと言われ、すぐさま華麗な土下座を披露してきた。
後に残ったのは、なぜか前かがみな僕と、地面でよだれを垂らしながら恍惚とした表情を浮かべる女子生徒。
…完全に犯罪現場じゃねーか!
「と、とにかく救急車!…いや警察?」
「か、勘弁してほしいのじゃ!ん?でもわし見えないから、警察に捕まらないんじゃ…」
「そんなギャグ言ってる場合じゃないだろ!」
「ギャグじゃないわ!そいつなら心配ないと言っとるじゃろ!ちょっと脳をこねられて、変なものが出ただけじゃ!」
「それを世間一般では大丈夫とは言わないんだよ?!ああーもう仕方ない!ひとまず学校の保健室まで運ぶしか!」
女子生徒をおぶり、学校へと走る。
…背中があったかい。やわらかい。なんかいい匂いがする。
時折、僕の首筋に色っぽい吐息が吹きかけられるせいで、いろいろなものが限界だ!
それにさっきの光景のせいで、僕の体の一部に血液が集まってしまっている!これ以上のエロは体がもたない!
「ところでさっきから気になっとるんじゃが。」
「なにっ?今緊急事態なんだけど!」
「さっきから、なぜお主は前かがみになっておるんじゃ?」
「……思春期だし。男だしっ!」
そう、思春期なのだ。だからしょうがない。
男なのだから…仕方ない。仕方ないのだ…
その後、無事彼女を保健室に送り届け僕は、静かにトイレの個室へと入っていった。
仕方ない。だって…思春期の男子なのだから。
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