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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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94:彼女はとても輝いて見えた ――エムリオ視点――

 ヒジリは美しい。


 今まで、美女なんて腐るほどに見て来た。

 キラキラとしたドレスで着飾った令嬢や夫人たち。これでもかというほどに宝石を身につけ、香水で男を惹きつけようとする。


 ボクはそんな貴族女性が嫌いだった。王太子という立場を考えてそんなわがままを言うのはいけないことだとわかっている。だが一度ヒジリを見てしまったボクは、もう抑えられないんだ。


 着飾っていなくて、それどころかメイクすらしていないのに輝くような可愛い笑顔を見せるヒジリのことを、ボクは好きになってしまった。

 ずっと彼女といたい。一時だって離れたくない。そう思う。


 水着姿で海を泳ぐヒジリの桜色の太ももが見え、思わず目を逸らした。

 そう、ヒジリは出ているところが出て、引っ込むべきところが引っ込んでいる少女なのだ。はっきり言って目に毒だった。なのにもっと見たいとこっそり覗き見てしまう。


 ――ああ、妃にするなら彼女がいいのに。


 王妃としての能力が足りない。父にはそう言われるだろう。少女趣味(ロリコン)なのかと母には嘆かれることだろう。

 だが彼女を知ってしまったボクはもう、彼女以外に考えられなくなっていた。朝から晩までずっとヒジリを想ってしまうほどにボクは重症だったんだ。

 なんならこの王太子の座を辞してもヒジリと添い遂げたい。添い遂げたい、のに……。


 頭にチラつくとある少女の存在を頭から追いやろうとする。

 今はヒジリのことだけを見ていたかった。小型魔物と戦うヒジリの姿はいつまで見ていても飽きないから。

 だがどうしても甘くとろけるような幸せに浸れないのだ。こうしてヒジリと二人きりでいることに罪悪感を抱く自分がいる。


 レーナに会いたい。会って相談したい。

 そうじゃないとボクはきっと間違ってしまう。このまま大事なものを取り逃がしてしまうような気がするんだ。


 傾き始めた陽が海に差し、ヒジリの肌がほんのり赤く染まっていく。

 ああ、なんて綺麗なんだろう。ボクは彼女のことがとても輝いて見えた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 魔物退治も終わり、ヒジリが泳ぎ疲れたと言い出した。


「そろそろ日も暮れてきましたし……」


 顔をほんのり赤くして彼女が恥じらう姿も可愛い。きっとボクがまだ裸のせいだろう。

 本当なら未婚の女性の前でむやみに肌を晒すなんてあってはいけないことだ。ましてや、婚約者でもないのに――。


 婚約者。このワードにズキリと胸が痛みながら、ボクはなんとか笑顔を取り繕った。


「服なら今着るよ。ちょっと待っていてね」


 そうだ。ボクは裸を見せてしまったんだ。

 もちろんヒジリの方は城の広間で裸を見せたわけだけど、あれは事故だ。しかし今回のはきちんとボクの意志によるものだからそんな言い訳はできない。

 ボクは責任を取らなくちゃいけない。


 ……でもどうやって?


 廃太子になれば、王位を継ぐのは弟のジョンだ。

 レーナは女王には向かないだろう。彼女の婚約者は辺境伯家の嫡男だから、王配になる可能性も低い。

 ジョンはまだ六歳でかなり幼い。自由奔放な彼が今から王太子教育を受けるのはどう考えても無理だった。


「それなら、婚約を」


 ふと浮かびかけた考え。

 だが、それ以上を言葉にすることはしなかった。



 服を着終わったボクは、再びヒジリの前に顔を出す。

 これで彼女とまた別れることになる。そう思うと胸が締め付けられるように苦しくなって、ボクはどうしたらいいのかわからなかった。

 別れたくない。少しでも長く、傍にいたい。

 だからボクはこんなことを言い出してしまった。


「せっかく魔物を討ったんだ、魔物の肉でも一緒に食べないかい?」


「これを食べるんですか? 何それ気持ち悪い」


 少し嫌そうな顔をしたヒジリ。

 でも実際魔物の肉は美味しい。最初は彼女と離れたくない故の思いつきだったが、ボクにはいい考えに思えた。


「少し行った先に料理屋があるんだ。そこに持ち込めばきっと調理してくれるはずだよ。さあ行こう」


 ボクは戸惑うヒジリの手を引っ張り、強引に連れて行ったのだった。

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