09:腹を決めました
……神に願って、でも聞いてもらえずに絶望に沈んで。
私は一体何がしたいんでしょう。
ただ泣いているだけでは、何も変わらないというのに。
私は自嘲気味にそう思いました。
メソメソと泣いていることが馬鹿らしくなって、すぐに涙を拭いたのです。
どうせ、聖女にならざるを得ないことは確定です。
それは私がうっかり承認してしまったことですし、もし嫌がってもやらされるのでしょう。
だからと言って逃げる場所はないのです。私はそれを受け入れることしか道は残されていないんです。
けれどそんな私にだって、抗うことはできるのではないでしょうか。
それは――。
「絶対に、家に帰ってやるんです」
あの懐かしき……と言っても、異世界に来てから半日も経っていませんが、ともかく懐かしの我が家に帰るのです。
なんとしても、帰ってやろうと決心しました。
考えてみれば、聖女になればその方法を見つけることだってできるかも知れません。
膝を抱えてうずくまっていても、きっとその道は開けないでしょう。ですが、自分からこじ開けたら見つかるかも。
そう思うと、私の胸の内から何か温かいものが湧いて来た気がしました。
私は独りでも、この地を生き抜いて帰らなければならないのです。大好きな家族の元へ。
拳を握りしめました。
まるで何かのアニメのヒロインみたい。ちょっと恥ずかしいかも……。
でもいいのです。だって私は、この世界のヒロインになってやるんですから!!!
聖女? お望み通り、なってやろうじゃないですか。
そして世界を救って、何もかもを癒して癒して癒しまくって、無事におうちに帰り着きます!
この時の私の脳はきっと、不安とか色々抱え込みすぎて爆発してたんだと思いますね。
変な方向に吹っ切れてしまったので、なんだかとても清々しい気分になりました。まるで自分がスーパーヒーローにでもなったかのような感じでした。
「聖女でもなんでもどーんと来い! この聖にお任せください! 今の私は無敵です!」
……精神状態的にね。
異世界がどれほど過酷なものかはわかりません。でも生き抜ける自信が私にはありました。だって聖女というキャラは、たいてい死なないものです。死んでも生き返るものです。
いつか、家族に「ただいま」と言えるように頑張らなくては。
薄い下着から飛び出した大きな胸を揺らしながら、私は力強く笑ったのでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝、目覚めた私はとてもスッキリいい気分です。
我が家のベッドでなかったことが残念でなりませんが……王宮のベッドはふわふわで最高でした!
差し込む朝日は眩しく、キラキラと輝いて見えます。
この世界にも太陽があるんですね。正確に言うと太陽じゃないんですかね? まあそんなことはどうでもいいや。
さてさて。今日から少しの間、この異世界で私は生きていきますよー。
確か千の年がどうたらこうたら言っていましたね。ここでの一年がどれだけの時間になるかは知りませんが、後一年で災厄が訪れるはず。つまり、それさえクリアすれば私は帰れます! きっと!
せっかく異世界に来たのですから、ずっとやりたかったことを色々とやってしまってもいいかも知れません。
ゴージャスなフリフリドレス。お姫様の着るようなそれを、一度でいいから袖を通してみたかったんですよね〜。よし、王様に頼んで特注で作っていただきましょうっと。
そうと決まればさっさとお願いしに行くことに越したことはありませんよね。私は見せてはいけないここやあそこが今にも見えそうな薄着姿のままで充てがわれた部屋を飛び出し、国王様のいる場所へ向かったのでした。
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