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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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81:アルデートさんはやっぱり意地悪

「まあ、元の世界との違いで色々不便することはあると思うが、慣れれば結構なんでもなくなるだろう。俺も陰で色々言われたりしてるが、気にしなければ何もないのと一緒だ」


「……そんなものなんでしょうか」


「異世界人の価値観はわからないからあまりはっきりとは言うことはできないが、多分命の危険はないから安心するといい。……ただし学園内では、という話だが」


 話は終わりとばかりにアルデートさんがカタンと空のティーカップを机に置きました。

 黄色い液体はすでに無くなっていましたが、おかわりするつもりはないようです。帰れという意思の表明でしょう。


 しかしこのまま帰ってはただ不安にさせられただけ。そんなのって意地悪だと思いません?

 だから私はもう少し話を続けたいと思いました。


「せっかくお呼びいただいたわけですし、ゆっくりしたいかな〜って」


「聖女様も忙しいだろうに。それとも案外暇なものなのか?」


「そんなわけないじゃないですか。毎日騒動に巻き込まれてばっかりですよ。……だからこそ、やっぱり情報収集が必要だと思って。最初に聞きたいことは特にないって言いましたけど、気が変わったんです」


 血みどろの物騒な世界を生き抜くには、色々知っておかなければならないことがある気がします。人に話を聞ける機会も多分そう多くはないと思いますし、学園に入ったら話せなくなるのであればきちんと聞けることは聞いておいた方が無難ですよね。


「ふぅん。随分わがままなんだな、『裸の聖女』様は」


「わがままとかじゃないんですが……。というよりその呼び名はやめてくださいってさっき言ったじゃないですか!」


「じゃあ半裸の聖女様とお呼びしても?」


「半裸なのは事実ですけど!! 言葉にされると余計恥ずかしいじゃないですか!」


「恥じらいは一応持っていたんだな。てっきり好きでその格好をしているのかと思った」


 とことんこちらを馬鹿にしたようなアルデートさんの物言いに、顔が真っ赤になるのを感じました。

 やはりこの人、意地悪です。根っからの性悪です。間違いありません。か弱き乙女にこんな不躾なことを言うだなんて。


「ああもう、なんて優しくない世界!」


 私の叫びをアルデートさんはただニヤニヤと笑って見ているだけだったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「他に何が聞きたい?」


「役立ちそうなこと全部ですね」


「君に役立つのが何なのかわからん」


「私にもわかりませんけど……。そうだ、この世界の成り立ちや地理などが知りたいです」


 そういえばまだ地図も見ていませんでしたからね。

 これは妙案と手を打つ私でしたが、すぐに却下されてしまいました。


「そんなくらいは王立学園に行けば教えてもらえるだろう。まあ大抵のことはあそこで学べるから、俺に聞くことなんて実際ないと思うが」


「えぇ、そうなんですか」


「そのための王立学園だろう」


 言われてみれば確かに。

 でも少しくらい教えてくれてもいいのに……とは思いましたが、意地悪なアルデートさんにそれを言っても無駄ですね。


 こうなると本格的に尋ねるべきことがありません。でも、せっかくのこの機会を失うのは惜しい。

 さて、何を訊こうか――しばらく思案を巡らせて、私は思わず「あっ」と声を上げました。


「そうだ、どうしても聞かなければならないことを思い出しました」


「何だ?」


「私をこの世界へ召喚したのはアルデートさんなのですよね? ――なら、家へ帰る方法を教えてください」


 私の最終目的は結局、元の世界へ戻ること。

 血みどろの世界で生き抜く術ももちろん大事ですが、何より大事なのはそれでした。


 ですが、


「そんなのは俺は知らない。……すまない」


 返って来たのは、最初からわかり切っていた答えだったのです。

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