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76:伯爵様からのお呼び出し

 体がだるく、起きる気力がありません。

 昨晩食べ過ぎたせいで空腹にならず、日が昇ってからもしばらく部屋でうつらうつらしていると、ドアが乱暴にノックされました。


「誰ですか……。私今ちょっと体調悪いんですけど」


「嬢ちゃん、大変だべ。ここの領主様から呼び出し喰らっとるぞ」


 外から聞こえるのは御者さんの声。ああ、帰って来ていたんですね。

 ちなみに昨夜はどうやってここまで帰り着いたのかといえば、お祭りが終わった後、子供たちに宿まで送り届けてもらったのです。御者さんの存在を思い出すことさえなかったです。心の中で謝っておきました。


 それはさておき。


「呼び出し、ですか。領主様って……?」


 呼び出されるようなことをした覚えがないんですけど。というか誰から? 頭がガンガンして考えがまとまりません。


「だーかーら、ここの領主様からだべ。ビューマン伯爵。わからねえか?」


「わかりません。どこかで聞いたことがあるような気もしますけど」


「このオセアンの街含むスピダパム王国の南部の多くの地域を領地とする伯爵様だべ。その使者がさっきこの宿の前まで来て『ビューマン伯爵邸に来るように』って伯爵様の伝言をしてくれたんだべ」


 ふーん。伯爵ですか。

 伯爵といえば、それなりに地位が高いイメージですよね。逆らったら首が飛びそう。

 私はなんとか重い体を起こして、ベッドから降りました。この世界はどうやら私に休みというものを一切与えるつもりがないようです。どれだけ無理をさせたら気が済むんでしょう。


 立ち上がるだけでふらふらしますが、どうにか立っていられるようです。

 それだけ確認すると私は、部屋の外へ出ました。


「馬車があるなら行きます。歩きは無理そうなので」


「今も使者の乗ってきた馬車が外で待ってるだ。急いで行かねえと待たせてるぞ」


 馬車ならどうにか、伯爵邸とやらまで行けるでしょう。

 御者さんに支えてもらいながら私は宿の外に停まっていた馬車のところまで行き、乗せてもらってオセアンを出発することになったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 馬車に揺られるうち、気分が悪いのも少しずつ収まって来ました。

 少なくとも伯爵様の前でゲロを吐くという事態は避けられそうです。良かった……。


 現在、オセアンの街を離れ、見知らぬ土地へやって来ています。

 オセアンとは打って変わって家屋などが落ち着いた色をしており、人は少なく、その代わりに野生動物をちらほらと目にします。御者さんに聞いたところ、貴族の屋敷は大抵人の寄り付かない場所にあるものなのだとか。


 小高い丘の麓まで来ると、やっと屋敷が見えました。

 やはりと言いますか、見るからに贅を尽くした感じのキンキラキンのお屋敷です。この世界、文明の割にどれだけ裕福なんだと驚いてしまいます。


 丘の上で馬車が止まると同時に、どこからともなく現れた使用人が屋敷の門の前にずらりと並びます。その数なんと総勢三十人以上。

 そして一斉に頭を下げ、「ようこそおいでくださいました」とメイドさんやら執事らしき人たちが口々に挨拶してくださいました。


「ええと、お招きいただきありがとうございます。聖女の早乙女聖です」


 私は大勢の出迎えに戸惑いつつもなんとかそう言うと、中へ通してもらうことになりました。

 ちなみに御者さんは、屋敷に足を踏み入れるのは恐れ多いからと馬車で待っているのだそうです。一応私の護衛でしょうに……。私が屋敷の中で何か危険な目に遭ったらどう責任を取るつもりなんでしょうね。


 何かあったら全部御者さんのせいですからね、と彼を睨んでおき、私は一人でビューマン伯爵邸へ入ります。

 それにしても一体どんな用件で呼び出されたのでしょう? 捕まったりしないといいのですが。

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