75:夏祭りがあった夜、不思議な夢を見ました
唐突ですが今、私は夢を見ています。
普通は夢から覚めてから「あぁ、夢か……」と言う人がほとんどじゃないですか。
でも私の場合は寝ていながらこれが夢だということを理解するタイプなんです。友達に言ったら「珍しいねぇ」と言われたのをよく覚えていますよ。
異世界に来てからはほとんど故郷の懐かしい夢ばかりを見ていたのですが、今回はなんだか違いました。
ふわふわした、全体的に薄いピンク色の空間。景色がぼんやりとしていてここが一体どこなのかはよくわかりません。
そしてその真ん中に、明るい空色の髪をした女の子がちょこんと座っているんです。そして私の方を……と言っても私の方は実体がない感覚なんですけど、とにかくこちらを見つめていました。
女の子の容姿を細かく言いますと、背丈は五歳児の子供くらい。今にもこぼれ落ちそうな銀色の大きな瞳が特徴的で、肌は血液が通っていないのかと思うほど白く、絵に描いたような美人でした。
しかも布を巻きつけただけのかなり際どい服を着ています。しかし薄汚れてはいず、やけにキラキラ輝いて見えました。
あれだけ騒いだ夏祭りの後だからでしょう、こんな変な夢は初めてです。
私は不思議な夢の中で女の子に話しかけようとしましたが……体がないせいなのか、全然声が出ません。
戸惑い、どうしようかと考えたその時――女の子の方から口を開いてくれました。
「ようやく繋がったようじゃな。ワタシの声が聞こえるか、選ばれし聖女よ」
「――――」
いきなり挨拶もなしに何を言っているんでしょう、この子は。
喋り方が変ですし、そもそもこんな幼い女の子が選ばれし聖女とか厨二臭い単語を言っていることにすごく違和感を覚えます。もしかして彼女、異世界人でしょうか?
でも、異世界人なら五歳くらいの見た目でも赤ちゃんのはず。それとも彼女は特別、体格が小さい異世界人なのか……。謎は深まるばかりです。
その間にも、幼女は話し続けています。
「言葉を交わせる時間は短い。よって、手短に用件を話すのじゃ。
あまり祝福を……聖魔法を使いすぎるな。ともすればそれは、お主の未来を奪うこととなるであろう。実際に現在、その力を見、危険視する者がすでに現れておる。
わかったか、聖女よ。聖魔法は無限。じゃが命取りになる危険な道具であることを忘れるでない」
何か壮大な話をされているような、いないような。
それにしてもどうしてこの女の子が私のことを知っているんでしょう。不思議です。まあ所詮は夢だからなんでしょうけど。
「もう時間が来たようじゃ。ワタシはお主が道を違えることなくこの世界を救ってくれることを祈っておる。またいつか会おうぞ――」
そんな意味深な言葉を残し、夢は終わってしまいました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「まったく変な夢ですね」
ベッドから身を起こした私はほぅ、とため息を吐きました。
あの女の子は一体何者だったのか、とか、あれはこの世界のどこかにいる誰かからの通信だったんじゃないか、とか、色々な妄想をしましたが、結局何かはわかりませんでした。
別に私に実害が及ぶことがなければ何でもいいんですけど。というか、あの忠告のようなものは何だったのでしょう。
「『聖魔法を使いすぎるな』ですか……。確かに最近乱発してましたからね。体からの警告だと受け取っておくことにしましょう」
実際、今もすごく頭がガンガンしていますし。
二日酔いに似ているかも知れません。もちろん本当に飲酒をしたことはないので想像に過ぎませんが、そこまで激しくないものの、吐き気がしました。
昨日の花火を作るのに力を入れ過ぎたようです。
今日は一日休んだ方がいいでしょう。
そんなわけで私は再びベッドに横になったのでした。
面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。
ご意見ご感想、お待ちしております!




