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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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72:夜空に星を散りばめて

 ――聖魔法は本来こんな使い方をすべきじゃなことくらい、わかってるんですよ?


 何しろ死ぬほど疲れてしまいますし。また使用過多で倒れないとも限りませんし。

 そういえばニニには、「むやみやたらに聖魔法を使わない方がよろしいかと。くれぐれもやり過ぎないようにお願いいたしますね」などと割ときつめに釘を刺されていた気がします。そうして今、その言いつけを完全無視してしまっているわけですね。


 でもあえて言い訳させてもらうなら、人を喜ばせるのも聖女の仕事の一つじゃないかと思うんです。

 その中に多分に『花火が見たい』という私情が挟まれているのは事実ですけど――。


「なんて考えている場合じゃありませんでした。集中しないと乱れますね」


 夏の夕刻だというのに非常に暗い、漆黒の空へと届かせるべく、手から放った光をすぅっと天に伸ばします。

 もっと高く、高くへと。これにもし笛の音がついていれば花火が上がる様に見えなくもないかも知れません。


 大通りの真ん中だからでしょう、私の周りにはどんどん人が集まって来ています。彼らは一様に何が始まるのだろうと期待に満ちた目で見つめていました。

 期待に応えられるかやや……いいえ正直言ってかなり不安です。が、やってみせるのです!


 ようやく上空まで届いた白光に向かってさらに電撃のような魔力を流し、強く輝かせます。花火のように器用に形を作るのはなかなかに難しいですが、不恰好ながら花の形を描くことに成功しました。



 夏祭りの最中、その輝きを目にした人々は一体何を思ったでしょうか。

 わぁっと湧き上がる歓声の中、私も他の人と同様に空を見上げます。そして――そこに広がっていた光景に、私自身ですら思わずうっとりしてしまいました。


 ――綺麗。

 その一言しか、浮かびません。


「でもこれはやっぱり、花火というよりは星ですね」


 徐々に光を弱めて消え行く輝きを見つめながら、私は独りごちました。

 でもこれも悪くありません。地元の花火大会と比べれば音がないので迫力は足りませんが、天体観測をしているような気分になります。


 一発目が消え去ったのを見届けるとすぐ、私は早速第二弾を用意し、放ちます。

 夜空に、先ほどより多く純白の星々が煌めきました。それから間をおかず、三発、四発と打ち上げていくと、周りの熱気がさらに高まっていきます。


「あれがハナビ!」

「すごい!」「お星様がキラキラしてるねぇ」


 子供たちも嬉しそうにしています。

 その様子を見てやや調子に乗った私は、少し無茶をしてみることにしました。


 両手を掲げ、同時に二つの光柱を作ります。それから両手でハートやら三角やらを空のあちらこちらに描き、その上で色を変えることにも挑戦してみたのです。

 聖魔法は基本白い光なのですが、街の人たちにお願いしてあらゆる種類の魔石というものを貸していただき、それと混ぜ合わせることによって色をつけていきます。

 火の魔石なら薄赤に、水の魔石なら空色に、土の魔石は黄色、風の魔石は薄緑に変色し、それを組み合わせることで本物の花火のようにしたわけです。これは異世界だからこそ作れる特製花火と言っていいでしょう。


 再び歓声が巻き起こり、街全体が揺れたのではないかとさえ錯覚してしまうほどの拍手が響き渡りました。

 素晴らしい、美しいなどという無数の声を耳にし、嬉しくなってしまいます。そして自分でも夜空に咲く花火を見たと同時に、視界がぐにゃりと歪みました。


 あ……これは本格的にやばいかも。でも、何はともあれ成功させられて良かったです……。


 そう思うが早いか、私は地面に崩れ落ちていたのです。

 しかしそんな状態でも私がまるで注目されないほど、皆の視線は天高くへ注がれていたのでした――。

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