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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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70:今夜は夏祭り

 それからしばらく、私は銅像の隣に立たされ、崇められまくりました。

 非常に居心地が悪いです。私、神様でも何でもないのに……。アイドルの人ってこんな感じの気持ちなのでしょうか。


 そういえば聖女も結構アイドル的要素があったりするんですよね。アイドル、つまり偶像崇拝。そこに存在するだけで人々に安心感を与える……という設定も二次元の世界ではよく見かける気がします。

 ただしここは私にとっては三次元なんですけどね。


 そうして三十分ほど経ってやっと崇拝の時間が終わった頃。

 これでようやく帰れる……と心の中で安堵の吐息を漏らす私に、『長』が言ったのです。


「今夜は実はこの街の夏祭りがあるのです。せっかくですから聖女様もどうぞお楽しみください」


 ――えぇ、まだイベントやるんですか? 勘弁してくださいよ……。


 そうは思ったものの、もちろん正直な気持ちをぶちまけられるはずもなく、聖女スマイルで頷きました。

 夏祭りという言葉に魅せられたのもあります。この世界の文化を知っておくというのも聖女の大事な仕事です。多分。


 ところでこのままじゃ過労死してしまいそうですが、私の体は大丈夫でしょうか?



 祭りが始まる前にまず準備しなければという話になり、私はとある女の子の家へ連れて来られました。

 何をされるのかと少しビクビクしましたが、どうやら服を着替えるようです。

 祭りではこの地方に古くから伝わる踊りの衣装を身につけるのだそう。久々にまともな衣装が着られる!と思って喜びましたが、渡されたのは簡単に太ももが見えてしまうほどにとても丈の短いスカートだけ。


「あれ、上の服は?」


「ないよー? 女はねぇ、みんなお乳をふりふりしながら踊るんだ。あたしも十歳になったから踊るんだー」


 着付けをしてくれた女の子が当たり前のように言ったものですから、私は絶句してしまいました。

 上半身裸で踊れと? この世界はどれだけ私に恥ずかしい思いをさせれば気が済むのでしょう?


 私は泣く泣く辞退しました。無理です、大勢の前で乳房丸出しとか無理です。

 結局いつも通りのビキニで祭りを楽しむことになったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ほーら、もう始まっちゃうよ?」

「あっ、もうそんな時間ですか」


 そんなこんなしているうちにあっという間に夜になっていました。

 女の子に手を引かれて大通りへ出ると、ものすごいことになっていました。


 夏祭りはやはりと言いますか、私の想像していたものとは随分違うようでした。

 着物に金魚掬い、輪投げに射的などの日本式の夏祭りしか知らなかった私は、正直驚きを隠せません。


 衣装は男女共に露出の多いものばかり。夏祭りで定番の屋台はどこにもなく、代わりに街のあちらこちらにテントが貼られ、菓子や料理が売られていました。

 聞いたこともない音楽が奏でられ、子供たちが楽器を片手に街を練り歩いています。

 男の人たちは杯を片手に飲み比べを始め、女の人は華麗な踊りを見せながらはっちゃける。皆さんとても楽しそうで、私の異質感がすごいです。


 遠い異国の見たこともない祭りは、それはそれは盛り上がっていました。

 女の子も踊りの輪の中へ走って行ってしまい、私は一人きり。とりあえず、御者さんでも探しますか……と思っていると、あっという間に私の周りに人だかりができていました。


「聖女様、うちの娘、ずっと病気がちだったのに聖女様のおかげで踊れるまでに元気になったんですよ」

「見ていってくださいな」

「こっちの料理も美味しいよ。聖女様のために腕によりをかけて作ったんだ」

「聖女様」「聖女様」


 ひえー、なんなんですかこの人たち。私のことぐいぐい引っ張って来るんですけど!?

 私は悲鳴を上げながら引き摺られていったのでした。

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