69:異世界の治安がやばすぎなので解決してあげます!②
「とは言ったものの、まさかこんなことになるとは思いませんでした……」
いや、わかってはいるんです。
聖女の役目は、この世界の人々を救うことだというのは。
私が与えられた聖魔法という力で人助けをしなければならない。それが私の存在意義なのでしょう。
ですが、聖女というのはこんな危険な思いを毎日しなければならないものなんですかねぇ……。そこがどうにも納得できないのですよ。
この街の治安を改善する。それが私に課せられた仕事でした。
『ヴォラティル教』も割と簡単に退治できたものですから、そんなに手間はかからないだろうと思っていたんです。せいぜい二、三時間で終わるだろうと。
甘すぎました。完全に異世界の治安を悪さを舐め腐ってました。
昨日あれほどわんさかいたネズミがいない代わりとばかりに、街の至るところにいかにも頭のおかしい人だの悪質な犯罪者だのが結構ウヨウヨいまして。
空き巣犯が五組、強盗が十組、誘拐が三組、しかもそれを私が囮になって捕まえなければならないものですから大変です。
血気盛んな人が多いらしく、大人しく捕まってはくれずにその都度激しいバトルになります。私の聖魔法は攻撃よりは防御向きのものであり、しかも魔力をかなり使うので乱発はできません。よって御者さんを頼り、物理的なもので倒してもらう戦法になりました。
これで終わった……と思いきや、今度は『ヴォラティル教』の残党が二人ほどが現れ、襲われたりもしました。寸手のところで聖魔法を発揮しなかったら殺されていたところです。
血反吐を吐くような苦労の果て、ようやく全部捕縛し終えた頃には、ヘトヘトで一歩も歩くなってしまっていました。
「今更かもですけど、異世界の治安、ちょっと悪すぎじゃありません!? どうにかならないもんなんですか……」
思わずそう愚痴をこぼしますが、もちろん何の意味もありません。
せいぜいこれから悪質な犯罪者が増えないように、港からやって来る密航者の取り締まりを強化してもらうくらいしかありませんよね……。なんで私がそんなことに関わらなければならないのでしょう。エムリオ様はこんな時に一体何をしてるんですかね、まったく。この街のどこかにいるんでしょうに。
「とりあえず、公園に戻りますか……」
「またおらが嬢ちゃんを担がなきゃなんねえのか。いい加減にしてくれ、まったく」
御者さんには申し訳ないと思いつつ、肩車してもらって私は公園へと向かったのでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「な、なんですかこれ」
「聖女様の像です。聖女様はこの街にとって救世主ですから」
公園に入ってすぐに私が声を上げた理由――それは、中央に立つ銅像を見たからでした。
出来立てなのか、青銅色ではなく銅色にキラキラと輝いているのは、裸婦像。しかも聖女の、つまりは私の裸婦像だったのです。
――こんな短時間で銅像を? 朝に公園を出発してからまだ六時間くらいしか経ってませんよ? というか何ですか、この破廉恥な銅像は!
「うぅ……しかも私にそっくりなのが悔しいです。今なら恥ずかしさで死ねますっ」
羞恥心に身を捩る私に、街の人たちは暖かい目を向けて来ます。
銅像を作ったらしい職人さん――銅像は魔法で作ったそうです。どんな魔法なんでしょう?――は誇らしげですが、私はちっとも嬉しくありませんでした。
この時私が学んだこと。『下手に目立つとひどい目に遭う』、以上です。
英雄になんてなるものじゃないですね、まったく……。
もうちょっと、港町編続きます。
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