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67:私は本当にお人好しかも知れません

「別に私は迷子になって、たまたま変な人たちに絡まれて、逃げ出しただけなので。そんなに褒められたことじゃありませんから……」


 私はブンブンと首を振りながら、大波のように押し寄せて来る人々の誤解を解こうと必死でした。

 しかしいくら言っても彼らに私の言葉が聞き入れられることはなく、ありがたがられるばかり。しかも最大限のお礼をしたいとか言われて金貨を積まれたりしてしまっています。


「御者さん、なんとか助けてください!」


「おらは知らねえべ。こうなったのは嬢ちゃんの勝手のせいだろうが」


「そうですけど……まさかこんなことになるとは誰も思わないじゃないですか」


「知らね」


 頼りの御者さんは相手にしてくれません。

 私はただあわあわするしかなかったのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――『ヴォラティル教』と名乗る集団が相当住民たちに迷惑をかけていたおかげで、それを壊滅させた私は英雄みたいな扱いになってしまったようです。

 『ヴォラティル教』は善人の顔をして金をふんだくる極悪組織だったようで逮捕した騎士団からもかなり感謝されていたと聞きました。その時は気絶していましたが、今は起きているのでこうして大人数に囲まれているわけです。


「困った時はお互い様ですから」


 そう言ってこの場をどうにか収めようとしたら、「女神じゃなかろうか」と熱い視線を一気に向けられてしまいました。

 なんだか『ヴォラティル教』の並みに怖いんですけど、この人たち……。


 ちなみにですが、後で御者さんに「嬢ちゃんはどれだけお人好しなんだ」と言われてしまいました。

 確かに言われてみれば私ったら意外にお人好しなのかも知れません。


「でもそれが聖女の務めなんですから仕方ないでしょう」


「聖女とか関係なしに素だと思うべ」




 お人好し云々は置いておくとして、ますます聖女感を増してしまった私。

 治癒院の院長さんからは「ここで働いてくれないか」とお願いされ、街の人たちからは頭を下げられ、病人の家族の人には「家族を治してほしい」と懇願され……。


 もうわちゃくちゃです。魔力消費が激しいので喋るだけでもしんどいというのに、こんなに圧をかけられてはたまったものじゃありません。

 「また明日聞きますから!」と言って皆さんを追い払い、一息吐くことができたのはそれから三十分以上後の話でした――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「私はやっぱりあれですよね? 巻き込まれ体質ってやつですよね? 私より相応しい人間なんて星の数ほどいるはずなのにわざわざ異世界に呼び出され、聖女認定されて、ことあるごとに厄介な事件に引き摺り込まれて……振り返って考えてみると我ながらなんとも理不尽な運命です」


 這う這うの体でどうにか宿へ戻った――正しく言えば御者さんにおぶられて帰って来た私は、自室で一人、愚痴を呟いていました。

 今日は楽しい異世界観光旅行!のはずがどうしてこんな風に終わってしまうのでしょうか。デパートの時といい今日といい、解せません……。


「しかも明日は公園に行って街の人たちのお願いを聞かなきゃいけませんし。はぁぁ」


 今日の昼、子供たちと死闘?を繰り広げたあの公園に再び足を運ぶのかと思うと、憂鬱な気分になってしまいます。

 しかし約束は破れません。明日の朝早く、起きたらすぐに行かないとです。街の人が総出で集まるらしいのでどれほど大きな集まりになるかはわかりませんが、少なくとも一万人とかは集まりそうです。

 あんな狭い道で雑踏事故とか起きませんかね? 疲れのせか悪い方向に思考がいってしまい、なんだかますます不安になって来ました。


「でも結局考えても無駄なわけで。もうここは腹を括って行くしかありませんよね」


 ベッドに横たわり、私は力なくそう呟いて目を閉じました。

 今日はかなり疲労が溜まりに溜まっていたようで、すぐに眠気が襲って来ます。夕飯はまだ食べていませんが睡魔に抗うことができず、少しの間だけ眠りの世界に身を預けることにしたのです――。

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