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58:異世界観光へGO!①

「うわー、いい朝ですね〜!」


「はしゃぎすぎだべ。また迷子になるぞ」


「大丈夫ですよ。私、そんなにドジでも馬鹿でもありませんから!」


「どうだかなぁ」


 雲一つない青空の下、レンガの敷き詰められた道を私は浮かれながら歩いていました。

 ここはオセアンの街のとある大通り。宿屋から出た私は、御者さんと一緒に異世界観光ツアー――と言っても大層なものではないのですけどね――を始めています。

 まず最初に行くのは、この街で一番活気があると噂の市場。宿である程度情報収集はしておいたので、今日巡る場所はすでに決めてあるのです。


「市場に公園、それと孤児院。孤児院には子供たちがいっぱいと聞くので、一緒に遊ぶのが楽しみです」


「娯楽を探すんじゃなかったんか?」


「もちろんそのつもりですけど、せっかくの異世界観光なら楽しまなくちゃじゃないですか」


 異世界の娯楽を知るという目的なら御者さんに聞いてみるのが一番早いということに気がついたのは今朝のことですが、それでも異世界観光はどうしてもしてみたかったのです。

 それに教えてもらうより、自分の足で探した方が楽しいですし。


「別にこのくらい、危険はないと思いますよ。エムリオ様に言われた通り治安の悪い地帯には入りませんから」


「どうだか」


 この御者さん、どこまでも私への信頼というものがないですね。まあ、出会って初日で失踪してしまった私がいけないのでしょうけど……。

 でも今回は御者さんから絶対に離れないと決めたので大丈夫。ですからそこまで心配する必要はないのですが、私がそう言ってもまるで信じてくれないどころか、余計に心配されてしまいました。私、もう子供じゃないので大丈夫なんですけどね。


 そんなこんな言っているうちに、とある交差点まで到着していました。

 どうやら市場のある通りまで出たようです。私たちは市場の方へ足を向けて、さらに進んで行きます。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「デパートの時も思いましたが、ここはまるで巨人の国ですね……」


 道を少し進んだ先、開けた場所にあった市場には想像以上に人がいました。肩と肩がぶつかりそうなくらいです。

 しかも私は、この世界で言うと十歳くらいの背丈しかないので、異世界人たちに紛れると前方が全然見えません。


「おらの背中に乗るべ?」


「遠慮します。これでも一応年頃の乙女なので」


 確かに肩車してもらった方が良さそうですけど、御者さんは中年とはいえ男。そんなことをしてもらうわけにはいかず、私はまるで自分が蟻になったかのような気持ちを味わいながら自分の足で歩き続けます。

 そして人混みの隙間から周囲の店を見回しました。


「あちらの魚屋さん、珍しい魚がいっぱいです! 御者さん、行ってみましょうよ」


「別にあの魚は珍しくともなんともないべ?」


「少なくとも私は初めて見るので。さあさあ!」


 そうして私は御者さんを連れて魚屋に立ち寄り、そこで今朝漁れたての小魚をたくさん目にしました。

 さすが港町。赤や青、銀に紫、地球では存在し得ない魚が所狭しと並んでいます。どれも色はどぎついですが味は美味しいらしいです。


 買い物ついでに魚屋の店主さんと色々話したりもできて、私としては大満足。小魚――魔道具とやらで冷凍しているので腐らないそうです――を購入しました。


「本来の目的忘れてるだべ? 店主のおっさんとは魚介の話で盛り上がっててその他の話しとらんかっただろ」


「魚屋さんに魚の話を聞くのは普通でしょう? それに私、魚好きなんです」


 確かに娯楽探しのことはすっかり忘れてしまっていただけなのですが、それはもちろん内緒です。

 異世界観光はまだまだ始まったばかり。私は冷凍魚を片手に次の店へと向かって再び歩き出したのでした。

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