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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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55/239

55:現在夏季休暇中

 所々で停車し、休憩を繰り返しながら草原地帯を進むこと二日。

 王都で買い溜めしていたらしい食料が尽きかけた頃にようやく草原が終わり、小さめの町に着きました。王都のような華やかさはなく、ひっそりとした静かなところです。


 そこでまた買い物をし、一泊してからさらに南へと進みます。

 こうも何日も馬車旅が続くと想像以上に大変です。座りっぱなしでお尻が痛いですし、野宿などをする際にはあまり深く眠れませんし、それより何よりエムリオ様との距離がずっと近いままなのです。

 せめてレーナ様と一緒だったら良かったのになぁ……とは思いましたが、文句を言っても仕方ないので我慢するしかありません。それでも次第に感覚が麻痺するなんてことはなく、ずっと恥ずかしいままでしたけど。


 一体何日馬車に揺られ続けているのか、わからなくなって来た頃。

 人気(ひとけ)のない田舎道を走っていると、エムリオ様が「そろそろだね」と言い出しました。


「そろそろって、何がです?」


「ここは王国最南端の地区。この先にあるヌーダス湖という場所に、ボクらの通うスピダパム王立学園があるんだよ」


「へぇ……湖のそばに学園が。なんだかロマンチックですね」


 てっきり、普通の学校みたいに街中にあるものと考えていましたが、確かに王族貴族の方々が通うわけですから、そんなありふれた場所にあるわけがありませんよね。

 湖のほとりに聳える屋敷のような建物を想像し、私は思わずうっとりしてしまいました。


「見たらヒジリも驚くと思うよ。ボクも最初は大層びっくりしたなぁ」


 そんなに素晴らしいのでしょうか。なんだかワクワクして来ました。

 馬車は今もガタゴトと走り続けており、目的地に到着するのはまもなくでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――そして私はエムリオ様の言葉の通り、学園の建物を見て驚愕することになります。

 空を映した薄青の湖面の上に(・・)城と見紛うほどの大きな屋敷が堂々と浮かんでいたのですから。


「あれが王立学園……! すごいです、この世界の建物って、水の上にも浮くものなんですか?」


「いいやあれは特別だよ。水魔法で調整して浮かせているとか聞いたことがある。詳しい仕組みはボクも知らないけど、不法侵入を防ぐためらしいよ」


「あんな大きな建物を浮かせるなんて魔法すごすぎじゃありません!?」


「そうかな? 多分キミの聖魔法の方がおそらくすごい力だと思うけど……」


 そんなものなのでしょうか。私にはよくわかりませんが。

 改めて私たちが今から向かう学園を見つめます。レンガ造りの赤茶色の建物はところどころに金銀があしらわれていて美しく、陽光に反射してキラキラと輝いて見えました。


「今からあそこに行くんですね。今からとってもワクワクしちゃいます! 私って三年生からの編入ってことになるんですよね。突然の転校生?に皆さんどんな反応を見せてくれるんでしょうか?」


 思わず興奮してはしゃぐ私。しかし、


「ヒジリ。一つ伝え忘れていたことがあるんだけど、ちょっといいかな?」


「何ですか? 私、この世界の文字が読めなくてルールブックの内容が全然分からなかったんですよね。ですから色々教えていただけるとありがたいです!」


「いや、それも大きな問題だと思うけどそうじゃなくて……意気込んでいるところ悪いが、今は学園は夏季休暇中なんだ。だから授業が始まるまでにはまだ十日以上あるんだよ」


「えっ、後十日も!?」


 夏季休暇ということは、つまり夏休みということですよね。

 今が夏だったという事実にも驚きですし、そもそもこの世界にも季節があるということも初耳ですし、夏季休暇中であることのどこが問題なのか不明ですし、私は困惑してしまいました。


「でも寮みたいなのには入るんですよね? あの様子だとしょっちゅう出入りできる感じじゃないでしょうし」


「休暇中は警備的問題もあってずっと門が閉ざされてるんだ。だから寮に入れるのは秋季授業が始まってからだよ。それまでの残り十日間ほどは、一番近くの街で過ごすといい」


 近隣の街と言っても、見回しても一面の田舎道が続いているだけなんですけど……。

 エムリオ様に聞いてみると、ここから馬車で一日ほどの行った場所に海辺の街があるそうです。ちょっと遠すぎやしないでしょうか。

 のんびりしている暇はないのにだとか、もう少し遅く王城を出発しても良かったんじゃないかとか、色々と言いたいことはありましたがグッと堪えます。


 私は頷き、御者さんにお願いして海辺の街へ馬車を走らせてもらうようにお願いをしました。


「わかってら。そこまでの護衛を務める約束になってるべ」


「そうなんですね。知っているならもっと早く言ってほしかったです」


「嬢ちゃんが聞かなかったから話さなかっただけだべ」


 海辺の街に行くのことを知らなかったのはどうやら私だけだったようです。なんだか解せません……。

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