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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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49:ホラー展開キタ――!?

 暗い夜道を一人で歩きます。


 街灯の一つもないので手に聖魔法で光を灯しながら進んでいました。聖魔法はかなり便利ですが、照らせる範囲は限られていますから万能ではないのですけど。


「はぁ……。やっぱり一人で宿を出るのは失敗だったかも知れません」


 私は今、絶賛迷子中です。

 考えてみれば当然でした。私、誘拐されていたわけですから、帰る道など覚えているはずがないのです。

 このままではまた変な人に捕まえられて連れ去られるという最悪の展開になりかねませんでした。早くデパートのあった場所まで戻らないと……と必死に探し始めてすでに三時間以上。足はふらふら、疲れて今にも座り込んでしまいそうになっていました。


「かといって、宿まで戻ることもできないのですよね」


 歩き回りすぎて自分がどうやってここまで来たかがさっぱりわかりません。というより、ここがどこだかわかりません。

 せめて騎士団詰所の場所まで行ければいいのですが、その場所も不明。つまりまたもや八方塞がりでした。


「大人しくエムリオ様とあの部屋でいれば良かったです……。でもでもっ、あんな部屋で二人きりなんて無理の無理の無理! たとえ何かされないとしても恋人でもない人と一緒にだなんて!」


 思い出すだけで顔が熱くなっていくのがわかります。私はうぶなのです。

 と、そんなことはこの際どうでもいいこと。大事なのはどうやってこの状況を打開するかなのですから。


「とりあえず朝になるまで、会う人会う人に道を尋ねながら行くしかありませんね……。御者さん、デパートのところで待っていてくださいよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ……そう思っていた時期もありました。


「全然人がいないんですけど! どうなっているんですか!?」


 道を尋ねようにしても人がいないんじゃ、どうしようもありません。

 周囲には民家らしきものがありましたがノックしても誰も出ず、私は途方に暮れてしまいました。しかもそれだけではなく、ますます夜が深くなり、恐ろしいほどの静けさに包まれていくのです。


「異世界で、本気で一人になってしまいました……」


 ここにはレーナ様もニニも国王様や王妃様も、そして御者さんさえもいません。

 私は一人。一人きりでした。そう考えるだけで身震いがします。誰でもいいから今すぐ会いたいと心から思いました。


 と、その時のこと。


 人気(ひとけ)のない路地を一人で歩いていた私は、背後から何やら怪しい音を聞きつけたのです。

 コツン、コツンと。……それはまるで誰かの足音のようでした。


 慌てて振り返り、聖魔法の光を後方へ向けます。しかしそこには誰の姿も見当たらず、何もない空間が広がっているだけ。

 確かに聞こえたのに、と首を傾げつつも、聞き違いだったかと思って私はさらに数歩進みました。しかしまた聞けおてしまったのです。


 ……コツン、コツンコツン。


 サァーっと血の気が引いていくのがわかりました。


「もしかしてこれって……ホラー展開な感じですか?」


 誰にともなく問いかけた声は、虚空へ消えていきます。

 気候は夜にしては暖かなはずなのに、背中にゾッと寒気が走りました。私は嫌な感覚を振り払うように唇を噛み、全速力で走り出します。

 異世界には本物のホラーがたくさんあるのです。たとえばまだ出会ったことはありませんが魔物というのもその一つでしょうし、誘拐犯だってそうです。足音が一体誰のものかはわかりませんがこの先不穏なことが待っているに違いありませんでした。


 ヒタヒタ、ヒタヒタ、ヒタヒタ……。


 走っても走っても足音は聞こえます。そしてむしろ先ほどより早くなっているような気がしました。

 しかしやはり後を見ても誰もいません。もしかして私、幽霊にでも追われているのですか。


「だ、誰か助けてくださいっ!」


 叫びますがこの声が誰かに届くはずもありません。

 足がふらつき、うっかりすっ転んでしまいました。受身を取る暇もなく石畳に全身でダイブした私は、痛みに呻きます。

 その間にもどんどん足音が接近してきます。ああこれはもうダメだ、そう思った瞬間――。


「ヒジリ、ダメじゃないか。ボクに何も言わないで出ていくなんて」


「きゃあああああああっ!?」


 突然背後から声がして、私は人生で最大の悲鳴を上げました。

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