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04:つまりこれって異世界召喚ですか?

 状況がだんだんと呑み込めて来ました。


 まず、意味不明だった単語について。

 『セージョ』は聖女、『ショーカンシャ』は召喚者、ということらしいです。


 それから、私がここ――王城の広間にいる理由。

 それは、召喚者であるアルデート・ビューマンさんが私を呼び出したからなんだとか。たまたま運悪くその時に入浴していた私は、裸のままで召喚されてしまったようです。


 そして、これらの情報を集めると浮かび上がってくる事実があります。

 もちろんこんなのは信じ難いし信じたくない話です。でも、そうとしか考えられないじゃないですか。

 それは、


「異世界召喚ってやつですね! ……はぁ」


 そう。私は今、ラノベなどで定番の異世界召喚というのを体験してしまっているようなのです。

 説明は不要だと思うのではしょりますが、まさか自分がそんな目に遭うだなんて思ってもみませんでした。トラックにも轢かれていないのに突然、裸のままでだなんて。


 でも、それなら全てのことに合点が行きます。

 ここの人々の髪色がカラフル――金髪や茶髪に加え、人間ではあり得ない青や緑、銀色――であること。

 スピダパムという国名に聞き覚えがなかったこと。


 お風呂で聞こえた最後の声は「召喚」と言っていたのだろうというのも、すぐにピンと来ました。


「ふむふむ。謎が解けましたね」と、探偵気取りで言ってみました。あっ、白い目で見ないでください!


 十代の平凡かつ健全な少年少女であれば、きっとその多くが一度は憧れるであろう異世界召喚。私も中学生の頃はそれを夢見て、色々厨二病なことを真面目な顔でしていたものです。

 けれど実際の異世界召喚を前にして、私は膝を折ることしかできませんでした。


 私は十五歳、ごく普通な女子高生なのです。

 そんな私が異世界などに来て独り。何が嬉しいのでしょう?


 家には弟を残して来てしまっています。「行ってきます」の一言も何も言わずに、です。

 きっと両親にも心配をかけてしまうでしょう。共働きで忙しいというのに、私の失踪を知ったらどんなに悲しみ、どれほど探し回るのでしょうか。

 けれどどんなに探したって私は見つかりっこありません。だって隔絶した世界にいるのですから当然です。


 私の頭の中にあるのは、ただただ不安だけでした。

 アルデートさんを見上げ、言ってみます。


「聖女だか何だか知りませんが、元の世界に戻してください。私には家族がいるんです」


 しかし彼は首を振りました。「俺は召喚はできるが、戻すことはできません」


 私は呆気に取られ、口をあんぐり開けることしかできませんでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 その後、アルデートさんの代わりに私の前に老いた男性が現れました。


 こんな、カーディガンを一枚羽織っただけの姿で向かい合うのは失礼なくらい、とても立派な男の人です。格好とファンタジー異世界であることからして、おそらく王族ではないでしょうか。

 そしてその私の予想は正しく、彼はスピダパム王国の国王でした。


「急なことで戸惑っておるだろうが、ともかく我らはそなたを歓迎するぞ、選ばれし聖女よ」


 昔、同級生の女の子がいたんですけど。

 私が「いつか聖女召喚されたいな〜」って言っていた時に、一度言われたことがあるのを思い出しました。


『仮に聖の言う通りの異世界があったとして、異世界召喚されるのはこの世界でも実力のある人よ。平民でそれも年少の者なんて選ばれるはずがないでしょう。あたしだって、できるものなら行ってみたいけどさ』


 その時は私もなるほどと納得せざるを得ませんでしたが、どうやらそうではなかったようです。彼女には過去発言を撤回し、謝罪していただきたい気分でいっぱいでした。

 平民でそれも何の特技もない私が聖女などに選ばれているのですから。


 そんなことを考え続ける私の内心など知らぬ顔で、王様は迎えの言葉を述べ続けます。

 そしてその後、こう言いました。


「前置きが長くなった。さて、聖女について語ってやろう。良いか?」


 全然何も良くはありませんけど、私に頷く以外の選択肢はなかったのでした。

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