27:王女様から認めてもらえました
「母様のお怪我を治したこと、褒めて遣わすわ」
――王妃様の治療を成功させ、彼女から何度も感謝されながら部屋を出た後のこと。
王族、それも王妃というやんごとない身分の人と対面したことと、聖魔法を使ったせいでまたもや疲労している私に、まるで配慮のない大声で王女様がそんなことを言いました。
褒めて遣わすって……と思いつつ、それが彼女なりの最大限の感謝の気持ちなのだろうなと思い直し、私はツッコミを入れるのを寸手のところでやめます。
隣を歩く王女様の横顔を見ると、とても晴れやかでした。ずっと母親が命の危険にあったのにそれが全快したのですから、きっと嬉しいのでしょう。
「私も最初の頃より随分成長したってことですよね」
「そうかしら? すぐに倒れるから心配……じゃなくて、迷惑をかけられてばかりなのだけれど?」
「まあ、それは言い訳できないです。聖魔法を使うのって、結構しんどいんですよ? グラウンド何周もしたみたいにヘトヘトになりますから」
「ぐらうんどが何かはわからないけれど。貴女はそもそもこの世界の人間じゃないのだし、あれだけ使えれば上等なのかも知れないわね。……ま、まあ、わたくしには到底及ばないけれどね」
そう言って胸を張る王女様。ですが彼女が魔法を使っている姿は見たことがないのですが?
「異世界人の貴女はきっと知らないでしょうから教えてあげる。実はわたくし、時属性の魔法を使えるのよ! どう? 驚いたでしょう!」
「時属性!? つまり、タイムリープしたりできるってことですか!? 初耳なんですけど!」
「タイムリープって時間遡行のことよね? おとぎ話にはそんなものもあるけれど、実際の時魔法でそれをするのは無理よ。わたくしができるのはせいぜい時間を停止させたり、鈍化や速度を上げるくらいかしら」
時魔法と聞いてタイムリープを真っ先に思いついて興奮してしまいましたが……でもよくよく考えてみれば時間停止もかなりすごいです。というかそんなものが現実にあるこの異世界って、今更ですがかなりファンタジックな世界ですよね。
この世界の魔法とやらはそんなものまであるのかと驚く他ありませんでした。
「時魔法というのは聖属性と氷属性と並び立つほどで、神の祝福とも呼ばれる非常に珍しい属性なの。その三属性を持つ者を見るのはわたくし、貴女が初めてよ」
「へぇ、なるほど。つまりその珍しい属性持ちだから王女様は私に親近感が湧いたということですか。道理で仲良くしてくださると思いました」
「別に親しくなんてしてないわ! たまたま傍に置いてやっているだけよ。少し甘やかしたらつけあがるんだから。本当に貴女は聖女とは思えない悪い女ね!」
これが仲が良い以外の何だというのでしょう。私は少なくともこの世界に来てから一番親しくできたのはこの王女様だと思っています。一緒にいて会話するとすぐにこうして大きなリアクションが返って来るので面白いですしね。
王女様の方だって私を遠ざけないところを見ると、きっとまんざらじゃないんだとと思います。
「…………。と、ともあれ、貴女の功績は認めるわ。これからもせいぜいこのスピダパム王国のために精進なさい」
「わかりました。できるだけ頑張りますね」
もちろん、私が頑張る理由は家に帰るためだけなんですけどね。それでこの国に住む人たちも助かるなら一石二鳥というものです。
これでニニにも王女様にも、立派な聖女として認められたようです。これからますます大変なことに巻き込まれる気がしてなりませんが、それには耐えるしかないでしょう。
聖女として活躍し、この国に降りかかる災厄とやらを早く退けて役目を果たしてしまうのが一番なのですから。
面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。
ご意見ご感想、お待ちしております!




