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『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜  作者: 柴野いずみ@『悪女エメリィ』一二三書房WEB小説大賞銀賞受賞!
第1章 お風呂に入っていたら見知らぬ世界に召喚されてしまいました

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24:光の騎士からの試練③

 第二の試練は、とにかく自分との戦いでした。

 医者でもない私が、これほどの大怪我の人を癒す。当然私なんかが血に対して耐性があるわけがなく、今にも吐きそうになりながら、それでもグッと我慢して怪我人の体に触れます。


 ――冷たい。


 魔物被害者だからなのか、王妃様の時と同じような感覚でした。いいえ、こちらの方がもっとひどいかも知れません。

 何しろ魔物に噛まれただけでなく、足や腕を失っていたりする人もいるくらいなのですから。


 私の浄化と治癒の力は、少しでも彼らの役に立つことはできるのでしょうか。

 私は大きく深呼吸をして、それから意を決して治癒を始めました。


「ヒール」


 ぽわんと温かな光が私の体から溢れ、それが怪我人の肌を優しく照らします。

 そのまま光を巨大化させ、青白い肌を包み込むようにして癒しの力を流し込みました。


 練習次第では魔法もこんなに簡単に使えるようになるのですね。王妃様の時を思い出しながら、私は自分で少し驚いてしまいます。まあ、あれほど厳しい修行の後ではこれくらい当然かも知れませんが。

 ……そんなことを考えていると魔法が乱れますね。集中集中。


「うっ……うぅ」


「大丈夫。大丈夫ですから」


 呻く怪我人に、私は優しい声音で笑いかけました。

 本当は私、すごく怖くて仕方がないのですけどね。でもそんなのは内緒です。


 そのうち、怪我人の青白かった肌が少し色味を帯びて。

 氷のようだった体温も元通りになり、魔物に噛みつかれた部分もどす黒いものから正常な色に戻っていきました。


 後はタオルで血を拭き取れば終わりです。もう血は出ていませんでした。


「一人目の治療……終わりましたっ」


 とはいえこれはほんのまだ序の口。

 後何十人もを、今のようにして治して回らなければならないのです。


 私が倒れる方が先か、治し終わる方が先か。

 そんな思いで次の患者の方へ歩いて行きました。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――結果から言えば、第二の試練はクリアしました。

 あれほどいた怪我人を全て治し、彼らを癒し切ったのです。


 今にも倒れそうなヘトヘト具合。視界がぐらんぐらんします。


 聖女という仕事はブラックです。ブラックでしかありません。

 こんなに過酷な仕事があるでしょうか? 精神的にも肉体的にもダメージが大きい。お医者様は本当にすごいのだと改めて思いました。しかも自分の体力を使って人を癒す異世界の医師であるところの聖女というのはさらに労働的に厳しく、私のような人間に簡単にできるものではありませんでした。


 それでも、ふらふらな足で立ち、私は第三の試練に臨みます。

 ニニが最終試練の内容を告げました。


「最後の試練の内容をご説明いたします。来たる厄災に立ち向かうべく聖女様の力――戦力を試すものでございます。厄災が何であるかがわからない以上、戦力を兼ね備えておく必要があるからでございます。

 わたし、ニニ・リヒトとの素手での対戦。これに聖女様が勝たれた場合、全ての試練クリアとなります」


 ――あはは。そりゃ、いくら何でも無理ですよ。

 私はどこかぼんやりとした頭でそう考えながら、庭園の中央へやって来るニニを見つめました。


 今にも倒れそうな私と、全身ピンピンな上に修行を積んだ年数が違うであろうニニ。

 普通に考えて私に勝ち目などありません。が、試練は、彼女に勝てと私に強いるのです。


「――では、第三の試練を開始いたします」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「聖女様、お覚悟――!」


 叫びながら騎士剣を持たずに素手で飛びかかって来るニニを、私はただ、全力の魔力を放って弾き返しただけです。

 別に何を考えたわけでもありませんでした。ただ、やらなければと思った、それだけのこと。


 気づいたらあたりが白い光に包まれていて、その向こうでニニが驚いた顔で固まっているのが見えました。

 一体それが何を意味するのか、私には理解する余裕もありませんでした。ガタリと膝から地面に崩れ落ち、地面に横たわって白い白い真っ白な景色を見つめます。


 これが聖魔法の光。なんて温かなのでしょう。春の日差しのように心地よく、眠たくなってしまいます。

 遠くでニニの悲鳴とその他大勢の歓声が聞こえましたが、もうそちらに顔を向けることすらできません。そっと目を閉じ、光に身を預けながら、私の意識は闇に沈んでいきました。




 ――この時私が勝利したということを知ったのは、それから三日後のことです。

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