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235/239

235:一時的にパーティー加入……のはずが

 一時的に私たちの仲間入りを果たした少女。

 彼女はほぼ非戦闘員かと思いきや……本人が披露した以上の凄技を見せてくれました。


 いくらセルが無双をしたと言っても全滅させたわけではないので、城へ近づけば近づくほど魔物は現れるようになります。

 襲いくるそれらに私が聖魔法の光を放つ前に、少女が生じさせた火の玉が、敵の急所を焼くのです。

 火力はやはり大したものではありません。それでも急所――たとえば口の中に火炎を突っ込まれて喉から焼かれては魔物はたまらないのでしょう。


 火魔法の効率的な使い方に、私はただ驚かされるばかりでした。


「どこかで戦いを習っていたのでございますか?」


「んー、うちのお母さんなんでも屋さんでね、色々手伝っているうちに魔法が得意になったんだよ」


「それにしてはかなり巧みでございますね」


「ありがと」


 まだ怪しんでいるのかニニが探りを入れていますが、ニニのすぐ隣を歩く素知らぬ顔で少女は笑います。

 弾けるようなその笑顔を見ると、どうしても警戒心が薄れていき、私はすっかり彼女のことを信用し始めていました。


 だって、私たちに害意があるならとっくに焼かれているはずです。

 そうではない時点で彼女は私たちの味方であるということ。実際、彼女のおかげで私は魔力を温存しながら――彼女のために結界を張ろうとしたら「お姉さん、疲れた顔してるよ」と言って心配され、やんわり断られたのです――王城を前にすることができました。


 城門まで、あと少し。

 ですがこういう時こそ気を引き締めなければなりません。今までの比にならない強力な魔物が置かれている可能性が大ですから、慎重に慎重に……。


 慎重に、行こうと思ったその時。

 先ほどまでニニの隣にいたはずの少女の気配を、すぐ背後に感じました。


 何かあったのでしょうか。

 問いかけようとして――しかし、それは叶いませんでした。


「あぐっ」


 意図していなかった声が出て、前のめりに倒れ込んでしまいます。


 一体、何が?


 考えるが早いか、猛烈に熱を帯び始める背中。

 熱い。熱い。まるで体内に燃える何かがあるかのように熱くて熱くて、気が狂いそうなくらい暑い。

 口からこぼれ出て、唇を紅く染めるものの正体に気づくまで、しばらくの時間を要したのは仕方のないことでした。


「ヒジリ! 治癒魔法を!!」


 エムリオ様が叫んでいます。

 治癒魔法。回らない頭で治癒魔法が何かをようやく思い出して、どうにか発動させるも、うまくいきません。


「油断してたのかな、聖女サマ? ごめんね、背中がガラ空きだったから狙っちゃったよ」


「ぐっ……ぁ」


「困った女の子を助けずにはいられない。まさに聖女サマの鑑って感じだよ。だからこうなる」


 素早く私の目の前に回り込んだ少女が、ゴスロリドレスに炎を揺らめかせます。

 彼女の笑顔はそれまでとなんら変わりなく、声音さえ底抜けに明るいまま。それを聞いて、私はようやく――本当にようやく、思い出しました。


「放送の、声……?」


「ご名答。くすくす。魔道具でちょっと声が変わって聞こえてたとはいえわからないだなんて、お馬鹿な聖女サマ。

 王子サマと女騎士サマは気づいてたみたいだけど、守れなかった。悔しいよね、悔しいはずだよ。その悔しさごと、このまま全員焼いてあげてもいいよ?」


 守ってあげたくなるような、キラキラとした笑顔。

 それが一気に醜悪なものに感じられ、血が抜けて急激に寒気が来たのも相まって、ぶるりと身を震わせずにはいられませんでした。

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