232:次から次への小ボス戦
私の嫌な予感は見事なまでに命中してしまいました。
空から氷柱を降らせて攻撃してくる小鬼のような魔物、燃え盛る馬車の車輪型の魔物、雪女を思わせる血の通っていない氷の魔物まで。一時間ほどの間にすでに数匹、小ボス級と遭遇したのです。
一体この王都にどれだけの魔物を放ったのか、恐ろしくなるほどでした。
「これじゃあキリがないですよっ!」
「王城に近づくにつれ敵が増えているようですわね。魔女とやら、姑息な手を使わずに正々堂々と姿を現せばよろしいですのに!」
腹立たしげに唇を噛むセル。
彼女がそうしている間にも雑魚魔物が襲いかかってきて、それをエムリオ様たちが薙ぎ払い続けています。
「でもこれだけ外に守りを固めてるんだ。王城にいるはずの魔女の守りはその分薄い……と考えたいところだね」
「世界各地に蔓延る悪しき魔物ですが、その数は有限でございますものね。しかし魔女が魔物を作り出している可能性も否定しきれないのが苦々しいところ。
……などと言っている間にも新しい魔物が現れたようでございますね」
私たちの前に立ちはだかったのは、三つ首に進化したらしいドラゴンもどき。
体躯は馬車を襲ってきた奴の三倍以上です。強敵に違いないのが一目でわかってしまい、思わず逃げ出したくなってしまいますが。
「そうも言ってられません。セル、まだいけます?」
「楽勝ですわ!」
セルが周囲の地面を持ち上げ、ドラゴンもどきの動きを固めます。
その間に私は聖魔法の準備。これだけ戦い続けているといい加減疲れてきそうです。
「さっさと終わらせますか」
……と、思っていたら。
ドラゴンもどきを囲っていた土壁がぽろぽろと崩れ、その向こうから鋭い牙が覗きました。
それもほぼ同時に三つ。
ブレス攻撃より牙が強い系のドラゴンというわけですね。
これは結構厄介かも知れません。人魂のようにゆらゆらした存在ではないので攻撃はしやすいのですが、広範囲に聖魔法を使うのはかなり魔力消費が大きいのでやりたくないのです。
「落とす首は三つ。ボクが一番左を担当するよ」
「ならわたしは一番右を。聖女様は中央をよろしくお願いいたします」
「わかりました」
セルの作った土壁が完全に破壊されないうちに片付けたいので、スピード勝負です。
私は真ん中の首に聖魔法を乱射。右の方では剣を抜いたニニが稲妻のような光を迸らせて周囲の土壁ごと首を鮮やかに切断、左でエムリオ様が喉奥から頭蓋に向かってドラゴンを串刺しに。
それらは本当に一瞬の出来事でした。
それでもしばらく三つ首ドラゴンもどきは死なず、尻尾を振り回したりエムリオ様に噛みつこうとして暴れまくっていたものの、やがて限界が来たのか動かなくなりました。
我ながらなんとも見事な連携プレーで完全勝利です。ここ数時間の戦いで体を慣らしていなかったらもっと手こずっていたことでしょう。
これで無事に前に進め、さらに王城に近づけるわけですが。
それから十分足らずで次の小ボス戦が始まってしまいます。
「今度は雪兎みたいなやつですね」
「しかも数が多い。これはヒジリに頼るしかないな」
――さて、魔女との戦いまで魔力が残っているかどうか。
そう思いながら私は手から聖魔法を溢れさせました。
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