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231:いきなりの小ボス戦②

 セルの魔法は信じられないくらい便利過ぎるものでした。

 一歩も動いていないのに、あらかじめ隆起させておいた地面を滑らすように動かすことで移動できるのです。しかも同時に吹雪避けを作れるので視界がクリア。

 エムリオ様とニニが魔物の気を引いているおかげで怪しまれず、背後に回り込めました。


 こんなに強いなら変な見栄を張らずにもっと早く使ってほしかったものです。


「ところでヒジリ、仕留められる自信がありますのね?」


「聖魔法ならどうにかなります。私、聖女ですから」


 魔物の背中は驚くほどにガラ空きでした。

 その代わりに狼型の魔物がいたにはいたのですが、セルの作り出した土塊で脳天を撃ち抜かれ、断末魔を上げることすらなく全て絶命。これでもう恐れるものはないはず。


「今ですわ!」


 まるで光線のように聖魔法をまっすぐに伸ばし、不意を突いて倒す……そういう作戦でした。

 間違いなくいけるという自信があったのですが。


「……!?」


 こちらの動きにやっと気づいたらしい相手がとんでもない反応を見せたのです。

 聖魔法を避けるようにして円形に変化。聖魔法の光はあらぬ方向へ行ってしまいました。


 そんな馬鹿なとは言えませんでした。

 だって実体がないということは自由に姿を変えられて当然だということに最初から思い至っておくべきだったのですから。


 作戦は台無し。魔物がこちらを標的とし、口から猛吹雪を吐き出し始めます。

 肌を刺すような冷気。いくら土塊があるとはいえ、あまりに強過ぎて髪や顔に雪が降りかかりました。


「どうしましょう、セル……!」


「聖女様の本気はその程度ということですかしら。まったく、みっともないですわね。アタクシにもっと頼りなさいな」


「何か手があるんですか!? もったいぶらないで早く教えてくださいお願いします!!」


 身を乗り出して懇願すれば、「そこで見てなさい」と言いながらセルが土壁のガードから飛び出していきます。

 土塊を盾型に変え、猛吹雪の中を突き進んで……そして魔物の周囲を駆け回り始めました。


 一見無謀な自殺行為。でも、意味がないわけがありません。

 そしてすぐにその行動の答え合わせがなされました。


 ゴゴゴ、と凄まじい地響きと共に、一瞬にして土が盛り上がり、ドームに変形していきます。

 何重も何重も包み込むようにしてドームが重なっていって……やがてあれほど暴れていた魔物をピッタリと閉じ込めてしまいました。


「すごっ! ちょっとすご過ぎじゃないですか」


「これでもうさすがに魔物は逃げられませんわ。ヒジリ、最後は任せましたわよ!」


 確かにこれなら狙いやすいです。

 直後、視界を聖魔法の光が覆い――ドームごと全てが吹っ飛んで掻き消えるという形で小ボス戦は幕を下ろすのでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ロッティ、魔力を使い過ぎだ。王城までの道のりはまだ長いんだから倒れないように気をつけてほしいんだけど……」


「別にこれくらい何でもありませんわよ。平気であと何度か戦えますわ」


「タレンティド侯爵令嬢は見事としか言いようがない戦いぶりでございましたが、聖女様もとても魔法の使い方がお上手になっていて驚かされました。魔力調節もお上手でございます」


「ニニに褒めてもらえて嬉しいです」


 小ボス戦のあとは吹雪で受けたダメージを治癒しながら、一旦休憩。特にセルの魔力消費は激しいらしくエムリオ様が心配しまくっています。

 本当はもう少し休んでいたいところですが、この緊急事態の中で呑気なことは言っていられません。五分もしないうちに再出発です。


「他にも小ボスがいたら厄介ですね……。いつ『烈火の魔女』のところに辿り着けるんでしょう」


 不安でつい漏らしてしまった私の呟きには誰も答えませんでした。

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