230:いきなりの小ボス戦①
魔物は、雑魚から強敵まで様々います。
雑魚でももちろん脅威になりますが、エムリオ様やニニがサクッと首を斬り飛ばせるのであまり苦労しません。
おかげで人命救助しながらもそこまで足止めを喰らわずに進むことができ、これは楽勝なのでは?と油断しかけた時。
突然、前方からちらちらと白い何かが降り注いできました。
「冷たっ……!」
「聖女様、大丈夫でございますか」
「これは一体何ですの?」
「西方のメーデス共和国へ一度足を運んだ際に見たのと同じだ。……雪だね」
雪はあまりこの国では一般的ではない――というより一度も見たことがないのでしょう。セルもニニも驚き顔をしていました。
私は豪雪地帯に住んでいたわけではありませんが、一応毎年雪を見ていたのですぐにわかりましたけど。
「でもおかしいです、突然冬が来るだなんて」
「十中八九、魔物の仕業だろうね。ほら」
王城とパーティー会場のちょうど真ん中あたりの大通り。
吐く息も凍る吹雪の中、私たちを静かに待ち構えていたであろうそいつの姿が見えました。
青白く揺らめく炎のような、人魂のような何か。それが口から雪をドバドバと吐き散らかしているのです。
ゲームに例えるなら、小ボスといったところでしょうか。
断言できます。今まで戦ったどの魔物よりも――あのドラゴンもどき以上に強いと。
『烈火の魔女』などと名乗るくせに、氷の狼やら雪系統の魔物やらをけしかけて来るのはどうしてか、わかりませんけれど。
「いきなりですね……!」
「ああ。見るからに今までの敵とは強さが違う。幸い市民は避難済みのようだから、ヒジリも参戦してくれるかい」
「わかりました」
私たちにかけていた結界を一層強化。
そなと両手に聖魔法を宿し、一気に膨らませたものを、相手へ叩きつけます。
吹雪と聖魔法が真っ向からぶつかり合い、キラキラと輝いていました。
その光景はあまりに美しく、息を呑んでいる間に全てが終わってしまいます。
聖魔法攻撃がたった三秒ほどで退けられ、大量の吹雪が私を圧し潰す勢いで襲いかかってきました。
「結界がなかったら死んでいるところですけど、ね!」
次はエムリオ様とニニの攻撃。
騎士剣を抜く音がし、二人が斬りかかっていきましたが――。
「これはっ!?」
「どうやら実体がないようでございますね」
実体がない。つまり、物理的ではない魔法しか効かないということです。
視界を真っ白に染め上げる吹雪を見つめながら私は思案します。
さて、ここからどうすれば勝利に持ち込めるでしょうか。
王城のことも考えればあまり長期戦にはしたくありません。でも真っ向からでは聖魔法はダメ。
それなら――。
「エムリオ様、ニニ、効果がなくてもそのまま魔物の気を引き続けてください! それからセル、何か魔法攻撃はできませんか?」
「ふん。エムリオたちを囮にしてその間に倒してしまおうという魂胆ですわね。わかりましたわ。まあ、派手なものではございませんからあまり使いたくはありませんでしたけれど――」
一瞬にして彼女自身と私が立っていた地面を大きく隆起させ、目の前に吹雪避けの土壁を作り出したセルが、自慢げな笑みを浮かべました。
「アタクシ、土魔法の使い手ですの。結構強いのですわよ?」
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